【第5回】持続的にECサイトを成長させるリピート購入の仕組みづくり | 中小企業のためのEC・ネットショップ立上げ・改善入門講座
今回は「ECビジネスを成長させるために必要な4つのこと」の中で、商品のストーリーづくりの次に欠かせない「リピート購入の仕組みづくり」についてご紹介します。
今回の取り組みは、特に食品や調味料、飲料、化粧品などの多くの競合がいるECビジネスにおいて最も売上アップにつながる効果的な施策になります。
最後まで、じっくり読んでいただけたら、幸いです。
|リピート購入施策とは
「リピート購入の仕組みづくり」は、主に健康食品やサプリメントなどの通販会社において、徹底的に考えられ、発展してきた歴史があります。
DHCやサントリーウェルネス、世田谷自然食品といった通販会社で、「お試し商品」を購入した後、驚くような頻度でDMが届き、定期購入や割引購入を提案されたという経験を持っている方は少なくないと考えます。
とあるセミナーで、筆者は「にんにく卵黄」などで有名なやずやさんは、「一度購入したお客さんに対して、30日以内に10回接触すること」を愚直に行い、実践されていると聞いたことがあります、驚いたことがあります。
このエピソードから、やずやさんでは、いかに一度購入していただいたお客さんにもう一度購入して頂くことを大切にしているのかが、ひしひしと伝わってきます。
このように通販会社では、ECが登場する前から、大きな費用をかけて、テレビや新聞広告、チラシを打ち、商品を宣伝し、リピートのお客さんを獲得し、売上を伸ばしてきたのでした。
そして、長い通信販売の歴史のなかで、最も効果が高い施策として認識され、いまなお実践され続けているのが、「リピート対策」なのです。
|なぜリピート購入が大切なのか
どんな業界であっても、新規の顧客を獲得するためには利益を上回る費用がかかると考えられます。利益を出すためには、どんな業界であっても、リピート顧客をつくることが欠かせません。
たとえば、下の図1のように、100人の新規のお客さんを獲得した時、広告などによって新規顧客の獲得ばかりを追求しているお店では、4回目の購入までに3パーセントものお客さんしか残りません。
一方で、顧客満足を追求するお店では、4回目の購入にいたっても73パーセントものお客さんを維持することができます。
リピート対策ができていない店では、4回目の購入までに97%のお客さんを失ってしまうのです。
この例を見れば、「リピート購入の仕組み」がないECビジネスは、ざるに水を流し込むようなものであることがよく分かるでしょう。
一方で、売上を求めるがあまり、「ウチの商品はいいものだから、一度でも購入してくれれば、自然とお客さんはついてくるだろう」と多くの広告費を投入して、店舗運営を行っている企業も少なくありません。
このように焦る気持ちが、分からないわけではありません。
しかし、下の図2のように、購入して頂いたお客さんが何度も訪問し、再購入して頂ける「汲み上げポンプ」のような仕組みをつくることがECビジネスの成功には欠かせません。
さらに言えば、食品や調味料、飲料、酒類、化粧品、サプリメント、健康食品においては、上で述べたように「長い歴史の中で検証されてきた最も効果的な売上アップ施策」になるのです。
|「生涯顧客価値」が重要になる理由
ECビジネスでは、これまで以上に、お客さんの「生涯顧客価値(LTV:Life Time Value)」について考えることが重要になっています。
「生涯顧客価値(LTV)」とは「ある一定期間に顧客がどのくらいの売上や利益をもたらしてくれるか」ということを表す指標です。念のため、売上ベースの生涯顧客価値(LTV)は次のような計算式で求めることができます。
では、いま、なぜECビジネスで、この生涯顧客価値(LTV)が重要になっているかというと、競争が激しい市場では「顧客獲得単価(CPA:Cost Per Aquisition)」が増加傾向にあると考えられるからです。
「顧客獲得単価(CPA:Cost Per Aquisition)」とは、広告などで1人のお客さんの獲得にかかったコストのことを指し、下記の計算式で求められます。
あくまで例ですが、ECビジネスがまだ珍しいものだった20年前には1人のお客さんを獲得するためのコスト(CPA)が100円、200円だったものが、今の時代では1,000円、2,000円になっていることも珍しくありません。
