文学フリマ東京39振り返りレポ③うれしかったこと(後半)
前回のつづき。文学フリマ東京39の振り返り。
①はこちら。
うれしかったこと
差し入れもらった
『はじめまして』のかたから、『やっとリアルでちゃんと対面できましたね』というかたまで、来ていただいただけでもうれしいのに差し入れまでいただき、感謝があふれて止まりません。
感謝が止まりませんし、シブみも止まりません。わたしくらいになると、作るごはんどころか、差し入れまでぜんぶ茶色に染まるんだぜ。どう?
※しじみ汁が開いてるのはさっそく1個いただいたからです。
今までで一番売れた
今回売れた数は以下のとおり。
本は簡単に作って良い:22冊
これはうちの弟から聞いた話なんだけど:20冊
甲状腺を半分取って9か月後、卵巣まで手術しました:8冊
父を送る《改》:6冊
縁環のキリトリ:3冊
WEEKLY STAR OF BBA:3冊
旅のススメ~エッセイと短歌~:3冊
試食!アジフライ帝国!:3冊
合計で、なんと68冊!今までの文学フリマ東京で私が販売した冊数の最高記録は、2023年11月の文学フリマ東京で改版前の「父を送る」を出品したときで、35冊。1年後に倍も買ってもらうようになっているなんて、想像もしなかった。うれしすぎる。
このペースをキープできるだろうか。正直、自信がない。でも、がんばりたい。
"きっかけ"になれた
多くの人が目の前を通り過ぎる中、夫と死んだ魚の目で「コンニチハー」「コンニチハー」と繰り返しているところに、イカした刈り上げヘアの神がススス…と私のブースの前に立ってくれた。
瞳に輝きを戻して「立ち読み大歓迎でーす!ゥフッ!」と言ったか言わないか、そんな私に向かって、その神はおもむろに語りかけてくれた。
いわく、以前、通販で「父を送る《改》」を購入してくださったこと。
その本が爆速で届いて驚いたこと。
本をきっかけに私を知り、私をきっかけに間借り書房「いりえ」さんを知ったこと。(※いりえさんは期間限定オープンだったので現在は営業されていません)
いりえさんを知ったおかげで、読書会など新しい世界へ足を踏み入れられたこと。
そんなことを、ゆっくりと丁寧に教えてくれて、最後に
「おかげで、道が広がりました。ありがとうございます」
と言ってくれた。
いやそんなんこっちがありがとうじゃん!?!?!?!?!?!?!?!?
少し前、『何かを書いて外に出すって、自分が見えている範囲以上に拡がって届くもの』だと理解し始めた、という記事を書いたことがあった。
これは、それのさらに上のやつだ。自分が書いたものが拡がって届いて、そこから別のものが拡がって届いて、つながった。地続きの場所で拡がっていたものが、海を越えてより広大な大地で発展した。
言葉って、こんな拡がり方をするのか。すごい。すごいものを操っていますよ私たちは。
常々、「人と人を繋ぐような役割をもちたい」と言っている夫が、このやりとりを隣で見ていて、ものすごく羨ましがっていた。「今だけ俺がスターオブババアになろうかな」と言っていた。なれませんよ。ヘッヘ。
願いが叶って最終回を迎えた
イカした刈り上げの神が去って、うれしい気持ちでホクホクになりながらまた「コンニチハー」を繰り返していたところに新たなお客様が登場した。
見覚えのある顔に、ひっそりと息を呑む。お客様は並べられている本をキョロキョロと見回しながら、
「あの、前回出してた本は…?」
と声をかけてくださった。
「前回…っていうと香川になるんですけど」
といいかけた私に
「あ、東京の前回で」
とさらに詳しく教えてくださったのを聞き、そのお客様がまちがいなくあの人だ、という確信を深める。
「それだとこちらですね」
と、『父を送る≪改≫』を指した。
ああ…と半分納得しつつ、これだったかな…という様子のお客様に、ありったけの勇気を振り絞り、声をかける。
「あの…、Tさん、ですよね?」
お客様は少し驚きつつ頷いてくださった。
「まえに買いに来てくださったとき、売り切れてた本のことですよね?そのとき売り切れた本の改版がこちらなんです」
そう。私は覚えていた。買いに来てくださったことが嬉しかったから。そして、完売でお売りできなかったことが無念だったから。
なぜ覚えていたか。嬉しかったか。無念だったか。それは、そのかたが私の憧れている大好きな作家さんの、大好きな本の編集者さんだから。
売り切れを告げたあの日から、また買いにきてもらえないか、ずっと密かに願っていた。
そういうことか、と納得された様子のお客様は『父を送る≪改≫』と新刊の『これはうちの弟から聞いた話なんだけど』を買ってくださった。
願いが、また叶った。
頭の中で踊り狂いながら「ありがとうございます」とお礼を言って本を手渡す。
お客様が本を受け取りながらぽつりとおっしゃった。
「応援してます」
面が割れてるとわかったゆえの社交辞令かもしれない。“応援”の気持ちが10段階あるとしたら、2くらいの“応援”かもしれない。言ったことを忘れるくらい、普段から口にしてる挨拶かもしれない。
それでいい。それでもいい。この瞬間、私は間違いなく報われていた。救われた。聖書はうまいこと言ったもんだと思う。神の定義が人を救う存在だとしたら、ことばは、間違いなく神だ。
その後ずっと夢見心地で
「もう、いいかな」
「最終回かな」
などブツブツ言いはじめ、帰り道でも、やけにこざっぱりとした顔をする私に夫がいった。
「オイ、ここからだろうが」
……ですよねー。
がんばります。精進します。
通販・他での販売情報
電子書籍
Kindleで電子書籍も販売しています。紙での販売終了した本などもありますのでよかったら覗いてみてください。
booth通販 ※発送は12月7日以降です
なぜ12月7日以降かというと本の在庫全部文学フリマの会場から宅配便にのせた&平日サラリーマンしてて配送時間に帰宅できなくて宅配便を受け取れないからです。うっかりしていました。
MOUNTZINE
フォトエッセイ「縁環のキリトリ」はMOUNT ZINE様で販売中です。文学フリマとはまたちがったZINEの宝庫なのでお店へ行かれる距離のかたはぜひ行ってみてほしいです。
よろしくお願いしますっ!!