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法改正への期待が高まる、仕事と介護の両立支援

社会保険労務士の山地です。

総務省が発表している「就業構造基本調査」によると、介護・看護を理由に仕事を辞める人は年間約10万人で推移しており、高止まり傾向にあります。介護をする必要に迫られる人は40代後半以降の人で、社内では管理職や中核人材であることが多いです。同省が発表した昨年10月1日時点での日本の高齢化率は29.0%。高齢化率が高くなるにつれ、介護をする人が増えていくことは想像に難くありません。

経済産業省の試算によれば、介護離職による経済損失は年間約6,500億円に上るとされ、企業にとっては大きな損失です。介護離職を長期的にゼロにする目標を掲げている政府が動き出しました。

2023年6月27日の日本経済新聞によると、厚生労働省は

・介護休業や介護休暇制度について、対象者に知らせることを企業に義務付ける調整に入った
・介護しながら在宅勤務できる仕組みの導入を求める
・2024年の通常国会に育児・介護休業法の改正案提出を目指す

と報じています。
対象者に知らせるといえば、昨年4月から育児休業や育児休業給付金等の制度周知と育休の取得意向の確認が先行していますので、介護も同様のしくみが整うことになるのではないかと思われます。

企業は社員の仕事と介護の両立支援のために、以下の取り組みが必要になります。
・社内の両立支援制度の周知や制度利用の具体的な手続きの説明
・介護保険の利用の仕方についての教育・研修
・働き方の調整
・職場での理解の促進
・定期的な個人面談

社員から介護について相談があったら、出退勤時刻の調整や短時間(短日数)勤務、テレワークの可否などどのような働き方が可能か、ある程度提示できることが望ましいでしょう。安心して休業取得の申し出ができるように不利益な取り扱いはしないことを説明しましょう。

介護は他人ごとではなく親のいる人であれば、定年までにほとんどの人が直面する課題です。お互い様意識を醸成して、職場全体で協力できる体制づくりをしましょう。

介護はいつ終わるかわからず一般的に長期戦になります。社員の心身の疲労に気を付けながら声をかけ、話を聴く機会を持ちましょう。

大事な社員を介護で離職させないために、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。(*^_^*)

出典:日本経済新聞 2023年6月27号

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