筆者も新しいタイプの広告の活用で驚くほどの効果を実感したことがありますが、得てして新しいタイプの広告の効果は時間とともに低下してきます。
実際に、サプリメントの販売といったような多くの競合がいる市場では、1人のお客さんを獲得するためのコストが粗利益よりもかかっていることが少なくありません。
そこでEC事業を運営して、継続的に利益を得るために、もっとも大切なことは1人のお客さんに何度も買っていただくことになるのです。
筆者の実体験としても、多くのお客さんに1度だけ購入して貰うよりも、1人のお客さんに繰り返し買っていただいたほうが、売上アップの効果を強く感じました。
たとえば、一か月に1000人のお客さんに、平均購入単価が4,000円のものを買って貰うと、月商400万円になります。
広告や販売促進策だけで、この売上をつくろうとすると、翌月の売上は0円からの積み上げで計算することになるのに対して、リピート対策がしっかりできていると、月商320万円(80%のお客さんが再購入すると仮定して)にプラスして、新しい店舗運営の施策の効果が積みあがるというイメージが持てます。
特に、食品や調味料、飲料、酒類、化粧品といった商材では、こうした同じ商品を繰り返し買って頂けるお客さんが売上とともに、利益の大半をもたらしてくれていると様々な事例を見て、実感します。
|リピート施策が新規顧客の獲得策になる理由
さらに、楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングなどのECモールの検索エンジンでは、「モールのお客さんの満足度」を向上させるために、
キーワードごとの商品購入確率(コンバージョン率)
キーワードごとの商品売上高
キーワードごとの商品売上個数
といった数値がカウントされ、モール独自のアルゴリズムを通して、検索結果の表示順位が決められていることが推測できます。
厳密にいえば、このアルゴリズムは完全にブラックボックス化されているものなので、何が正解かは分かりません。
しかし、8年近く現場で、ECビジネスを見てきた筆者の見解として、「キーワードごとの商品購入確率(コンバージョン率)」は、どのECモールにおいても大きな影響を与える指標ではないかと考えます。
ここから、短期間に多くの人が購入することよりも、長期間にわたってファンの方が高い確率で商品を購入してくれるほうが、「検索エンジンの上位表示対策(SEO対策)」として優れていると考えます。
なぜなら、高確率で商品を購入してくれるファンがいる商品は、(上記の仮説がもし正しければ)長期間にわたって無料で検索結果の上位に表示され続けるからです。
このような理由から、「リピート購入の仕組みづくりは、ECビジネスにおいて、最も効果的でコスパのよい新規顧客の獲得策にもなる」と筆者は考えています。
ECにおいて「リピート購入の仕組みづくり」は、新規の顧客獲得による売上アップともに、広告費用の削減(=営業利益の確保)においても欠かせない重要な施策になるわけです。
|リピート購入の仕組みづくり
では、ここまで語ってきた「リピート購入の仕組み」は、何をすれば構築できるのでしょうか。
「定期通販の仕組みを導入する」という考え方もありますが、さきほど述べたコンバージョン率の向上によるSEOや新規の購入者の増加といった効果は望めません。
ここから「積極的に自社の商品を評価して、周囲に推奨してくれるお客さんを増やすこと」には、どんなことをしたらいいのかを考えてみましょう。
結論から言うと、リピート購入とは、商品を購入して届いて使用した時に、期待を超える満足を与えられた時に発生する、と筆者は考えます。
つまり、ECやネット通販において、お客さんがワクワクして商品を探して、選び、カートに入れた時に抱いた期待以上のものを、自社の商品やサービスで与えられた時に、はじめて人は「また買いたい」という気持ちが湧いてくるのです。
このためには商品を購入するお客さんの気持ちをじっくり想像して、「お客さんが喜ぶこと、感動すること」を入念に準備することが必要となります。
まず、商品について、よく見つめてみましょう。
商品は、商品ページで訴求している夢や体験、暮らし方、生き方に応えられるカタチになっているか、を考えてみましょう。
