社労士のお仕事⑤ 助成金申請代行
鹿児島で社労士をしています原田です。
社労士のお仕事いろいろの第5弾です。
第1段はこちら↓
社労士の中でも、積極的にやる人、絶対にやらない人と、きっぱり分かれる助成金申請代行。実態を踏まえてご紹介していきます。
社労士が助成金代行業をするメリット
まずはメリットから。
1.新規顧客を獲得しやすい
国家資格者が案内する、国からお金がもらえる話なので、気になる人は当たり前に多くなります。特にクライアントが少ない事務所なら、取り組んだ方が集客はしやすいです。
2.経験の長さが受給率と連動しない
社労士も経験によってレベルが上がる部分はあります。労働分野である程度対応していれば、想定をはるかに超えるありえない行動をする従業員の話や、ブラックにも程があるぐらいのコメントを堂々とする社長さんのお話を聞いたりします。
そうしたことに対処方法を編み出したりするスキルは、判例や労働法だけの問題では無い部分も非常に多いです。
しかし助成金にはそれがありません。なぜなら頻繁に制度が変わるから。最新の制度と決まりを知ることが重要で、過去の申請方法など、ほとんど役に立ちません。
つまり学べる時間がある人が有利になるのです。労働関係法令は理解していないとまずいですけど。
3.顧客をホワイト化できる
ブラック企業では、さすがに助成金は受給できません。
社会保険の適用、休憩時間の付与、有給の取得、割増賃金の支払い、雇用契約書の締結、36協定の締結等、当たり前にできないといけない法令を、独自解釈で堂々と無視する事業主であっても、
「それだと助成金は無理です」の一言で、是正してくれる場合があります。訴訟されるとか、監督署の勧告が来ると言っても全く耳を貸さない方が、あさりと聞いてくれるのは、助成金の大きな効果です。
それでも聞いてくれない方もいますけどね。
社労士が助成金代行業をするデメリット
メリットがあれば、デメリットもあります。
1.ノウハウが蓄積できない
毎年のように制度が変わるので、注意して確認することが必要です。しかも年度毎で変わるならまだしも、いきなり制度変更になる場合があります。また突然の受付中止もあります。
そのため毎年勉強しないといけません。しかも一生懸命学んでも対象になる事業所が無ければ意味がありません。
2.労働局に振り回される
労働局の審査に入ると、審査を速やかに済ませたい担当者からは、矢のような回答を求める問い合わせが来ます。申請直後なら覚えていた内容も、審査することにはすっかり忘れていることもあり、対応に苦慮する場面もあります。記録していない自分が悪いんですけどね。
クライアントとの相互連絡がうまくいかない場合は、回答がなかなかできなくなるので、そうした選別は必要かもしれません。
3.時間を取られる
申請が簡単なものから、難しいものまで様々です。多くは書類の精査等でかなりの時間を取られます。審査時でも多くの時間を取られます。
しかも受給までかなりの時間が必要なので、申請にかかった人件費を回収するのは、はるか未来の話になります。
4.不正受給が怖い
クライアントが不正をしていて、社労士が気付かない場合であっても、申請代行者として処罰される場合があります。逮捕される場合もあるので、軽い話ではありません。
助成金コンサルから仕事をもらう場合に、コンサルが不正を画策する場合があります。この不正が発覚した場合に処罰されるのは、事業主と社労士です。コンサルはノーダメージなので、不正を繰り返す業者が減らないのです(程度によっては処罰されますが)。
5.不支給でトラブルになる
「もらえる可能性があります」と言ってたとしても、顧客の耳には「絶対もらえます」としか聞こえてません。そのため、不支給になるとトラブルになります。
助成金を入り口にして顧問契約が結べたとしても、助成金のせいで顧問契約を破棄されるリスクもあります。それが事業主の責任や、制度の変更で不支給になったとしても。
多くの「助成金をしない社労士」は4と5の理由を言われる方が多いです。それでもコロナの時の雇用調整助成金だけはやった方が多いようです。
助成金代行で意外に知られていないこと
全国展開で活動しているコンサルタントの多くが知らないこととして、助成金審査には厳しい都道府県と、甘い都道府県が実際にあることです。
法律を元に制度化されているので、当然に基準は同じはずですが、不正者を出さないように審査する場所と、不正者は後から取り締まり、迅速さを求める場所等の違いは現実にあります。
また、助成金には異議申立制度がありません。時々不支給決定で窓口で騒ぐ人がいますが(それが社労士の場合もあります)騒いでも結果が変わることはありません。騒いだ時間の分だけ担当者の時間が取られて、他の審査が遅れるので、止めてほしいものです。
助成金代行はやるべきか
やるかやらないかは、社労士事務所の方針次第なので、どちらもで構わないですが、新人社労士だったら特にやった方がいいです。不正を持ちかけられたり、明らかに労働法違反が放置されている状態なら、その案件だけ申請しなければいいのです。