お茶のある日々 / 自分のお茶
*この文章は2024年6月に完成。
コロナが収まってから、毎年6月になると、台湾の母校に戻って茶道部に4日間の夏合宿の稽古をつけるようになりました。今年は2年目です。
短期講習会のやり方を踏襲し、毎日8時半から18時まで、雑巾がけや水屋支度などをはじめ、薄茶の運びと飾り点前まで、ひたすら基本の稽古を行います。本当は毎日棚を変えたいところですが、さすがにハードルが高いので断念しました。
とはいえ、4日間ずっと同じ薄茶点前になると、注意力散漫が起きるという去年の経験があるので、今回は合間に数茶と濃茶の体験を取り入れてリフレッシュを図りました。その結果、良い効果が得られたと言えましょう。
このように成果を吟味しつつ、また来る機会があればどのようにしようか、と自問自答しているうちに、改めて茶道部に在籍していた時に、稽古を見に台湾に来られた先生はどのような思いをしておられたかを身をもって実感しました。
「十人十色」という言葉のように、お茶の先生もその人の個性と立場によって考え方がかなり変わると思います。たとえ同じシチュエーションに臨み、本意が同じでも行動が違う場合もあります。それらには正解がありません。しかし、正解のない中に、「自分のお茶」を持つ必要があると思います。
自分のお茶を持つというのは、茶の湯を行う時だけの話ではないのです。
例えば、学校茶道については、性質上あまり深く茶の道に入ることができないものだと考えています。それは、部員の皆様が大体長くても4年間しか部に在籍していないからです。また、台湾において環境の制限もありますが、卒業後に茶の湯を学び続ける方はほんの一握りです。
これはもちろん、台湾に存在する稽古場の少なさと人それぞれの事情があり、一人で何かすぐにできることではありません。しかし、皆様がお茶を継続しなくても、せめて茶道部に在籍する夏合宿の4日間に点前作法を習いながらも、その裏側に潜んでいる心に少し触れて、和らいて人を敬うことができればうれしいです。
そのため、4日間しっかりと稽古する傍らに、合間合間に茶の歴史や音、季節などについて色々と話しています。この「お茶の楽しさをシェアしたい」という思いも、今の私のお茶の一面と言えるでしょう。
せっかく台湾にいながらも茶の湯に興味を持ってくださった方々に、お茶は点前作法だけだと認識されるのは、何となく寂しいです。厳しい点前作法は茶の湯を構成する大切な部分ですが、その中に内包されている優しさも、また皆様に感じていただきたいものです。
もちろん一緒にお茶を盛り上げたいというのが私の本望ですが、例え卒業後に茶の道を歩み続けられなくても、茶道部在籍中に体得した自分のお茶を良き友として、伴に人生を歩んでいければ、私にとっては何よりの幸せです。
*部の道具の都合上、表千家の道具でない物も使わせていただいております。