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教えてもらったことが真逆で葛藤が生まれたら
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教えてもらったことが真逆で葛藤が生まれたら
自然農に限らず、自然栽培・有機栽培・慣行栽培どんな栽培方法でも教えてくれる人によって話が違うことがよくある。
こうなると初心者ばかりかそれなりに勉強している人でも混乱してしまい、
「いったいどっちなんだーい!おい!」と叫びたくなるに違いないw
たとえば、「朝陽は当たるが夕陽は当たらないところ」と「朝陽は当たらないが夕陽は当たるところ」どちらのほうが良いのか?
こういった質問は講座参加者からもよく聞かれる。
これに対して俺が学んできたのは前者のほうがよく育つということ。
理由は植物は朝陽の柔らかい波長の光を浴びることで夜から昼の切り替えをして、茎葉を伸ばそうとするから。
しかし、人によっては後者という。
理由は夕陽の強い波長が長い日差しのエネルギーが強く、野菜がそれを受け取ることで強く育つから。
さて、あなたはどっちが良いと思うだろうか?
こういう人によって言ってることが全然違うとき、思い出してほしい言葉が二つある。
どちらも農業界では有名な格言だ。
ひとつは「すべての真実は、すべて嘘」。
そもそも、日本の土質は農業界では17種類に分類される。
さらに北海道から沖縄まで縦に長いため、日本には寒帯から亜熱帯まで幅広い気候が存在する。
しかも、日本海側、太平洋側、内陸、内海とさまざまな地形が生み出す気候の違いも存在するのだ。
同じ都道府県でも東西南北、上下左右中央で全く違う気候になることも珍しくない。
あなたの畑が海沿いなのか、盆地なのか、山間部なのか、谷なのか、高原なのか。同じ市内でも話が違ってくる。
土が違えば気候が違えば、話が違うのは当たり前だろう。
環境の違いだけではない。
そもそも育てている野菜だって、世界中から集められた野草たちである。
それぞれに個性があり、得意な土質・苦手な土質、得意な気候・苦手な気候がある。
また、成長の段階で水が欲しい時と水が必要ない時があることも忘れてはいけない。
野菜が違えば野菜と環境(土と環境)の組み合わせが違えば、話が違うのは当たり前だろう。
たとえばスイカは砂漠出身の野菜である。
だから夏に夕陽の強い日差しは嬉しいに違いない。
しかし土が砂質で乾燥しすぎてしまえば、実をつける前に枯れてしまうこともあるだろう。
同じウリ科でもキュウリはヒマラヤ山麓出身の野菜である。
だから日本の夏は暑すぎる。朝陽だけのほうが気持ちよく育つ。
しかし、梅雨時に全然晴れなければ光合成不足で、過湿で弱ってしまうだろう。
つまり、何が言いたいのか。
これが二つ目の格言である。
「良いかどうかを決めるのは人間ではなく、野菜たちだ」
学んだ農法を試してみて、野菜の配置を決めてみて、畝のデザインを決めてみて、
野菜が元気に育てばなんだっていいのだ。
師匠の教えも、教科書の内容も関係ない。
なぜなら、私たちの目的は野菜を育てることなのだから。
師匠の教え通りにすることでも、教科書通りに栽培することでもない。
細胞分裂に限界があることを偶然発見した解剖学者ヘイフリックはインタビュアーの「若い人に伝えたいことはありますか?」という問いにこう答えた。
「Be independent and ask questions」独立心を持ち、疑問を持ちなさい。
定説や権威に従うのではなく、自分の目で観察し、実験し、考えることの大切さを強調した。
さて、最後にもう少し。
よく同じ自然農でも言っていることが違うと「人によって考え方が違うから」と説明する人がいるが、それは正しくない。
人が違っても自然の摂理は変わらない。野菜の個性も変わらない。
人が違って変わるのはただの好みである。
まず味の好みが違う。
農法によって味は変わる。土質で味が変わるし、気候でも味が変わる。
多くの自然農法家は自分好みの味にする。
だから自然農法家のテクニックの違いは土質や環境の違いもあるが、自分好みの味に近づけるために違っているとも言えるのだ。
次に好きな作業が違う。
たとえば俺は育苗が好きで草刈りの回数をできるだけ減らしたい。ハーブにはあまり興味ないし、雑草を食べるのも好きだ。
だから育苗ありきだし、草刈りを減らす工夫が多いし、ハーブはあまり使わないし、雑草をできるだけ生かす栽培方法である。
自分の好みや個性を最大限配慮していくからこその農法にたどり着く。
もちろん、自給用で良いのか販売なのか、一人なのか誰かに手伝ってもらうのか、とその人の都合の関係してくる。
だから、人によって言うことは変わって当然なのだ。
しかし、最終的には野菜が決めることは変わらない。
だから観察とフィードバックを受け取ることを怠らないでほしい。
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