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荀子 巻第五儒王制篇第九 13 その2

前回「荀子 巻第五儒王制篇第九 13 その1」では下記の事を学びました。

  • 人には、気・生・知・義があり貴い。

  • 個別の能力では牛馬の方が優れているところがあるのに牛馬を使役できるのは、人は「群(社会集団)」を形成できるからだ。

  • 人が社会集団を形成できるのは「分」をもっているからだ。

  • 「分」がうまく機能するのは人に「義」があるからだ。

  • 「義」+「分」=「和」をもって「群」をなし、「群(社会集団)」は個の能力を集め強くでき、結果必ず勝つ。

続きです。
人は群を作る者だが、分・わきまえる事がなければ争い乱れ離れていく。離れれば弱く勝つことが出来ないと説明します。

[是れ]少頃しばらくも礼義をつるべからざるのいいなり。能く[礼義を]以て親につかうるを孝と謂い、能く[礼義を]以て兄に事うるを弟と謂い、能く[礼義を]以て上に事うるを順と謂い、能く[礼義を]以て、下を使うを君[道]と謂う。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

拙訳です。
『このことは、ほんのわずかな時間でも礼義をないがしろにしてはいけないということだ。礼義をもって親に尽くすことを孝と言い、兄に尽くすことを弟と言い、上長に仕えることを順と言い、部下を使うを君道と言う。』

君[道]とは善く群せしむることなり。群道の当れば則ち万物も皆な其の宜しきを得、六畜も皆な其の長[養]を得、群生も皆な其の命を得ん。

(同)

善→①よい。正しい。道理にかなっている。
六畜→六種の家畜。馬・牛・羊・犬・豕 (いのこ) ・鶏。
長→⑧ちょうずる。(ア)おいたつ。育って大きくなる。成長する。
宜しき→ある状況や程度にふさわしいこと。ちょうどよいこと。適切なこと。
拙訳です。
『君道とは正しく集団化させることである。正しく集団化ができればすべてのものがふさわしい状態になり、家畜も大きく育ち、その他の生物もすべてが命を全うできる。』

人は群れて多くの力を一つに集中して強くして勝つ。これは組織論ですね。どのようにして組織の力を最大化させるかというと、荀子は「礼義」を以てつかえ、また使うとしています。組織として機能するには、それぞれの部署に役割があり、部署に配置された人々に役割があり、その役割を理解し全うすると、組織のベクトルが一つの方向に揃い力が最大になります。役割を理解するということが、荀子の言う「分・わきまえる」ということになります。
などと小賢しく書いていますが、荀子は最後に、「群生も皆な其の命を得ん。」と組織論を超越し全ての命に言及しています。スケールが違いますね。

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