編集部が語る!号泣必至の「花束とオオカミちゃんには騙されない」
語らずにはいられない時がある。
素晴らしいものを伝えたいという気持ちもあるが、往々にして愛しさ、尊さがキャパオーバーし、自分の中に留めておくことができず、外に溢れ出してしまうのだ。
(もちろん大好きでも自分の中で咀嚼して語らない、客観性を持った素敵な方々もいる。)
さて、私は今爆発しそうな感情を抑えきれずこの文章を書いている。後々読み返したら後悔するかもしれない。しかし、今この瞬間の「生きた感情」を忘れないうちに記録したい。
私がこの状態に陥っているのは、5月21日に配信されたある作品の最終回を視聴したからだ。
『花束とオオカミちゃんには騙されない』
Abemaで配信されている人気の恋愛リアリティショー・オオカミシリーズの最新作である。恋愛リアリティショーといえば、少し前だとフジテレビのあいのり。最近ではAmazonプライムのバチェラーが話題だ。
人の感情で展開される筋書きのない世界というだけで面白いし、回を重ねるごとに見えてくる参加者の人柄に情が生まれる。過去の恋愛と重ね合わせて共感する視聴者もいるのではないだろうか。だからこそカップルが成立する瞬間は嬉しく、別れの瞬間には涙が零れてしまう。
とはいえ、だ。
中高6年間女子校に身を置き、大学では研究室にほとんど籠っていた筆者。正直、若い男女の甘酸っぱい恋愛に心を動かされるわけがない。大好きな弘中綾香アナの出演作を見るついでだし。そもそも恋愛ドラマより、漫画やお笑い、アイドルの方が好きだもん。
過信だった。しっかり沼にハマってしまい、最終回では進行役の横澤夏子さんと同じリアクションをしていた。アマゾン川ってこうして生まれたんだろうなと感じるくらいには泣いた。
新進気鋭な参加メンバーや、純愛のドキドキ感、不穏な空気を作るデートのお誘いLINE、視聴者投票による脱落システム、絶妙な編集等、魅力の多い本作。11人が初対面し自己紹介するシーンから最後まで怒涛の展開で目が離せない。
さらに本作には、他の恋愛リアリティショーとは一味違ったアクセントがある。それは「オオカミちゃん」の存在だ。本気で恋をしにきた男女の中に、恋をしない嘘つきのオオカミちゃんが1人以上紛れている。(本作は女性参加者にオオカミちゃんが紛れていたが、男性参加者にオオカミくんがいるシリーズもあるようだ。絶対見る。)
最終回では、男性メンバーが意中の女性メンバーに想いを伝える「最終告白」があるのだが、女性メンバーは全員、オオカミの着ぐるみを纏い赤い風船を持った状態で、告白の言葉を聞く。告白を聞き入れ風船を手渡せば晴れてカップル成立だが、オオカミちゃんは風船を手放す。
空に舞う風船こそが嘘つきの証明であり、オオカミちゃんは手紙だけを残しその場を立ち去らなければならない。濃い時間を過ごした相手に対し「ありがとう」の5文字さえ、直接伝えることができないのだ。
何気なく見始めたが、誰がオオカミちゃんなのか推理ドラマのように楽しみ、気付けば11人それぞれの純愛に心を奪われていた。
最終的には「頼む!皆幸せになってくれー!!!」と渋谷区(株式会社AbemaTVの本社)の方角を向き土下座してたので、純愛とは恐ろしいものである。
さて、前置きが長くなってしまったが、
最終回まで見て感じた『花束とオオカミちゃんには騙されない』の魅力を、特にエモさに注目して3つ挙げる。「〇〇×〇〇ペアがさー!」「あの編集ズルくない!?無理だよモー!」と語りたい気持ちもあるのだが、3時間は止まらないうえ盛大なネタバレになるため、ネタバレにならない程度に魅力を伝えたい。
魅力①素直で尊すぎる参加メンバー
恋愛リアリティショーでは時に、同性同士の蹴落としあいが名物だったりする。
「女怖~!」「男ってサイテー!」と言いながらキャッキャと見る恋愛リアリティショーは、ある種バラエティ的なおもしろ要素もあることだろう。
しかし本作の参加者においては、本当に本当に、皆、良い子なのである。
だからこそ、彼ら1人1人が紡ぐ純愛の物語に胸を打たれる。
参加者11人全員が、次世代を担うスターたち。
そして自分自身の気持ちより、相手の気持ちを思い遣ることができる可愛くて良い子たちの集まりなのだ。蹴落としあうようなことはなく、素直な気持ちで相手にぶつかる。恋愛だけじゃない、そこには確かな友情が芽生えていた。
