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大阪王将の新型店「ハーフサイズ」と餃子の王将「ジャストサイズ」を食べ比べ

創業55周年を迎えた餃子専門店の大阪王将が今年9月に、新モデル店舗を鷺沼にオープンしました。

何が「新モデル」かといえば、「ハーフサイズ」のメニューを充実させたこと、そして老若男女問わず過ごしやすい内装になっていること。

「野菜を食べたい」「いろんなメニューを少しずつ食べたい」など時代の変化とともに“おなかいっぱい”の定義が変わってきたことを受け、大胆にイメージチェンジしていると聞いて、お店を訪れてみました。

一方、ライバルの餃子の王将には小盛りの「ジャストサイズ」メニューがあるということで、食べ比べしてきました。


大阪王将っぽくない洒落たお店

田園都市線鷺沼駅から徒歩2分の場所にお店がありました。筆者は中華料理は大好きですが、これまで大阪王将には入ったことがありません。勝手なイメージで「いろいろ食べてみたいけど量が多いかも……」と感じていました。

しかし鷺沼店はまるでイマドキのオシャレな定食屋かカフェのようなビジュアルです。

大阪王将 鷺沼店の外観
大阪王将 鷺沼店の外観(画像:大阪王将プレスリリース

内装もとてもオシャレ。厨房前にコの字型のテーブルがあり、1人客が座れるカウンターになっています。壁際にはテーブル席。大阪王将は男性客メインのイメージがありましたが、女性客も多くいたのが印象的でした。

他の大阪王将と異なるのは内装だけではありません。メニューにハーフサイズがあるのも鷺沼店の特徴です。

大阪王将のハーフサイズメニュー
大阪王将のハーフサイズメニュー(画像:大阪王将プレスリリース

基本的に中華料理は大皿にどーん!と出てくることが多く、複数人で行けばいろいろ食べられて嬉しいけれど、1人で食べるには1品しか選べないのが少し残念でした。ハーフサイズなら、手軽に複数の料理を楽しめるでしょう。

タッチパネルに各卓コンセント……「お一人様」のニーズをわかっている!

注文はタッチパネルで行います。これも「お一人様」で外食をするときには嬉しい仕様。筆者は1人で外食をするとき、できるだけ他人との会話を避けたいと考えてしまいます。そのため、タッチパネルで完結できると、かなりストレスが減ります。

ビールが飲みたかったため、食事にもツマミにもなりそうな定番の餃子とレバニラ、そして海老チリを注文しました。ハーフサイズなら3品いけるはず!

大阪王将の注文タブレット
注文はタブレット式

注文を終えて気づいたのは、各卓にコンセントがあること。1人客の多くは待っている間や食べている間にスマートフォンを操作することが多いため、コンセントがあると助かります。細かいところまでお一人様ニーズを汲み取っていると感じました。

大阪王将のカウンターにはコンセント
カウンターにはコンセントが備え付けられている

店舗のDX化でハーフサイズを実現

料理が届くまでの間、厨房を見ていてあることに気付きました。一般的な中華料理店、そしておそらく他の大阪王将とは厨房の様子が異なっていたのです。

大きくて重そうな中華鍋を振っているのは男性スタッフ1人だけ。他の女性スタッフ2人は斜めになった鍋の付いた機械の前で作業をしています。

女性スタッフ2人が操作している機械にはiPadくらいの大きさのモニターがついており、よく見ると「野菜を入れる」「片栗粉でとろみをつける」などマニュアルのようなものが表示されています。女性スタッフはその指示に従い、順番に野菜や油、調味料を入れていきます。

大阪王将のキッチン
カウンター越しに見えるキッチンには料理ロボットの姿があった

調べてみると「I-Robo2」という自動調理ロボットが導入されているとのこと。この機械は、加熱温度・加熱時間・鍋の回転スピード・回転方向を細かく調整し、熟練中華料理職人の動きを再現したものです。

大阪王将には調理の速さとクオリティをレベルごとに審査する調理検定試験制度があるそうですが、その中でも全国に17名しかいない難関レベルの「調理1級」を持つ職人と同じ動きをする機械なのだそう!

