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未知と出会う旅:自分の世界をひろげ、新たな可能性を切り開く

2024年10月4日、写真家の石川直樹さんが、地球上の8,000m峰14座全てへの登頂を達成しました。この偉業は、単なる登山記録を超えた深い意味を持ちます。石川さんの足跡は、山岳のみならず、ポリネシアでの「星の航海術」の習得、イヌイットやマタギとの狩猟、洞窟壁画の探索など、多岐にわたります。これらの訪問地をテーマごとに地図上にプロットすると、まるで地上に星座が描かれているかのようです。今回、8,000m峰の星座が完成したのです。

この「地上の星座」は、石川さんの尽きることのない好奇心と探求心が織りなす軌跡です。未知との出会いを積極的に求めることで、自分の世界が広がっていく、その重要性を私たちに示唆しています


エベレストを追いかけて:好奇心が導く新たな挑戦

石川さんの冒険哲学を象徴するエピソードがあります。2011年、彼はエベレストに登頂し、山頂で雲海に映るエベレストの影の写真を撮影しました。しかし、自身が山頂に立つと、エベレストの勇姿を撮ることはできません。

エベレストとローツェは双子のように隣り合っています。エベレストからの下山時に、ローツェの姿を目にした石川さんは、「あの頂からエベレストを眺めたら、どのように見えるだろう?」と興味をもち、新たなチャレンジを決意しました。

2013年、ローツェ登頂を果たした石川さんは、山頂からエベレストの勇姿を撮影することに成功しました。ローツェの山頂も8,500mあり、等身大のエベレストの写真となりました。下からエベレストを見上げた写真は数多くありますが、等身大の写真は石川さんが撮ったものだけと言われています。

石川直樹《Everest from Lhotse2》2013, C-print 日比谷図書文化館での展示:筆者撮影

さらに2014年、石川さんはマカルーに登頂し、そこからエベレストとローツェが寄り添う姿を撮影しました。このように、石川さんの旅と写真には常にストーリーがあり、彼は一つずつ丁寧に新たな扉を開いていくのです。

石川直樹《Makalu #38》2014, C-print 日比谷図書文化館での展示:筆者撮影

21世紀のフロンティア:内なる未知を探求する

21世紀の現代、地理的な空白はほとんどなくなりました。そのような中、「本当のフロンティアというのは、自分のなかにある」と石川さんは言います。生きている以上、冒険のフィールド自体は決してなくならないのです。一度訪れた場所でも、再度訪問すると、また新しい発見があります。

石川さんは次のように語っています。

同じ山に何度登っても、そのたびに違うものが見えるし、新しい発見があります。さらに言えば、『未知』に出会うことで世界は広がって、自分の世界が広がっていくほど自分が出会える『未知』は増えていくのです。

「この目で見るたび世界は広がる」写真家・石川直樹の“未知”を縦走する旅

ビジネスにおける冒険:日常に潜む未知との遭遇

注目すべきは、石川さんが「冒険」を広義に捉えている点です。8,000m峰のような高いハードルの旅だけでなく、都市の日常生活の中にも冒険は存在します。

本を読んでいるうちに、新奇な物事や知らない世界に出会う。これも冒険です。一冊のすぐれた本を読むことは、深い旅をしたことと同じだとぼくは思っています。映画でも演劇でも何でもいい。驚きとの出会い方はいろいろあります。

石川直樹さんスペシャルトーク | ナショナル ジオグラフィック

この考え方は、ビジネスの世界にも適用できます。例えば、花王株式会社の元取締役である村田守康さんは、「アタック」「ヘルシア緑茶」「クイックルワイパー」という、全く異なる領域の商品開発を主導し、大きな成功を収めました。(村田守康「花王における 3 つのイノベーション」京都マネジメントレビュー17号, 2010)特に、ヘルシア緑茶の場合、当時の花王にとっては全く未知の領域でした。しかし、健康への意識が高まっており、毎日飲むものや食べるものに「抗肥満」というコンセプトを入れ込むことで、大きなマーケットになると考えたのです。

村田さんは「アイデアは道端の石ころのようにころがっている」と言います。石川直樹さんと同様、未知なるものを発見する感性をもち、新規事業という旅にチャレンジすることで、事業分野を広げていくことができたのです。

撮影:チリーズ photo ACより

「知っているつもり」を超えて:好奇心を失わないために

私たちビジネスパーソンは、ネット検索をして「知っているつもり」になり、それ以上の探求をやめてしまいがちです。日々の業務に追われていると、気づきや発見は少なく、まわりの出来事にも関心をもたなくなるので、時間が矢のように過ぎ去っていきます。

このような状況を避け、未知なるものを発見するには、「知っているつもり」にならず、実際に現場に行って自分の目で確かめたり、本を読んで探求を深めたりといった行動が重要です。

未知との出会いがもたらす成長:個人と組織の発展へ

石川さんの言葉は、年齢や立場に関わらず、全てのビジネスパーソンに向けられたメッセージだと言えるでしょう。

旅であれ読書であれ、新しい世界と出会う経験をできるだけ積み重ねるといいと思いますよ。とにかくぼくが言いたいのは、世界はつまらなくないよ、おもしろいよ...そういうことです。世界はおもしろい。そのことを、あらゆる意味での旅に出ることによってぜひ実感してほしいですね。

石川直樹さんスペシャルトーク | ナショナル ジオグラフィック

日々の生活の中で、「知っているつもり」にならず、探求し続ける姿勢を持つことが、私たちの人生とキャリアをより豊かなものにしてくれます。未知との出会いこそが、私たちの世界を広げ、新たな可能性を切り開く鍵であり、個人の成長だけでなく、組織や社会の発展の扉にもつながっていくのではないでしょうか。


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