「さよならアメリカ、さよなら日本」: 現代社会と文化的アイデンティティを問い直す展覧会 10/23-30@PARA神保町
皆さん、こんにちは!
この度、2024年10月23日から30日まで開催する展覧会「さよならアメリカ、さよなら日本」の展示キャプションを、ここにまとめて公開いたします。詳細や時間はインスタグラムをご確認ください。
本展は、戦後から現代に至る日米関係の変遷や戦後のポピュラーカルチャーの流布を、多角的な視点から探求するアート展です。
アーティストたちがそれぞれの視点で捉えた歴史、政治、デジタル文化、そしてアイデンティティの変容を、キャプションとともにご紹介します。
以下、各作品の背景や意図について詳しく解説していますので、展覧会の前にぜひご一読いただき、作品に込められたメッセージを感じ取っていただければ幸いです。
「さよならアメリカ、さよなら日本」展示のご挨拶
本展示は、戦後から現代に至る日米関係の変遷を、芸術表現を通じて多角的に探求します。私たちは、デジタル時代における文化的アイデンティティの形成と変容、情報の伝播と消費のメカニズム、そして近代国家概念の変容について、芸術的視点から洞察を提供することを目指しています。
展示では、政治と民族運動、そして現代社会におけるポップカルチャーやデジタルコミュニケーションの社会や政治への影響を反映した作品群をご覧いただけます。
本展示は、歴史的文脈を踏まえつつ、現代社会の課題を鋭く切り取った作品群を通じて、鑑賞者の皆様に新たな視点を提供することを目指しています。それは単なる過去の回顧ではなく、私たちの未来への重要な問いかけとなるでしょう。
私たちは、この展示が皆様にとって、急速に変化する現代社会と私たちのアイデンティティについて、深い思索を巡らせる機会となることを願っています。
注意事項:
本展示の作品は、特定の政治的立場や主張を支持・否定するものではありません。
これらは現代社会の複雑な側面を芸術的に解釈したものです。
展示には、インターネット上のコンテンツにリンクするQRコードが含まれる場合があります。
リンク先のコンテンツは作者のコントロール外にあり、予告なく変更される可能性があります。
閲覧は自己責任でお願いいたします。
作品の解釈や感想は個人によって異なる場合があります。
他の鑑賞者の方々への配慮をお願いいたします。
Chiaki.Y.Lhaden「the star spangled banner 10.2024」
本作品は、アメリカの歴史と現代のデジタル文化を融合させた芸術表現です。スミソニアン博物館所蔵の南北戦争時の星条旗を再現し、そこに現代のデジタル要素を組み込むことで、国家のシンボルの歴史的重要性と現代社会の流動性を対比させています。
作品の基盤となる再現された星条旗は、国家の統一と愛国心の象徴でありながら、同時に抑圧、分断という歴史も内包しています。この複雑な意味を持つ国旗に、2024年10月時点で話題のアメリカ大統領選関連のネットミームなどのQRコードを組み込むことで、伝統的な国家概念と現代のデジタルアイデンティティの対比を表現しています。
鑑賞者は、スマートフォンでQRコードを読み取ることで、ランダムに選ばれたTikTok上の大統領選関連投稿などをご覧いただけます。これらは、インターネット上で急速に生成され、変化し、消費される「腐る記号」としてのデジタルイメージやミームの現象を捉え、現代のインターネット文化における情報の消費と拡散のメカニズムを表現しています。その体験を通じて、デジタル時代における政治的シンボルの可変性と影響力を示唆しています。
the star spangled banner 10.2024は、グローバル化とデジタル化が進む現代社会における文化的アイデンティティの流動性と、シンボルの意味が急速に変化する「すぐに腐る記号」の概念を探求しています。本作品は、現代社会における象徴の意味、情報の伝播、そして政治的アイデンティティの形成過程が新たな段階に入ったことを考察します。
注意事項:この作品は、特定の政治的立場や主張を支持・否定するものではなく、現代社会の複雑な側面を芸術的に解釈したものです。鑑賞者の皆様には、この作品を通じて、私たちを取り巻く情報環境と社会の変容について、自由に思索を巡らせていただければ幸いです。本作品に含まれるQRコードは、tiktok上のコンテンツにリンクしています。リンク先のコンテンツは作者のコントロール外にあり、予告なく変更される可能性があります。閲覧は自己責任でお願いいたします。
喫茶みつる「奴隷のしつけ方」
この作品は、日本の戦後史と個人の経験を重ね合わせたパフォーマンスアートです。アーティスト喫茶みつる本人は日本のバブル崩壊後に生まれた「ロストジェネレーション」と呼ばれた世代です。その背景は敗戦後の日本の繁栄と没落、そしてその過程で見過ごされてきた社会問題を存在で体現しています。
パフォーマンスでは、敗戦後の日本高度経済成長期を象徴する坂本九の映画主題歌であり、1963年日本人で初めてアメリカのビルボードチャートで一位を獲得した「上を向いて歩こう」に合わせてパフォーマンスを行います。これは、敗戦後の日本の再出発と希望、少しの悲哀の表現を感じる唯一無二のメロディを持つ曲に合わせ、バブル崩壊後の「失われた10年」を経験した世代として「奴隷」の身体を元に苦悩を鮮明に描き出しています。「ロスジェネ」世代に生まれた喫茶みつるが坂本九「上を向いて歩こう」に合わせて踊るパフォーマンスは、現在に至るまでの「敗戦国日本」が夢見た復活とそして没落、その中で見て見ぬふりをしてきた罪と残滓を背負い、今に至るまで無視され疎外され続けている「失われた世代」の身体の悲哀を内包しています。
このパフォーマンスはジェリー・トナー「奴隷のしつけ方」を参考に形作られており、戦後日本の社会構造と個人の抑圧という重層的なテーマを探求しています。敗戦国の弾けた夢の中で翻弄された身体から生まれる悲哀。戦後日本の悲哀とロストジェネレーションとしての彼自身の悲哀が「奴隷のしつけ方」という作品で重なります。
村上裕「黒点」
本インスタレーションは、国家という概念を芸術的に再解釈し、歴史的文脈を現代に接続する試みです。戦時中の日本国旗への寄せ書きという歴史的事実を踏まえつつ、現代の視点からこの行為を再考し、平和的かつ創造的な形で再構築しています。
作品は、誰もが自由に国旗に描き込める参加型のインスタレーションです。これは、かつての戦地へ行く若者たちへの寄せ書き行為を再解釈し、国家のシンボルと個人の表現の関係性を探求するものです。日の丸の中心を太陽光で焼く行為は、日本の伝統的シンボルと現代的視点を融合させた芸術表現です。この行為は、時代とともに変化する国家観や、社会が直面する様々な課題を象徴的に表現しています。
本作品は、国旗という象徴に自由に描き込む行為を通じて、「国家とは何か」という根本的な問いに向き合うことを観る者に促します。戦後の日本人として、私たちは国旗に何を描くのか - この問いかけは、国家アイデンティティの再考と、より開かれた未来への可能性を示唆しています。
本インスタレーションは、歴史を踏まえつつも、それを乗り越え、新たな対話と表現の場を創出することを目指しています。観客の皆様には、この作品に参加することを通じて、過去と現在、個人と国家の関係性について、自由に思索を巡らせていただければ幸いです。
注意事項:本作品は特定の政治的立場や歴史観を支持・否定するものではありません。これは歴史的事実と現代社会の複雑な側面を芸術的に解釈し、観客の皆様に新たな視点を提供することを目的としています。作品の解釈や感想は個人によって異なる場合があります。