そんな彼らが不器用ながらに気持ちを伝える姿にはキュンキュンしてしまうし、相手の気持ちを尊重して身を引く姿には身が引き裂かれそうな気持になる。一部の大人たちに爪の垢を煎じて飲ませたい。本当に。
▼良い子すぎて応援したくなる参加メンバーはこちら。
齊藤なぎさ
美月
永井愛実
春野ちせ
中川紅葉
すなずりかりん
夏生大湖
柊太朗
今井竜太郎
ロビン
マテウス
魅力②号泣必至の花束ルール
今シーズン限定の特別ルールである「花束ルール」こそ、本作最大の魅力ではないだろうか。
“オオカミちゃんは、メンバーから2人きりで花束を手渡された際、一切の嘘をついてはいけない。”
このルールを聞いたとき「オオカミちゃんにとって嫌なルールだな」と思った。最終告白の前に気になった相手に花束を手渡し「あなたはオオカミちゃんですか?」と質問する。
そうして正体を暴けば、不毛な恋をしなくて済む。参加メンバーにとってはリスク回避ができる画期的なルールだが、オオカミちゃんにとっては正体がバレる嫌なルールだ。
しかし、実際には、花束はただのリスク回避の道具ではなかった。好きな人を信じて最後まで質問しない参加者もいれば、例えオオカミちゃんでも気持ちは変わらないと強い覚悟を持って訊ねる参加者もいた。
そしてオオカミちゃんにとっても、正体がバレる恐ろしいだけのルールではなかった。
オオカミちゃんは、好んで嘘をついているわけではないからだ。
仕事として嘘つきを引き受けたとはいえ、自分を好きでいてくれる人、信じてくれる人に囲まれて過ごす中で、心が動かないわけがない。いつしか自分にとって大切な人となった参加メンバー。そんな大切な人を騙し続けなければならないことが、どれほど辛いものであっただろうか。
そんな苦しい状況で渡される花束と「オオカミちゃんですか?」の問いかけ。
バレた、どうしようの気持ちよりも、やっと正直に伝えられる、と肩の荷が降りたのではないだろうか。正体を明かした後、肩を震わせ涙を流すオオカミちゃんの姿を見て「素直になれて良かったね」と思わずにはいられなかった。
騙し続けなければならない孤独の中、大切な人が与えてくれる、素直になれる短い時間。
花束は、孤独なヒロインに送られる温かな贈り物だった。
魅力③ドンピシャすぎる挿入歌
IVE 「LOVEDIVE -Japanese ver.-」やThis is LASTの「#情とは」 、Vaundyの「そんなbitterな話」等、話題のアーティストの曲も本作の魅力である。
11人の怪しい恋模様や、青春の苦みが素晴らしい楽曲により盛り上げられている。
その中でも私の胸を打った曲が麗奈の「うそつき」である。強がりな女の子を描いたというこの曲は、本作を含めて2期連続でオオカミシリーズに起用されている。
麗奈の透き通った声と素直になれない女の子の切なさが魅力的なこの曲。
最終回を見てから改めて聴くと、オオカミちゃんのためにあるような曲だと感じた。
嘘つき 嘘つき
わたしは心に嘘をつく
騙されないでほしい
わたしの嘘に
優しくしないでほしい
わたしのことを
嘘つきの役目を与えられて参加したオオカミちゃん。感情の変化に戸惑い、最終的には自分の心も騙さなければ、罪悪感で崩れてしまいそうだったのかもしれない。どんなに割り切っていても、感情だけは縛ることはできないのだ。
「騙されないでほしい」「優しくしないでほしい」という歌詞が、仕事への責任と湧き上がる感情で揺れ動くオオカミちゃんの祈りに思えた。
筆者は最寄り駅から自宅までの道のりでいつも音楽を聴いているのだが、最近は「うそつき」がシャッフル再生で流れるたびに泣き、すれ違う人々に憐みの目で見られている。”失恋したのかな、知らんけど”と思われている気がする。ほとんど条件反射なのだが…こういうのを「パブロフの犬」というのだろうか。
……まだまだ書きたいことはたくさんあるのだが、今回はここで終わりにする。興味を持った方はぜひ、直接作品を見てエモさに撃ち抜かれてほしい。
私自身、正直、若い男女の恋愛にここまで感情が揺さぶられるとは思わなかった。
オオカミちゃんは嘘をつかなくてはならないが、普段、私たちの感情は自由だ。感情を縛る鎖があるとすれば、プライドや気恥ずかしさ、良くない方向への想像力。ほとんどの場合、目を閉じて深呼吸すれば、きっと解放される。
心の赴くままに、素直に生きた方が良い。
素直に選択して紡がれる結果は、きっと爽やかだから。
(文 ヤマ)
▼可愛くてかっこいい、参加メンバーの他の出演作はこちら。