PDCAが回る体制づくり
マーケティング支援会社との関係って、けっこう難しいものです。
毎月レポートは来る、数字も出てくる。でも「本当に改善できているのかな?」という感覚は消えない。経営者の方々から、そんな声をよく聞きます。
なぜPDCAは回らないのか
よくあるのが、数値を追うことが目的化してしまっているケースです。
毎月のレポートには数字がびっしり。でも「だから何?」という話になると、途端に曖昧になってしまう。
「もう少し様子を見ましょう」
「長期的に見ていく必要があります」
「徐々に効果が出てくるはずです」
こんな言葉が毎月繰り返される。半年経っても、同じような会話をしている。これは、PDCAのサイクルが止まってしまっているサイン、かもしれません。
PDCAを効果的に回す体制をつくるための、3つのポイント
では、どうすれば効果的なPDCA体制ができるのか。
まず大切なのは、「測るべき指標」を明確にすることです。
「とりあえずデータを取ってみましょう」というアプローチは危険です。データを取るコストも時間もかかるのに、結局それが何の役に立つのかわからない…そんなことになりかねません。
重要なのは「このKPIが改善されれば、どんな価値が生まれるのか(KGIがどれだけ変化するのか)」を明確にすることです。
次に、改善のための会議体をしっかり設計すること。
まず月次の進捗確認だけでなく、四半期か半年に一度は大きな振り返りの場を持つことをオススメします。そこでは単なる単月の報告ではなく、半年間のマーケティング活動とその前の半年間のマーケティング活動を比較して評価します。
つまり、評価の時間軸を長く取ることで、単月の「今月は良かった!」「今月は悪かった!」という一喜一憂しがちな評価を避けることができるんです。
たとえば、記事コンテンツの効果って、すぐには数字に表れにくいもの。公開した月の評価が低くても、半年単位で見ると「実はじわじわとPVもお問い合わせも増えていた」なんてことは、よくあります。
逆に、一時的なキャンペーンで数字が跳ね上がっても、半年単位で見ると「その場しのぎの策だった」ということが見えてきたり。
長期的な視点があってこそ、本当に効果のある施策が見えてくる、と私は思います。
そして三つ目が、社内外の役割分担です。
マーケティングの成功には、支援会社の専門性と、事業会社の現場感覚の両方が必要です。なぜなら、事業の成功に必要な重要な情報は、日々の事業活動の中にあるからです。
お問い合わせしていただいた顧客の反応
営業現場での商談の様子
自社サービスの本当の強み
相性の良い顧客層の特徴
これらの生の情報があってこそ、データの解釈も、次の施策も、より的確なものになります。
だからこそ、支援会社と事業会社が一緒になってPDCAを回していくことが大切です。社内にも責任者を決めて、一緒に改善を進める。そうすることで、支援会社の専門性と、事業会社の現場感覚が掛け合わさり、本当の意味でのPDCAが回り始めるはずです。
具体的な進め方
では具体的にどう進めればいいのか。まず月次の会議では、以下の3点を必ず確認します。そしてこれは、各施策単位で確認できるといいでしょう。最初の会議で、この報告方法をルール化してもいいかもしれません。
前月に決めたアクションの実施状況(Do)
KPIの変化(Check)
結果の考察、来月のアクションプランの立案(Action)
アクションプランの実施によってKPIがどう変化するかの仮説(Plan)
特に大切なのは、結果の考察とアクションプランを具体的に決めることです。「一旦、様子を見ます」や「こんな時もありますよね」では、PDCAは回りません。
四半期に一度の振り返りでは、より大きな視点で見直します。
まず施策の方向性。
単月では見えづらい効果の傾向を、長期的な視点で評価します。たとえば、記事コンテンツのような即効性は低くても着実に成果を出している施策や、逆に一時的には数字が良くても長期的には効果が低下している施策など。そういった本質的な効果を見極め、次の四半期に向けた方向性を決めていきます。
次にリソース配分の適切さ。
「今の予算配分は適切か」「どの施策により多くの時間を使うべきか」などを検討しましょう。効果の出ている施策により多くのリソースを配分するなど、次の四半期に向けた体制を決めていきます。
なお、KPIの妥当性については、半年から1年に一度、じっくりと見直すことをお勧めします。「このKPIは本当に事業の成長を示す指標になっているか」「もっと重視すべき指標はないか」といった検討は、ある程度の期間でのデータの蓄積があって初めて、適切な判断ができるからです。
ここで重要なのは、経営者やCMOなど、マーケティングの責任者自身が参加することです。現場任せにしてしまうと、どうしても小さな改善に終始してしまいがちだからです。
まとめ:PDCAを回すためのチェックリスト
最後に、チェックリストをご紹介します。
□ 測定するKPIが明確か
□ 月次・四半期の会議体が設計されているか
□ 社内の責任者は決まっているか
□ アクションプランは具体的か
□ 経営者自身が定期的にレビューしているか
このチェックリストを意識しながら体制を整えていけば、PDCAは必ず回り始めます。大切なのは、「測定すること」が目的化しないよう、常に意識することです。