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荀子 巻第十一彊国篇第十六 9

堂上、糞せざれば、則ち郊の草もくさぎらず。白匁の胸をおかせば則ち目は流矢を見ず。抜げきの首にかるれば則ち十指の断ずることをも辞せず。此れを以て務めと為さざるには非ず、疾養(痛癢)緩急の相い先きんずる者あればなり。

(金谷治訳注「荀子」岩波書店、1962年)

堂上→①建物の床の上。
糞→①はらう。汚れを除く。掃除する。
郊→のら。田野。
うん→ ②くさぎる。草を刈る。[参考]もとは「荪」という形で、「げい(藝)」は別の字。
扞→⑨おかす。ふれる。
辞せず→ためらわずにする。
務め→①当然果たさなければならない事柄。任務。義務。
疾養→いたみと、かゆみ。
緩急→①ゆるやかなことと、急なこと。遅いことと、速いこと。ゆるいことと、厳しいこと。
拙訳です。
『建物の床の上を掃除をしないのであれば、田野の草を刈ることはしない。白刃が胸に触れれば目は流れ矢を見ない。抜き身の戟が首に当てられれば十本の指が切断されるのも厭わない。これらを当然すべきことではないとするのではなく、痛みとかゆみで緩いことと差し迫ったことのとにかく先に対応する者があるからである。』

自分なりに咀嚼してみます。
野原の草を刈るよりは室内の掃除が先だろう、白刃が胸に触れていれば流れ矢の行方など気にしていられず、戟が首にあてられていれば指などかまっていられない。野原の草刈りや、流れ矢の行方、十指の切断などが大事なことではないのではなく、もっと重大なことが目前にあれば、そちらを優先しなければならないのである。

何が言いたいのかピンときませんが、金谷先生は次の文を補足されています。
「君主もまたまず何よりも礼義を先に務むべきであろう。」
なるほどです。君主が何よりも優先すべきことは「礼義」ということが言いたかったのですね。そしてこれが「彊国篇」の締めの言葉になっています。

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