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荀子 巻第五儒王制篇第九 15 その2

前回からの続きで「官の序列」についてです。
挙げられている官と業務内容をまとめていきます。

憲命(法令)を脩め詩商(章)をつまびらかにし淫声を禁じて時を以て順脩し、夷俗邪音をして敢えて雅(正)を乱さざらしむるは、大師の事なり。隄(堤)梁を脩め溝澮を通じ水潦をり水臧(蔵)を安んじて時を以て決塞し、歳に凶敗水旱ありと雖も民をして耘艾くさぎる所あらしむるは、司空の事なり。[土地の]高下を相し肥ぎょう(瘠)を視て五種を序し農功をかえりみ蓄臧(蔵)を謹しみて時を以て順脩し、農夫をして樸[実]につとめて[才]能をすくなくせしむるは、治田の事なり。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

淫声→みだらで品のない音楽
順脩→順脩という熟語はないようです。順→⑧おしえる。脩→おさめる。修。なので、教え修めると理解します。
隄梁→堤防と橋。
溝澮→溝洫こうきょく。溝洫→耕作地の間にある溝。
水潦すいろう→①雨水。みずたまり。②長雨。③大水。
決塞→開き通す。
相→①みる。よく見る。また、うらなう。
墝→石の多いやせた土地。やせ地。
五種→②5種類の穀物。五穀。普通は、米・麦・あわ・豆・きび の5種。
樸→②ありのまま。飾り気がない。
能→④かねる。
以上を踏まえて、拙訳です。
『【大師】 法令を修めて詩の章をつまびらかにし、みだらで品のない音楽を禁じ時を見て教え修めさせ、異民族の邪悪な音楽に正しい音楽が乱されないように務める。
【司空】堤防と橋を管理し耕作地にある溝を通じて雨水を通して安全に水蔵に溜め時を計って開き通す、年によっては洪水と旱魃による災いがあっても、民が農業を行う土地を確保する。
【治田】土地の高低を見てまた土地が肥えているか瘠せているかを見て、五穀を植える順序を計り収穫量を考慮し貯蔵に気を配り時を見て教え修めて、農夫がありのままに努め、他の仕事を兼ねることが少ないようにする。』

大師について、昔は音楽にも統制があったのですね。そういえば、クラシック音楽は中世よヨーロッパの教会音楽から発展したのでした。音楽は神への捧げものであったわけです。古代中国でも、音楽を奏でることで神を下ろすということがされていた、音楽は神への捧げものであったと何かで読んだ記憶があります。音楽が乱れることは神への冒涜に繋がり厳しく取り締まる必要があったのだと分かります。
司空・治田について、農業は国の礎となる産業ですからその育成と管理は重要な業務になります。中国は大きな川の氾濫による被害が繰り返され、水の制御が人々の生活を守り収穫量を大きくさせることになります。生活の安定は食の安定から、農夫が農業に専念するようにさせる職務が古代にあったというのは驚きです。面白いですね~。

まだまだ続きます。

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