実際にECサイトを運営している方は、商品の機能や品質、仕様、価格、納期について、改善できる点はないかを、レビューなどを読み込むことで把握してみましょう。
「お客さんが望んでいるコト」に適っていないものは改善することが、最も遠回りに見えて、リピート購入を増加させる近道になります。
次に、リピートしていただくためのプロモーションやサービスを考えてみましょう。
筆者の趣味は、EC店舗で購入した時の同梱物を集め、リピートするための施策を吟味することです
数多くのEC店舗で購入した経験から、効果的なリピート対策をまとめると、次のようなものが考えられます。
見るだけでワクワクする商品の説明パンフレットをつくる
(手書きでも、自社で印刷したチラシでも構いません)使い方がイラストや写真で分かりやすく書かれたマニュアルを用意する
自店にて取り扱っている商品一覧のカタログの作成し、同梱する
再購入しやすいまとめ買いセットや箱買い商品の準備する
食品や飲料などでは、購入したお客さんが周囲の人に配ったり、プレゼントできるような「おすそ分け袋」や「小分け袋」をつける
サンキュークーポンを発行し、購入者にもれなくプレゼントする
レビュー投稿でリピート割引されるクーポンを発行して案内する
購入後の使い方をより分かりやすく説明したフォローメールを送信する
お客さんの消費タイミングを計算して、自動配信されるメールを作成する
店長さんやスタッフの顔が見え、お店のことが分かる手書きのリーフレットやニュースレターを作成し、同梱する
アンケート葉書やTwitter投票やGoogleFormなどを活用してでお客さんの声を聞く取組みを行う
箇条書きにすると、どれもが簡単なことのように見えますが、上記のような取組みを3つ以上、組み合わせて行えている店はほとんどないように感じます。
逆に言うと、ほとんどのEC店はリピート対策に力を入れていないのです。ここから、真剣にリピート対策に取り組めば、あなたのお店はお客さんの定着や売上アップという効果を実感することができると考えます。
日常的にネットショップを利用している中で、「もう一度、このお店で商品を買いたい!」「この商品は、このブランド以外は買わない!」と強く感動するお店に出会ったことはないでしょうか。
あなたがそのようなお店に出会ったことがあるならば、その店の商品についている同梱物や購入後に行っているサービスやフォロー施策をよく見て、考えていただきたいと思います。
※
もし、自店の「リピート購入の仕組みづくり」について、自分一人やスタッフで考えることが難しいと思う場合には、当オフィスまでご相談ください。
当オフィスでは、ここまで述べてきた「リピート購入の仕組みづくり」に関する専門セミナーも用意しており、経営者やスタッフの方に向けて、リピート購入の重要性を伝えることもできます。
また、あなたと一緒になって、お店の現状や取り扱っている商品の特長から最も効果的なリピート施策を考えることもできます。
特に、食品や調味料、ドリンク、酒類、化粧品といった商材では、大きな効果を感じることができると考えます。ぜひ、こちらから、ご相談いただけましたら、幸いです。
次回の記事では、「ECビジネスを成長させるために必要な4つのこと」のうち、最後の要素、「熱狂的なファンをつくる店舗運営」について解説させていただきます。
今回も長文の記事をお読みいただき、本当に有難うございました。
それでは次回の記事でお会いいたしましょう!
▼次の記事は、下記となります。
【第6回】熱狂的ファンをつくるEC店舗の運営方法
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どうぞ、上手くご活用ください。
▼過去の連載記事を読みたい方は、下記をご参照ください。
『中小企業のためのEC・ネットショップ立上げ・改善入門講座』【全7回】
【第1回】ECとは、サイトではなく、ビジネスをつくるものである
【第2回】EC事業に想いを乗せる方法
【第3回】お客さんがECで購入しているのはモノではなく、夢や体験である
【第4回】ECで販売する商品のストーリーのつくり方
【第5回】持続的にECサイトを成長させるリピート購入の仕組みづくり
【第6回】熱狂的ファンをつくるEC店舗の運営方法
【第7回】企業がEC事業に本気で取り組んだ時に与えられる2つのもの