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はじめての線形代数part3 ~Aⁿを求めよう!(簡約化編)
前回の復習(Aⁿの求め方)
$${A}$$をどうにかして、対角行列$${P^{-1}AP}$$にする。
$${P^{-1}AP}$$をn乗する
$${(P^{-1}AP)^n}$$をどうにかして$${A^n}$$に戻す。
簡約化応用ver.
連立一次方程式のみの簡約化
前回の時は連立一次方程式を解く際に仕切りを設けました。また、簡約化した行列は正方形の行列でした。しかし、これは例外的なもので、行列の簡約化のみに着目すると話は大きく変わっていきます。
一般的な簡約化
そこで一般的な行列の話に拡大していくため、簡約化の手順を以下のように変更します。
ある行を何倍かした数字を別の行に足す
行は任意の数字で割ることができる
左上から斜めに1が入り、左下に0が集まるように変形する。0と1以外の数が残る場合もある。(変更前:単位行列にする)
完全に簡約化した例
具体例を見たほうが分かりやすいです。以下は正しく簡約化が終わった後
の行列です。
$${A=\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\end{pmatrix}}$$
$${B=\begin{pmatrix}1&0&2\\0&1&0\end{pmatrix}}$$
$${C=\begin{pmatrix}0&1&0&0&2\\0&0&0&1&0\\0&0&0&0&0\end{pmatrix}}$$
不完全な簡約化の例
以下は簡約化が不完全な行列(いわばダメな例)です。1が含まれる列は他が0になることを意識しましょう。
4. $${\begin{pmatrix}2&0\\0&1\end{pmatrix}}$$(1行目を2で割ってないために左上から斜めに1が入っていない。正しくは$${\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}=D}$$
5. $${\begin{pmatrix}1&0&2\\1&1&0\end{pmatrix}}$$
(2行1列目の数字が1となっており不適。1行目から2行目を引くことで左下に0が集められる。正しくは$${\begin{pmatrix}1&0&2\\0&1&-2\end{pmatrix}=E}$$
6. $${\begin{pmatrix}1&0&2\\0&1&2\\0&1&3\\0&0&1\end{pmatrix}}$$(2行目と3行目を確認すると2列目で1が重複しています。3行目に2行目を引くと次は4行目と重複するのでこれを引き算し、残りを調整します。正しくは$${\begin{pmatrix}1&0&2\\0&1&2\\0&1&3\\0&0&1\end{pmatrix}\sim\begin{pmatrix}1&0&2\\0&1&2\\0-(0)&1-(1)&3-(2)\\0&0&1\end{pmatrix}\sim\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&1\\0&0&0\end{pmatrix}=F}$$
rank(階数)について
ここでランクを解説します。ランク(または階数とも呼ばれます)とは数字がある行の数のことです。厳密にいうと、簡約化した行列で、0以外の数が含まれる行の数をランク(または階数)いいます。行列$${A}$$のランクを$${rank(A)}$$と表記します。
試しに先程例にしたの行列のランクを求めてみましょう。
$${rank(A)=2,rank(B)=2,rank(C)=2,rank(D)=2,rank(E)=2,rank(F)=3}$$となります。
ランクを勉強するメリット
ランクを理解するメリットは連立一次方程式の解の個数が分かることです。連立方程式の解は大きく3つのタイプに分かれます。
ただ1つの解に定まる
解が定まらず、任意定数を置く
解なし
任意定数ありの場合
2のタイプを説明します。$${\begin{Bmatrix}x-2y=1\\2x-4y=2\\3x-6y=3\end{Bmatrix}}$$の連立方程式を見てみましょう。詳しくは省略しますが、$${x=2c,y=c(cは任意の実数)}$$ となるはずです。任意定数が1つ出てきました。この任意定数の数がランクを使うことで判明できます。
「文字数-ランク」で任意定数の数が出ます。
この連立方程式を行列にみたてると$${\left(\begin{array}{cc|c}1&-2&1\\2&-4&2\\3&-6&3\end{array}\right)}$$となります。これを簡約化すると$${\left(\begin{array}{cc|c}1&-2&1\\0&0&0\\0&0&0\end{array}\right)}$$となります。ランクは1ですね。文字数が$${x,y}$$の2つに対してランクは1なので任意定数の個数は$${2-1=1}$$で1つと分かります。
解なしの場合
3の解なしのパターンを見ていきましょう。
$${\begin{Bmatrix}x-2y=1\\x-2y=0\end{Bmatrix}}$$
の式を例に挙げます。実際に計算してみると、この連立方程式には解はありません。
これも行列で表現していきましょう。$${\left(\begin{array}{cc|c}1&-2&1\\1&-2&0\end{array}\right)}$$
これを簡約化すると$${\left(\begin{array}{cc|c}1&-2&1\\0&0&1\end{array}\right)}$$となります。
解なしの場合を判断するときには1番下の行を見ると分かります。1番下の行は$${0,0,1}$$となっており、これは$${0x+0y=1}$$を意味するので矛盾が生じます。
厳密に言うと、仕切りの右側のランクと仕切りを除いたランクが一致しない場合に解なしが起こります。今回だと1と2になるので不一致です。
以上がランクの解説となります。
逆行列を求めよう
皆さんお疲れさまでした。難しいランクの話を乗り越え、やっと逆行列の話になります。逆行列を覚えていますか?$${PP^{-1}=E}$$になる、$${P^{-1}}$$のことです。これを求めれれば、冒頭の
$${A}$$をどうにかして、対角行列$${P^{-1}AP}$$にする。
の手掛かりになりえます!
