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【ブランド力向上】情緒的価値とは?機能的価値や自己表現的価値についても解説

ブランドが提供する価値は、「機能的価値」と「情緒的価値」、そして「自己表現的価値」の3つに分けられます。

この記事では、3つの提供価値の内容とブランド力を高めるために必要なことについてわかりやすく解説します。


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機能的価値と情緒的価値の違い

ブランドの3つの提供価値

トレンさん
年齢不詳のマーケター。物知りでトレンドにも敏感。
どんなちゃん
トレンさんの後輩。マイペースだが好奇心は旺盛。

どんな:モノを持つことよりもコトの体験が重視される現代では、「機能的価値」よりも「情緒的価値」の方が大事だって聞いたんですが、そんなものですか?

トレン:企業やブランドが消費者に提供する価値は、「機能的価値」と「情緒的価値」、それから「自己表現的価値」の3つがあります。まず機能的価値と情緒的価値の内容を整理しておきましょう。

機能的価値とは、商品やサービスの特徴やスペック的な価値のことです。情緒的価値とは、商品やサービスから得られるプラスの感情のことですね。

例えばドライヤーでいえば、「価格」や「風量」、「重さ」とかは機能的価値ですね。「信頼できるメーカー」や「髪に良さそう」、「好みのデザイン」とかが情緒的価値です。

機能的価値と情緒的価値
機能的価値と情緒的価値

どんな:確かに、商品を選ぶときにスペックだけで決めることはないですから、情緒的価値は大事そうですね。

トレン:ただし、まず重要なのは機能的価値です。仮に1秒で髪がしっかり乾く、つまんで持てるほど軽いドライヤーが、今使っているものと同じ値段で出たら買いますよね?

どんな:そりゃもちろん!

トレン:とはいえ、現実には技術が成熟し、画期的な製品が安価に出回ることは少なくなっています。仮に機能的価値に優れた製品が出ても、すぐに他社が真似たものを出してきます。

どんな:な、なるほど……。

トレン:そのため機能的価値のみで差をつけるのは難しく、情緒的価値の重要性が相対的に高まっているというわけです。

情緒的価値とブランディング

トレン:それにブランディングにも情緒的価値は大きく関わってきます。

どんな:といいますと?

トレン:そもそも消費者がブランドを選ぶ基準は論理的なものではなく、情緒的なものです。よく例に用いられるスターバックスなんかはわかりやすいですね。

コーヒーをテイクアウトするにしても、他のコーヒーショップやコンビニではなくスタバを選ぶという人も少なくないでしょう。

もちろんスタバの味であったり、魅力的な新商品が多いという点も大きいでしょうが、他店にも同じくらい好みの味の商品はあるかもしれませんし、どこも常に新商品を出しています。なんなら価格で言えばスタバのほうが高いかもしれません。

にも関わらずスタバが人気なのは、やはり情緒的価値が大きいのです。

どんな:確かにカフェのスペック表を作ってどこ行くか決めている人なんていませんもんね……。私なんて、コーヒーに限らずたいていのものを「なんとなく」で選んでいるな~。

トレン:スターバックスのミッションは「この一杯から広がる、心かよわせる瞬間、それぞれのコミュニティとともに―人と人とのつながりが生みだす無限の可能性を信じ、育みます」というものです。

これをブランドの約束事として、タンブラーを手に街を歩くスタイルや家でも職場でもない居心地の良い場所「サードプレイス」の提案などを行ってきたわけです。

そして、消費者と情緒的な関係性を積み重ねていった結果、強力なブランドに育ったと言えるでしょう。

自己実現につながる自己表現的価値

どんな:スタバのロゴの入ったタンブラーを手に出勤すると気分があがるというか、なんか自分がイケてる気がしてくるんですよね~。

トレン:それが3つ目の提供価値である「自己表現的価値」ですね。

例えばファッションなんかは、そのブランドのアイテムを身につけることで「そのブランドを着ている私」という自己表現もしているわけです。

自分の理想的な姿、ありたい姿を表現するために必要な価値を提供しているということです。

どんな:自己表現的価値のあるブランドは強そうですね!なかなか他に取って代われない……!

トレン:そうですね。ただし、自己表現価値は情緒的価値の積み重ねの上で成り立つものです。いきなり自己表現的価値が生まれてくることはありません。

情緒的価値も機能的価値を土台としなければ成立しません。スタバの例で言えば、まずブランドの約束事は機能的価値で満たしている必要があります。品質が悪かったり、居心地が良くなかったりしたら、そもそもダメなわけです。

3つの提供価値の構造
3つの提供価値の構造

どんな:機能的価値がちゃんとしてないと情緒的価値を感じることはできないですもんね……。そうなると当然、自己表現的価値も生まれてこないってことですね。

ブランド力を高める情緒的価値を生み出すためには

どんな:3つの価値を消費者にしっかり感じ取ってもらうためにはどうしたらいいのでしょうか?

トレン:まず大切なのは、消費者から見てブランドがどのような存在であるべきかをしっかり見つめ直すことです。ブランドのあり方やこだわり抜いているところから、「ブランドらしさ」を言語化していきましょう。

そして、もしそのブランドがなくなった場合、消費者にとって何が困るのかというところからブランドの存在意義を見出していきましょう。そのブランドがあることで消費者にとってどんな良いことがあるのかが、「ブランドの約束事」となります。

どんな:ブランドの約束事と照らし合わせて機能的価値で足りていないところがあるかをチェックするだけでもヒントが得られそうです!

トレン:そうですね。ただし、「顧客が欲しいのはドリルではなく穴」とよく言われるように、消費者が求めているのは機能そのものではなく、そこから得られる価値であることを忘れないようにしましょう。

機能的価値を消費者になりきって想像力を膨らませて見ると、さまざまな情緒的価値が発掘できます。製品によっては、機能的価値がそのまま情緒的価値に変換されて受け止められるケースもあります。

どんな:と言いますと……?

トレン:アサヒビールの「未来のレモンサワー」は、缶を開けると本物のスライスレモンが浮かび上がってくることで話題になりました。

トレン:それ自体は作り込まれた機能的価値なわけですが、消費者からは「レモンスライスが浮き上がる様子にドキドキした」や「レモンの匂いと食感にときめく」と、情緒的価値として受け取られたわけです。

詳しくはこちらの記事も見てみてくださいね。

どんな:そこから興味を持って商品について検索して調べる人も出てくるだろうし、メディアでも話題になりそうですね!

トレン:ブランドの約束事を軸に、ブランドのらしさや目指す姿を具体化していくように進化していくことも大切です。

そして、マーケティング・コミュニケーションにおいても一貫性を持って提供価値を伝えていくようにしましょう。

どんな:わかりました!

参考文献:
『実務家ブランド論』(宣伝会議)
『儲かるブランドは、「これ」しかやらない 弱者でも1位をとれる!』(PHP研究所)

執筆:スプ論編集部


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