「流行りのダイエット法」と「流行りの育児メソッド」の意外な共通点とは…
このような趣旨の記事や書籍タイトルを目にしたことがある方は多いと思う。
・天才児の親が実行していたたった1つのこと
・言うことをきかない子どもがみるみる変わる親の心がけ
・子どもがグングン伸びる魔法の声かけ
・世界一子どもが幸せな国の奇跡の育児
しかし、断言する。魔法も、パラダイスも、ミラクルもこの世には存在しない。
その理由はいったんおいておき、ここからは突然「ダイエット」の話に移る。全然関係ないようでいて、どこかでつながっているように思うからだ。
以前、フィットネス系のコンテンツ制作に携わっていたことがある。
私は、発注元からの企画書に添って、専門家にトレーニング法を提案してもらって文字や撮影した写真で記事構成をする役割を務めた。
当初は「1日10分で体を引き締める」という記事構成でOKが出ていたのが「5分で効果抜群」になり「1日3分」となり、発注元からはダンベルやバランスボールを用意するトレーニングは面倒だから数字が出ないとNGが出て、とうとう「1日〇秒で腹を割る」「ごろ寝したまま」「努力不要」なんてワードが出てくるようになった。
世で「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」や「ゼロトレ」みたいな本がヒットする前の話だ。
最小の努力で最大の効果を得たい。それは誰だって同じだろう。ユーザーにおもねっているようで結局は怠け者扱いしているような気持ちになって、そのコンテンツからは距離を置くようになった。
動画でサムネイルとタイトルが大切なように、書籍やネット記事では、タイトルとリードが重要なことは、重々理解できる。
しかし、その結果、世にあふれるタイトルはどんどん扇動的になり、「これさえやれば一生太らない」「ゆるトレ」といった魔術的なタイトルが勝つようになっていく。
あふれる育児メソッド情報とどう向き合うか?
教育論からダイエット論へと話は脱線したものの、育児情報も類似の状況にあるように思う。なぜなら、読者の不安を煽り、特定のメソッドを称賛するような情報が氾濫しているからだ。
不安が多いからこそ「魔法」「奇跡」「幸せ」「絶対に」「天才」「東大」「塾なし」「偏差値35から」……といった言葉は強い磁場を帯び、人の不安を糧にますます引力を強めている。
しかし、実際にはダイエットにも育児も「魔法」なんてない。
ダイエットであれば結局は日々の生活習慣が、育児なら単調で地味なコミュニケーションとケアのエンドレスの積み重ねに答えがひそんでいる。
仮に、どこかの国の誰かや、どこかの家庭の誰かが、「子育てに成功」していたとする。しかし、その正解を探るのは砂漠の中から、1粒の砂を見つけるようなもので、成功者の体験談や、天才育成メソッドの“完全コピー”をすることなんてできない。その成功をまねしても、実践する人の体質や気質に合っているとは限らない。
正解は、たくさんの経験と情報をかみくだき、自分で見つけるしかない。
「ママが笑顔でいることが一番」「子どもを丸ごとうけとめる」「やりたいことをサポートする」「頭ごなしに否定しない」「ママが幸せなら子どもも幸せ」。そんな美辞麗句はもう見飽きた。それを実行するのを難しくさせる原因が家庭内だけにはとどまっていないことに気づかず、「魔法」にすがってしまうこともあるケースも多く見聞きする。
くしくも今、「神やせ」という言葉を含んだ本が売れている。