現状憲法改正は不利益と考える理由
ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する影響もあって憲法改正論議が再び白熱してきている。ここでは短く、私の憲法(特に9条)についての考えを述べる。
現状での9条改正には反対の立場をとる。「現状では」と記したのは、現在の日本の危機管理能力のなさ、低レベルの政治能力であればまともに軍隊を動かせないだろう、ということがある。
もちろん、現在安全保障をアメリカに頼り切りでありその点で様々な問題が発生していることは間違いない。基地問題、予算問題は言うまでもなく、アメリカの属国のように世界に思われている。将来的に日本が十分成熟した状態であれば将来的な改正は視野に入る。
ただし、現在は9条を維持するメリットが大きい。9条を改正したところで実質的な利益はないし、不利益は確実だからだ。
実質的な利益がないという点について、自衛隊の方々を憲法上はっきりと正しい存在として定義するという意味での意義はあるだろう。しかし、現状でも大多数の国民が実質的に自衛隊の存在を合憲として認めているので、実質的な利益はほぼないと考えている。
また、現在の憲法下でも解釈改憲的な論理で敵基地攻撃などが議論されている状況である。敵国に攻撃された場合に領土内で反撃することは9条に反しない行動である。自衛権はあるのだから、これは間違いない。領海の端までの防衛能力を持てば、議論はどうあれ実質的に敵基地攻撃能力を有することは間違いなく、抑止力として妥当であろう。
では不利益はといえば、近隣諸国の反発を招くことはもちろん、我々が持っている貴重な立場を手放すことによるものがある。
憲法9条というのは他に類をみない憲法である。このことは護憲派だろうが改憲派だろうが一致できる点である。この存在によって、日本が国際社会で果たせる役割は非常に大きいものがある。今回のウクライナ侵攻であれ、我々がもう少し慎重に行動することでロシアとの緩衝役になることはできた可能性がある。自分から戦争を絶対に起こさない立場だからこそ、いろいろな当事国と中立な立場で関わり交渉をリードすることも可能なはずでやりようはいろいろあると信じている。ある意味での無防備性から生まれる正当性の論理も使いようで大きな武器となる。ことに認知戦の時代においてはなおさらである。
もし今のアメリカ追従論理のまま中途半端に改正を行えば、戦争(可能)相手国として認知されることになることは間違いない。そして日本はうまく具体をコントロールするポテンシャルはなく、戦争へ巻き込まれていく可能性は大いにある。そしてそれは「アメリカの」大義のための無謀な死へとつながっていく可能性も大いにあろう。
ところでアメリカなどの軍需産業はとてつもなく活気づいているそうだ。少しづつ武器を供与し、戦いを長引かせるようなアメリカの軍需産業、そしてその背後にいる金の亡者のような権力、を疑うのはうがちすぎているだろうか。
戦争が今すぐにでも終わることを切に願いつつ。 SG