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ショートショート集

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田丸雅智さんの「物語の発想法を学ぶ」講座で得たショートショートの書き方で書いたショートショートをまとめたマガジンです。 100〜1000文字程度のショートショートの世界を楽しんで…
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2023年3月の記事一覧

ショートショート「火星から帰ってきた男」

有人火星探査 人類はついにそれを成し遂げた 悲願とも言えるその偉業を成し遂げた一団が 今地球へ帰還する 彼らが火星探査から旅立った日から 5年と4ヶ月 地球ではとんでもないことが起きていたのだ 「やぁ!隣人!ついに我らの星に辿り着くことが  できるようになったんだね!おかえり!」 そこには見るからに火星から来た と言った身なりの男が いた いや、正確には火星探査の時に話しかけられた男と 同じ格好の男がそこにいたのだ 「その顔は、なぜ我々が隣人の星にいるのかって  

ショートショート「ショートショート」

あの、失礼ですが、もう一度伺いますね? ショートショート、ですね? あ!いえ!聞き取れはしました! えーっとぉ、ベリーショートのことを ショートショートってお呼びに…… うん!はい!ですよね! ベリーショートとショートショートは!ね! ぜんっぜん違いますもんね! ねー!ですよねー! うんうんうん、ショートショートかぁ この辺かな? この辺をショートにしちゃう感じ?かな? こわいこわいこわい、なにその目! こわいよ!え?え?ショートショート、え? はい、分かってますよ

ショートショート「板チョコ10枚23%OFF」

途方に暮れる この言葉が頭をよぎったことはあるだろうか? わたし? ははは こんな質問をするくらいですから そう、今です 見てください、これ なにって? 板チョコですよ なにって? 1000枚の板チョコですよ 10枚で23%OFF 10枚を7.7枚の値段で買えるんですよ? まぁ、だからって、1000枚もポチったのは ミスでした 770枚の板チョコの値段って バカにならないんですよね そして、これからこの1000枚を消費しないと いけないんですよ ね?途方に暮れ

ショートショート「緑と強欲」

「じゃあ、今日は緑と強欲で」 「あいよ!緑と強欲!  そちらは?」 「うーん、前回が黒と情熱だったから  赤と情熱にしようかなぁ」 「あいよぉ!赤と情熱、入りました!」 「赤と情熱ぅ!ありがとうございます!」 人々の「感情」と「色彩感覚」が 自由に取り扱える時代 「その感情を想起させる」色を 提供できるようになっていた 「うん、やっぱり緑の穏やかさと  強欲のコントラストは心が躍るなぁ」 「あー、赤の情熱だなぁ  黒のフツフツっとした情熱もdesire感あって  好きだ

ショートショート「殺人サーブ」

「こちらです!よろしくお願いします!」 ここは暗殺者ギルド ここには名うての殺し屋たちがひしめいている そんな中で一番の名うて それは、どんな依頼も確実に適性のある仕事人に 依頼をサーブするこの人 受付の「メチヤ・メキキヨキネン」 「殺人サーブ」の二つ名を持つ人物だ メチヤの依頼書サーブの朝は早い まず、前日までの残った依頼書の確認だ 素早く目を通すと、適した仕事人に連絡を送る どうにも怪しい依頼はそっと奥の方にしまい 無駄な暗殺は行わないのだ ギルド開所 メチヤのサー

ショートショート「13月1日」

来年なんて来なくていい 一人の少女の願いが叶えられた 一途な思いが起こした奇跡か どこかにいる神の気まぐれか 2999年12月31日が終わり 3000年1月1日は訪れなかった 2999年13月1日 その1日の始まりはいつもと同じ朝焼けだった 誰もが信じて止まなかった 12月31日の次の日は1月1日 と言う常識は、いとも簡単に覆された なぜ13月1日の存在を信じられたのか それはこの世の全ての日付表示が 元からそうであるかのように 「13月1日」と表記したからだ 人々

ショートショート「立てば芍薬座れば牡丹されど歩く姿は」

白昼。 大通りに人集りが出来ている。 「くっ!何をするんだ!」 「びょぅ〜〜きっきっ!きさま!最近  不健康な生活を続けているな?」 「なぜ……それを……!?」 「びょぅ〜きっ。その目の下のクマ!  筋の入った爪!曲がった背中!  そこかしこに我ら  『シックバイラス』が付け入る隙を  見せておるからだ!びょぅ〜〜きっきっ!」 「くそ!俺だって好きで不健康な生活を  続けているわけじゃない!  それもこれも、あのクソ上司が仕事を  どんどん俺に回すから!」 「びょぅ〜きっき

ショートショート「泥棒猫と猫泥棒」

吾輩は泥棒に飼われている猫 いわゆる泥棒猫だ 差し詰め 吾輩をどこからか拾ってきたこいつは 猫泥棒であろう そんな吾輩は今、何者かに捕まり 頭陀袋に包まれ、どこかに運ばれている 猫泥棒に拾われ、泥棒猫となった吾輩を拾うもの 差し詰め 泥棒猫泥棒であろう 泥棒猫の飼い主である猫泥棒は今頃何をしておろう もしや、先ほどから後ろから聞こえる足音は 猫泥棒であろうか 差し詰め 泥棒猫を担いだ 泥棒猫泥棒を 猫泥棒が追いかける構図であるな 止まった、ここが泥棒猫泥棒の寝床か 頭陀

ショートショート「六法善書」

この世に六法全書と言うものがあった だが、人々があまりにもその書を 守らなかった為 六法全書は怒り、嘆き、叫び、最後には 己の存在意義に飲み込まれようとしていた その時、六法全書が光に包まれ その光から二つの書が生まれた 人々の善を説いた「六法善書」 人々の悪を説いた「六法悪書」 その結果、世界の秩序は二つに割れ いまでは、二つの書を一つにせんが為 悪と善 互いが手を取り合おうとしていた この物語は 二つの書 これを一つにし 「善悪十二法全書」 を生み出した伝説の勇