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👂️【一つココロを寿ぐ夜】ノベルセラピー作品

作 ぴっちょん

👂️朗読はこちらのリンクからお楽しみ下さい☺️💕


羊と狼の国では、毎年夏至の夜に、13歳の若者たちがその意識の奥の扉を拓く祭りがある。これは、その祭りが生まれる少し前のお話。


羊の国にはキラン、狼の国にはロンという男の子がいた。狼のロンが道でばったりと羊のキランと出会ったとき、正直とても困った。狼として、羊のキランに対して強気に出て、グルグルうなったり、「お前を食べてやるぞ」と追いかけなきゃいけないのか・・・。やれやれ、そんなこと全然したくない。だけどそうしないとお父さんに怒られちゃうことをロンは知っていた。


一方のキランも、ロンに出会って困った困ったと感じていた。ロンを怖がったり、逃げ出そうとしたりしないと、社会の秩序を乱したとして羊の国の王様に叱られてしまうのだ。
だけど正直キランはロンのことを怖いと思わなかった。キランは自分の内側のパワーを十分に感じていたし、ロンから感じる波長は、好奇心や好意に満ちていて、自分を攻撃する気配をまったく感じなかったから。


そこでキランは、「ねぇ、こんにちは。僕は羊で、君は狼なわけだけど…僕はいま、君を
怖がって逃げるフリとかした方がいいかなぁ?」とロンに尋ねてみた。


ロンも、「ああ、ぼくも今、追いかけるフリをしなくちゃいけないのかなぁ、面倒だ、と思っていたところなの!」「そんな古臭いことはやめちゃって、僕たち、何か違うことをしない?」と応えた。


それで二人は目と目を見合わせて、それからケタケタとお腹を抱えて笑い転げたのだった。
その後の時間は素敵だった。二人の心や体から編み出されるバイブレーションがお互いに調律し合うようで、これまでに感じたことのなかった波長が生み出され、刻一刻と変化していくのを、全身を震わせたり、ぴょんぴょん跳んだり、歌い踊りながら、体と心の底から味わうのだった。


ロンとキランは 魂の友だちになった。
2人の意識はバターのように溶け合い、肉体の枠組みを超えて、キラキラした輝きになった。
その輝きはどんどん大きくなっていって、空高く拡がり、ついには羊の国と狼の国をすっぽり包み込んでいったのだった。


ロンとキランが光になった後・・・二つの国には大きな変化が起きた。羊と狼の関係は、かつて歴々と続いていた「弱肉強食」の原則をとうに卒業し、互いに完全に対等で、同時に長い年月の中で“喰うもの”“喰われるもの”という役割を担い合ってきたパートナー、魂の片割れ同志としての強いつながりを八百万の命たちに示す間柄になっている。


13歳になる若者たちは、肉体を離れた愛の意識として「一つココロ」に溶け合い、深い平安を示したロンとキランに倣い、祭りに参加する。それぞれの意識の内側の、さらに奥から届いてくる愛の響きを、自分のなかに、そして儀式の空間にみんなで拡げるのだ。一つ一つの愛の響きは、キラキラ光るさまざまな色の糸となって現われ、さらに縦糸と横糸が見事に折り重なり、虹色のオーロラのような織物となって、夜空を見事に飾るのだった。


国中の人たちは、そのオーロラのような織物の元、豊かなバイブレーションに身も心も浸し、肉体を超えた愛であることをみんなで祝い、寿ぐのだった。


100%の愛であること、その歓びに満ち溢れる夜。
ロンとキランは永遠にこの愛の循環の中に居続けている。


おしまい

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