【лев（獅子）】ノベルセラピー作品

chii作

ある日の昼下がり、
とても綺麗な青空が広がっていて
緑も豊かな景色の中に
一つの檻がありました。

その檻の扉は開いていて
今、その檻の中には
1匹のチーターがいました。

彼の名前は、ネオ、といいました。

ネオはロボットでできていて
ネオを含めて、その景色全体が
一つの額縁の中にありました。

ネオは、
とてもまっすぐな瞳を持っていて
先の先のことまで見通せそうだけど
少し心配性なところがあって
あまり遠くまではあえて見ない
そんなチーターさんです。

この額縁の景色の中には今
ネオの他には
蝶々さんが飛んでいます。

ネオはいつも
昼間は開いている檻の扉から
出ようとはせず
綺麗な景色を眺めているのですが
夜になれば
ネオは檻を出て川にいくのです。
川の向こう岸にはいつも
何かキラキラと輝く
光が見えるのですが
ネオは真っ直ぐな瞳で
その光を見つめながらも
その光が何なのかを知るタイミングを
じーっと待っていたのです。

そして今日は新月。
今日こそ
あの光が何なのか知るために
あの光に近づいてみよう
とネオは思いました。
なぜなら何か大切なことを
思い出せそうな気がするからです。

夜になり、お月様が見える中で
ネオはいつもの様に川に行き、
目の前の川を渡る手段を考えました。

するとそこに
蝶々さんがひらひら〜っと
飛んできたので

「君、ちょっとすまない。
僕は今からこの川を渡ろうと
思ってるんだ。
でも、僕は
早く走ることはできても
泳ぐことはできないんだ。
だから君、
水の上での僕の走りを
ほんの少しでいいから
君の翼で支えてくれないか」

すると蝶々さんは
ヒラヒラと2回翼をパタパタさせて
了承してくれました。

ネオは小さな蝶々さんを背に乗せて
川へ向かって走り出しました。
できるだけ早く走って
水の上を突っ切るかのように
川を越えるつもりでいるのです。
ですが案の定、
川の上を走ることは簡単ではなくて
蝶々さんの支えも虚しく
ネオも蝶々さんも
水の中に沈んでしまいました。

ネオはがーん、と思いながらも
蝶々さんのことだけは助けなきゃ、と
必死でした。
でも泳げない、どうしよう、、。
そう切羽詰まった時
ふと思い出したことがありました。
それは
今この景色が全部
額縁の中である、ということでした。
だから、この額縁の中の状況は
ネオが意図すれば変えられることを
思い出したのです。

「僕は、蝶々さんを助ける。
僕は、蝶々さんと水の外へ出るんだ！」

ネオがそう強く思った次の瞬間
パワフルな光に包まれていて
気づいたらネオと蝶々さんは
川の向こう岸にたどり着いていました。

「ああ、良かった、、」

ネオは心底、安心し
あたりを見渡すと
そこにはもう、
そこにあるはずの光は見当たりません。
そのかわりに今、
ネオの心の中に、
パワフルな光が宿っていました。
川の向こう岸の光とは
「自分が意図すれば、状況が変わる」
その気づきの光、そのものだったのです。

それからチーターさんは
いつもその光を心に宿しながら
穏やかに暮らしてゆきました。

おしまい。