見出し画像

荀子 巻第五儒王制篇第九 15 その5

続きです。

政教に本づき法則を正し兼ね聴きて時にこれをかんがえ、其の慶賞を論じ時を以て順脩し、百吏をして免(勉)尽せしめ衆庶をしておこた(怠)らざらしむるは、冢宰ちょうさいの事なり。礼楽を論じ身行を正し教化を広め風俗を美にし兼ね覆いてこれを調一するは、辟公の事なり。道徳を全うし隆高(礼義)を致し文理をきわめ天下を一にし毫末をもげ、天下をして順比(附)従服せざること莫からしむるは、天王の事なり。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

言葉の意味を調べます。
政教→②政治と教育。
慶賞→功績の褒美を賜ること。また、その賜るもの。恩賞。
論→①あげつらう。とく。物事の道理を説く。是非や善悪を述べる。
衆庶→一般の人々。庶民。
礼楽→礼節と音楽。社会秩序を定める礼と、人心を感化する楽。中国で、古くから儒家によって尊重された。転じて、文化。
身行→わが身の行い。
教化→人を教え導き、また、道徳的、思想的な影響を与えて望ましい方向に進ませること。
美→②よい。すぐれている。りっぱな。
文理→物事のすじめ。条理。条理→物事の筋道。道理。
毫末→ごくわずかなこと。
順附→服従する。
拙訳です。
『【冢宰ちょうさい】政治と教育に基づき法令を正しくし、且つ意見を聴いて時に法令考えて、恩賞の是非を述べて時を計って恩賞をもって教え修めさせ、多くの官吏を勉励させ庶民を怠けさせない。
辟公へきこう】礼と楽(文化)の道理を説いてわが身の行いを正し、広く人を教え導いて風俗を良く整え一つにまとめる。
【天王】道徳を完全に行い礼義・物事の筋道を極めて天下を一つにして、ごくわずかなことも取り上げ、天下の人で服従しない者がいないようにさせる。』

故に政事の乱るるは則ち冢宰ちょうさいの罪なり。国家の俗を失するは則ち辟公の過ちなり。天下の一ならず諸侯の倍(背)反するは則ち天王の其の[然るべき]人に非ざるなり。

(同)

拙訳です。
『だから政治が乱れるのは冢宰ちょうさいの罪である。国家の風俗が乱れているのは辟公の過ちである。天下が一つにならず諸侯が背くのは天王がその器に満たないからである。』

本日は冢宰ちょうさい辟公へきこう、天王を勉強しました。
冢宰ちょうさい辟公へきこうが機能するためには、今まで見てきた宰爵、司徒、司馬、大師、司空、治田、虞師、郷師、傴巫うふ跛撃はげき(覡)、治市、司寇が役割を果たしていなといけません。
冢宰ちょうさい辟公へきこうが各官をきちんと統括することで、政事は整い風俗も正しくなります。
荀子は最後に、天下が一つにならないのは「則ち天王の其の[然るべき]人に非ざるなり。」と切り捨てていますが、「非ざる人」が誤って天王になっても、きちんと運用できるように「天王」を含めた組織づくりが必要になるのではないかと考えました。
ロシアでも、「天王」を制御できる組織であったならば違う展開になっていたかもしれない、と思考が飛躍していくのでした。
荀子を読みながらまだまだ考えていきます。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?