荀子 巻第二十堯問篇第三十二 5~6
下→🈔①くだる。さがる。おりる。(エ)へりくだる。
抇→ほる。穴をほる。
甘泉→うまい水がわき出る泉。
樹→うえる。木をうえる。
五穀→中国,日本,朝鮮などで常食する主要な穀物5種を総称する言葉。また穀物の総称。
蕃→しげる。草木が生い茂る。草がはびこる。ふえる。
殖→ふえる。ふやす。動植物がふえる。そだつ。また、財産などがふえる。
育→そだてる。はぐくむ。みちびく。やしなう。しつける。
悳→人の身にそなわった品性。特に道徳的にすぐれた人格や行い。また、それを有する人。
拙訳です。
『子貢が、孔子に質問した、「私(=賜)は人にへりくだるようにしていますがまだへりくだるということを理解できていません。」と。孔子が答えた、「人にへりくだるというのはまるで土のようになることだ。土を深く掘ればうまい水がわき出る泉を得られ、土に植えれば多くの穀物が生い茂り、草木が育てば禽獣も養われ、生きる者はつまり土に立ち、死せる者はつまり土に入る。その功績は多くあるが自らは徳と誇らない。人にへりくだるというのはまるで土のようになることである。」と。』
言われてみればその通り、土を掘って井戸を作り水を汲み、土に植えて五穀を育て、その草木により人間含めて動物は養われ、生きる者は大地に立ち、死ねば大地に帰ります。人や動物は土に生かされていますが土は決してそれを自慢せず、支え続けています。
言われてみればその通りなのですが、土のようになる、へりくだるというのは難しいです。
虞→古代中国の王朝の名。
宮之奇→(注より)宮之奇は虞の賢臣、晋が虢を攻めるためにまいないして虞を通ることを請うたが、宮之奇はそれはやがて虞を亡ぼすための策謀であると見破って道をかすなと諫めたが聴かれず、ついに虞は晋のために滅ぼされた。
并→あわせる。あわす。一つにする。
萊→⑨周代の国名。
子馬→(注より)子馬のことはよく分からない。
比干→中国、殷の紂王の父方のおじ。紂王の淫暴をいさめたために殺された。箕子・微子とともに殷の三仁といわれる。
刳→さく。切りさく。切りひらく。
拙訳です。
『昔、虞の国は宮之奇の意見を用いなかったため晋に併呑され、萊の国は子馬の意見を用いなかったため斉に併呑され、暴君・紂は王子である比干の胸を切り裂き殺したため周の武王に天下を得さしめた。賢者に親しみ知者を用いなかったために、自身は死に国は滅んだのである。』
危急存亡の秋に都合よく賢者や知者が現われるものではありません。日ごろから賢者に親しみ知者を採用して自身を磨いていくことが必要です。自身を磨く中で、棄てる意見・採用すべき意見が見えてくるようになります。その積み重ねが、自分を救い、国を滅ぼすことなく栄華を楽しむことができるのです。