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反撃戦略・戦術と芸人

戦略・戦術の真の目的について私なりの解釈を行うとすれば、それは、自分たちに有利な勢い、いわゆる「流れ」を作ること。そう私は考えています。

どちらに勢いが向かおうとしているのか判別しない時に「流れ」を意識的に作り出し、それを自分たちの側に持ち込む。一度それが自分たちに有利に働きだしたら、あとはできる限りその「流れ」に流されるように動けば、自然と勝てる。戦況をそんな風に変えること~これが戦略・戦術の真の目的だと想う訳です。

これを逆の立場から考えれば、一番難しく困難で、しかし鮮やかで美しい戦略・戦術。それは明らかに相手方にある勢いや流れをくい止め、あるいは何とか引き分けに持ち込み、自分たちにとって致命的となるような決定的な敗北を避けるための戦略・戦術。そう、私の言う逆転戦略です。

逆転戦略のポイントは、次のようなパターンです。

【1.】ぎりぎりこちらが追い詰められた場面で、こちらも相手も双方が傷つきかねないため相手が応じにくい「正論の1手」を打つ。
(こちらは追い詰められているので応じやすい)
【2.】相手がその状況で、誤手を打つのを待つ。
(相手は追い詰めているので応じにくく油断をしやすい)
【3.】相手がそのような対応をしたので、仕方なくこちらは追い込まれて、やりたくはなかったが、このような対応をせざるを得ない~という形で反撃する。
【4.】相手が困ったところで、手打ちに持ち込む。

2.反撃戦略の例

ことの良し悪しは横において
芸能マネジメント会社と所属芸人のごたごたは、ガバナンスと権力と実質的なパワーの所在の妙をついた「逆転戦略」が効を奏した一例として
理解していただくと面白いと思います。

「全てを話すので会見を開かせて欲しい」~これは芸人側の出した正論の一手です。【1.】
本来であれば、マネジメント会社は、「判った、しかし会見は我々の責任もあるので会社側できちんと事情聴取をした上で全て会社側が行う。それがマネジメント会社の責任である。後は、世間の判断に委ねよう」
これで当面の無期限謹慎対応若しくは状況により契約解除、会社側は「マネジメントと反社会勢力の対応の話」をしてけりがつき、会社や役員が傷つくこともなかったと思うのです。

しかし、報道によれば、先方の放った一手に対して、弁護士に対応を任せ、文章で一方的に契約解除の通知をしてしまいます【2.】。結果として、芸人にとってはホームグラウンドである「テレビの世界」で、「仕方なく」自ら会見を開く【3.】ことに成功した訳です。マネジメント側は会見を開かせる理由を与えてはいけなかった。

後は、「マネジメントと反社会勢力の対応の話」から遠く離れた、情をからめた「親と子も同じ」の話や人情話に転換されて行ったのはご存じの通りです。

あとは手打ちです【4.】もしかしたら、ここでこれから芸人さん側がミスを起こすかも知れません。私なら、騒動を大きくせず早い手打ちに持ち込みますが。(この事例の状況は、2019年7月24日現在の状況を基に記載しております)

3.反撃戦略は有効な手段である

反撃戦略・戦術の有効なところは、選択や意思決定を相手に基本委ねながら戦えることです。多くのマネジメントの失敗は「選択するから」です。
多くの選択は次の選択肢を狭めることが多いのです。
「自分の行った選択や意思決定」で「次の打つ手が限られてくる選択を強いられ追い込まれる」。
逆転戦略はこれを逆手にとった戦略・戦術なのです

羽生善治氏はこのように述べています

ミスはミスを呼び
悪手は悪手を呼ぶ。
プロがミスをしないのは
ミスしにくい局面を選択しているからなんです。
(日本経済新聞 2005年1月1日 新春対談から)

少しトラブルがあって、旧アカウント消して新たに再出発。以前のアカウントフォローされていた方🙇。今度はゆっくりやります。