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荀子 巻第六富国篇第十 4

天下を兼ね足らしむるの道は分を明かにするに存り。地をおさ(理)めてうねを表し、屮(草)を(絶)りて穀をふやし糞[土]を多くして田を肥やすは、是れ農夫衆庶の事なり。時を守りて民をつとめしめ事を進めて功を長じ、百姓を和斉し人をしておこた(怠)らざらしむるは、是れ将率の事なり。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

分→①分けられた部分。分けまえ。
撩→①おさめる。ととのえる。
糞→④つちかう。こやしをやる。また、こやし。
衆庶→一般の人々。庶民。
和斉→ととのう。
将率→(注より)楊注にいう、将率は首領の事だと。兪樾いう、昔の将率は平時には地方官となった、『周礼』の州長・党正のことで、ここは戦時の名によったまでであると。
拙訳です。
『天下を十分にものがあるようにする方法は分けられた仕事を明確にすることにある。地を整えて畝を作り、草を刈り穀物を増産しこやしをやって田を肥やすのは、農民庶民の仕事である。時期を守って民衆を督励して仕事を進展させその成果を大きくし、庶民をして和し整えて怠けないようにさせるのは地方長官の仕事である。』

高きものも旱せずひくきものも水[害]あらず寒暑も和節して五穀も時を以て孰(熟)するは、是れ天の事なり。の兼ねてこれをおおい兼ねてこれを愛し兼ねてこれを制し、みのりに凶敗水旱ありと雖も百姓をしてこご(飢)うるのうれいなからしむるがごときは、則ち是れ聖君賢相の事なり。

(同)

旱→①ひでり。③水がないこと。陸地。
和節→①ととのって節度にかなう。また、その態度。
兼→①かねる。あわせる。二つ以上のものをあわせもつ。
覆う→⑤全体をつつみ含む。
拙訳です。
『高い場所でも水があり、低い場所でも水害が無く、暑さ寒さも整って節度に適い五穀は季節にあわせて熟するのは天の仕事である。合わせて民衆を包み含んで、合わせて民衆を愛し、合わせて民衆を統制し、収穫には洪水や干ばつ悪いこと失敗があるとしても、民衆を寒さや飢えの心配をしなくて良いようにするのは聖君主や賢宰相の仕事である。』
「高きものも」「低きものも」について、何が高い・低いなのか分からず、後ろに「寒暑も和節して」とあるので、『気温が高い・低い』かと思ったのですがしっくりせず、金谷先生の訳を拝読し、『あっ、場所の事なのか。』と得心して上記の訳としました。

  • 天下を豊かにする方法は、『分』を明らかにすることである。

  • 分には、農民庶民の仕事、地方長官の仕事、天の仕事がある。

  • 人は天の仕事(凶敗水旱)を避けられないが、民衆を広く包み・愛し・統制して寒さや飢えから守るのが、聖君主や賢宰相の仕事である。

とまとめてみました。


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