海外工場がある製造業なら検討する価値あり。外国人労働者受入れのファーストステップとしての「企業単独型技能実習」
世の中では、人手不足解消手段としての外国人労働者の受け入れ一般的になってきました。
多くの企業では既に外国人労働者が活躍し、職場でなくてはならない存在となっています。
そんな中、筆者が感じるのは、まだまだこれから外国人労働者雇用に足を踏み出そうとしつつも様子をうかがっている企業が多いということです。
「まず何から始めればよいのか・・」と人事部門からご相談を受けることが多くあります。外国人労働者受入というと、ニュース等で特定技能や、技能実習・・といった言葉は聞いたことがあっても、実際何をどこから手を付ければよいのか分からないということが多いかと思います。
筆者がいつもおすすめしているのは、国外に自社やグループ企業の拠点・工場があるのであれば、まずそこで働く従業員を受入れてみるという方法です。
海外に自社工場があるなら考える価値のある「企業単独型」技能実習
ここでおすすめしたいのが、技能実習の中でも、「企業単独型」という受入方法です。
一般的な技能実習制度は「団体監理型」と呼ばれる、国外の送り出し機関、国内の監理団体を通じて労働者(実習生)を受けいれるものですが、この「企業単独型」は、第三者を介さずに自社の海外社員を来日させ日本で働いてもらえるようにするものです。「団体監理型」に比べてかなりハードルが下がる印象ではないでしょうか。日本の工場と似た設備で既に勤務経験のある外国籍社員であれば、来日した後、即戦力となりますし、本人のキャリアアップの観点からも一定期間日本の本社で就労するということは大きな意味があると思います。
特定技能との違い- 技能実習には入国時の技能水準や 日本語能力を測る「試験」が存在しない
労働者受入れの在留資格としてよく聞くのは「特定技能」。「特定技能」での受入も選択肢として考慮されるかもしれません。
まず、考慮したいのが「特定技能」は、入国の時点で技能水準を満たす 試験と日本語能力 N4水準を満たす 試験に合格している必要があるということです。そうした人材が既に存在している場合は別として、入国前の人材育成が必要であることに留意が必要です。技能実習においても、入国前後で日本語等の講習を実施する必要がありますが、試験合格は許可の基準となっていません。
また、特定技能の受入機関は対象分野の所管省庁が設置する協議会の構成員になる必要があり、各分野の分野別運用方針の固有の基準を満たしている必要があります。長い目で見て、特定技能を受け入れていくという選択肢ももちろんありですが、初めての外国人受入においてはかなりハードルが高いといえるでしょう。
でも、技能実習制度は終わるのでは・・?
ここまで読んでくださった読者の皆さんは、こう思われているかもしれません「あれ?でも技能実習制度ってもうなくなるんだよね」と。
確かに、先日政府は技能実習に代わる新制度である「育成就労」を新設する法案を閣議決定しました。ただし、施行が目指されているのは2027年までであり、それまでは現行の技能実習制度が継続するわけです。
政府の案では、「企業単独型技能実習のうち、育成就労制度はとは主旨・目的を異にするものの引き続き実施する意義のあるものは、別の枠組みで受入れを検討」との記載がされていました。
「海外グループ企業の労働者を日本に呼びたい」という需要は確実にあるため、ここを手当する制度は、今後も何らかの形で継続していくことが予想されます。海外に自社工場のある企業はぜひこの「穴場的」制度「企業単独型技能実習制度」検討されてみてはいかがでしょうか。