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荀子 巻第七王覇篇第十一 1 その2

前回は、君主は道をもって国を維持し、義を立てれば王者に、信を立てれば覇者に、権謀を立てれば滅びてしまう、という話でした。
続きです。

国を(挙)げて以て礼義を呼[称]せしめてこれを害すること無く、一不義を行い一無罪を殺して天下を得ることは、仁者は為さず。擽然れきぜんとして身国を扶持することはすなわ(乃)ちくのごとく其れ固きなり。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

呼→🈩①いきをはく。(ウ)となえる。あげ称する。また、なづける。
害する→傷つける。損なう。
擽然→堅固なさま。
身→②みずから。
扶持→①助けること。扶助すること。
拙訳です。
『国を挙げて礼義を唱えさせ礼儀を損なうことなく、たった一つでも不義を行い、たった一人でも無罪の人を殺して天下を取るようなことを仁在る人はしない。堅固として自らの国を扶助することはこのように固いものである。』

ともにこれを為す所の者は則ち(皆)な義士なり。為めに国家の刑法に布陳する所以の者は則ちな義法なり。(其)のきょく(亟)ぜんとして群臣をひきいてこれに首卿(向)する所の者は則ちな義志なり。くの如くなれば則ち下の上を仰ぐにも義を以てすべく、是れ(極則)の定まるなり。綦の定まりて国定まり、国の定まりて天下定まる。

(同)

義士→人間としての正しい道を堅く守り行う男子。義人。
布陳→並べる。
極→🈔しばしば。すみやか。⇒亟
仰ぐ→教え・援助などを求める。請う。
綦→⑩きわまる。きわめる。
極則→法則の極致。
拙訳です。
『仁者と共にこれを実行するものは皆義の人である。その為に国家の刑法として並べられるものはすべて義のための法である。すみやかに群臣を率いてこれに首卿(向)するものはすべて義の志である。このようであれば、庶民が為政者を仰ぎ見るにも義をもってすることとなり、これは法則の極致が定まったということである。法則の極致が定まることで国が定まり、国が定まることで天下が定まるのである。』
首卿(向)の意味が分かりませんでした。首卿・首向ともに熟語としてはないようです。金谷先生は「志向」とされていました。

仁者は少しの瑕瑾もなく礼義を全うする。
仁者と共に礼義を実行する人は全員義の人であり、礼儀の為の国家の法はすべて義の法であり、群臣を率いて礼義を目指すのは義の志であるとして、このようであれば庶民にも義が行き渡る。義により法が定まり、国が定まり、天下が定まる、と理解しました。

続きは次回とします。


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