連立方程式と似てる?
連立一次方程式を解いたときに
(行列)×(文字の縦ベクトル)=(数の縦ベクトル)の形にして解きました。例として$${\begin{pmatrix}1&2\\3&4\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}5\\6\end{pmatrix}}$$のようなものです。これを一般化しましょう。ベクトルを矢印表記で表すと、$${A\vec{x}=\vec{b}}$$になります。($${A}$$を行列,$${\vec{x}}$$を文字の縦ベクトル,$${\vec{b}}$$を数の文字のベクトルとします。)
この式($${A\vec{x}=\vec{b}}$$)は逆行列が含まれる式($${A×A^{-1}=E}$$)と似てはいないでしょうか。$${\vec{x}}$$を$${A^{-1}}$$に見立てると、逆行列を求める際に今まで使ってきた簡約化に応用できると思いませんか?文字のベクトルが行列になることに違和感が起こるかもしませんが、気にせず進みましょう。
実際に計算してみよう!(簡約化で解く方法)
実際に計算をして確認しましょう。$${A=\begin{pmatrix}3&5\\1&2\end{pmatrix}}$$としましょう。数の縦ベクトルが単位行列$${E}$$になることに注意して(行列になるのに違和感を持つと思いますが、一旦許容しましょう。)、いつもの仕切りのある行列に表しましょう。$${\left( \begin{array}{cc|cc}3&5&1&0\\1&2&0&1\end{array} \right)\sim\left( \begin{array}{cc|cc}3-3&5-6&1-0&0-3\\1&2&0&1\end{array} \right)\sim\left( \begin{array}{cc|cc}0&-1&1&-3\\1&2&0&1\end{array} \right)\sim\left( \begin{array}{cc|cc}1&2&0&1\\0&-1&1&-3\end{array} \right)\sim\left( \begin{array}{cc|cc}1&2-2&0+2&1-6\\0&1&-1&3\end{array} \right)\sim\left( \begin{array}{cc|cc}1&0&2&-5\\0&1&-1&3\end{array} \right)}$$
となりました。この$${\begin{pmatrix}2&-5\\-1&3\end{pmatrix}}$$が逆行列$${A^{-1}}$$となります。実際に$${A×A^{-1}=\begin{pmatrix}3&5\\1&2\end{pmatrix}\begin{pmatrix}2&-5\\-1&3\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}=E}$$となります。
このように簡約化をすることで逆行列を求めることができます。
おわりに
テーマの$${A^n}$$の求め方に変化はありません。しかし、簡約化を利用して逆行列を求めることができました。
しかし逆行列には求め方が2つありました。
簡約化を繰り返す
$${\dfrac{余因子行列}{行列式}}$$で計算する
でした。次回はこの$${\dfrac{余因子行列}{行列式}}$$について考えていきます!
ご覧頂きありがとうございました。
問題
追記:練習問題を作りました!解答はこちらです。
はじめての線形代数 練習問題3
基本問題
$${問1:次の行列 A のrankを求めよ\\A = \begin{pmatrix} 2 & 4 & 6 \\ 1 & 2 & 3 \\ 3 & 6 & 9 \end{pmatrix}}$$
$${問2:次の行列 B のrankを求めよ\\B = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 3 \\ -2 & 1 & 1 \\ 5 & 2 & 8 \end{pmatrix}}$$
$${問3:与えられた行列 C の逆行列を簡約化して求めなさい。\\C = \begin{pmatrix} -3 & 7 \\ 2&-5\end{pmatrix}}$$
応用問題
$${問4:与えられた行列 D の逆行列を簡約化して求めなさい。\\C = \begin{pmatrix} 2 & 1 & 3 \\ 0 & -2 & 2 \\ 4 & 5 & 2 \end{pmatrix}}$$
$${問5:\\行列Eが次のように与えられています。\\E=\begin{pmatrix}1 & 2 & 3 \\ 0 & 1 & 4 \\ 0 & 0 & 1\end{pmatrix}\\1.行列 E のランクを求めてください。\\2.行列 E の逆行列を求めてください。}$$
$${問6:逆行列の性質を利用して\\次の連立方程式の解を求めなさい。\\x+4y=10\\4x+3y=1}$$