修業を積まずとも、誰でも機械の指示に従って操作するだけで美味しい中華料理が提供できれば、近年問題となっている人手不足の解消にもつながります。さらに、各々が定められた機械の前で役割に集中することで効率も良い、いわゆる「多能工化」を実現しているのですね。

そうして、2・3分でまずはビールが到着。海老チリ、レバニラ、餃子と順番に出てきて、わずか8分ほどですべての料理が揃いました。

大阪王将の餃子、レバニラ、海老チリ+ビール
注文した餃子、レバニラ、海老チリ+ビール

強火で香ばしく仕上がっており、ビールが進む!調理工程を見ていなければ料理人が中華鍋を振って作ったと思うことでしょう。

ハーフサイズメニューはお一人様にぴったりなだけでなく、ガッツリ食べたい方にとってはメインにもう1品加えるのにも使えそうですし、大人の一人前が多い子どもにも良さそうです。

では、量を半分にすればいいだけのハーフサイズをなぜ今まで提供してこなかったのでしょうか?中華料理は基本的に都度強火で調理することが必要なメニューが多いため、同じ料理をまとめて作らないと効率が悪いのだと思われます。

しかし、鷺沼店は調理ロボットの導入などの機械化・デジタル化により効率化を実現しています。そうすることで、小盛りメニューを素早く提供できるようになったのでしょう。

それなら餃子の王将は?

実は大阪王将とライバル関係にある餃子の王将にも、「ジャストサイズ」という名称で同様の小盛りメニューが存在しています。

餃子の王将の外観
餃子の王将には「ジャストサイズ」メニューがある

大阪王将では鷺沼店のみがハーフサイズを注文可能ですが、餃子の王将では多くの店舗でジャストサイズが注文できます。

餃子の王将のジャストサイズメニュー
餃子の王将のジャストサイズメニュー(画像:餃子の王将公式サイト

餃子の王将に行き、ジャストサイズを注文してみました。大阪王将と同じ3品を注文しようとしましたが、あいにく海老チリは品切れ。代わりにカニ玉を注文しました。

提供時間は大阪王将とほぼ同じ10分弱で、3品同時に提供されました。

餃子の王将の餃子、レバニラ、カニ玉
注文したのは餃子、レバニラ、カニ玉

価格の違いは……

  • 大阪王将:海老チリ540円・餃子3個190円・レバニラ430円

  • 餃子の王将:海老チリ400円・餃子3個181円・レバニラ370円

と、同じメニューでも大阪王将の方が若干高めです(※店舗により価格が異なる場合があります)。

そして餃子の王将は機械ではなく、すべて人が調理していました。「それなら人の手で作った餃子の王将の方が本格的かも?」と思ったのですが……私にはほとんど違いが感じられませんでした

味は好みがあるでしょうが、「ロボットが作ったものは手料理に劣る」ということはなさそうです。

餃子の王将が「人力」でジャストサイズを低価格で提供できるのは、規模の大きさが影響していると考えられます。23年7月時点で餃子の王将は731店舗。大阪王将は341店舗ですから、倍近く差があります。

さらに餃子の王将は回転率をあげて利益を取るビジネスモデル。このあたりの事情が価格にも反映されていそうです。

フードコートにも多く出店する餃子の王将は、人力と規模の経済でジャストサイズを実現しています。フードコートでは複数の店舗でメニューを選ぶことができるのも醍醐味。ジャストサイズはファミリーにも需要があるのでしょう。

状況は違えど、それぞれのチェーンの方法で小盛りメニューを実現していることがわかりました。企業努力により「お一人様中華」がより身近になりそうで、改めてありがたいと感じました。

執筆・写真:松本果歩


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