見出し画像

AIと著作権セミナーⅡを受けての備忘録

文化庁主催の「AIと著作権Ⅱ」オンラインセミナーを受講(聴講)しました。

著作物は私たちの身の回りにどこにでもあるもので、避けて通る事ができないものなのです。例えばTVから流れる音楽やマンガ本もその作者による著作物です。著作物には著作権が自然発生するもので、逆に言えば著作権は著作物を保護するもとと言えます。
著作物の定義は著作権法第2条第1項第5号で以下のように決められています。

① 思想または感情を
② 創作的に
③ 表現したものであって
④ 文芸、学術、美術または音楽の範疇に属するもの

したがって、単なるデータ(事実)やありふれた表現やそもそも表現ではないアイデア(作風や画風など)は著作権法の保護の対象にはなりません。

また著作権には複製、上演、演奏、上映など著作権の利用形態ごとに権利がいろいろと定められていることも一応知っておいた方が良いでしょう。

図 著作者の権利

したがって、著作物の対象となる利用行為をしようとする際には、著作権者から許諾を得ることが原則になります。しかしながら、著作権には非享受目的の行為に関しては、著作権者の許諾を得ずに使用することができるという権利制限規定もあります(30条の4)。私的利用、引用、学校など教育機関による複製、非営利無報酬での上演などですが、これについても勝手に拡大解釈はしない方が良いように思います。

また、著作権侵害の要件としては「類似性」と「依拠性」の二つがあり、両方とも満たされたときに侵害されたと言えます。

① 類似性:
 既存の他人の直作物と同一または類似しているという事です。  
「表現上の本質的な特徴を直接感得できる」場合、類似していると判断されることが多いようです。ここでのポイントはアイデアではなく表現の類似性だという事です。

② 依拠性:
 既存の著作物に接して、それを自己の作品の中に用いる事を依拠と言います。つまり、著作物を参考にして自分の著作物を作ったときには依拠性があると判断されるようです。つまり、知らずに偶然一致した場合、依拠性は認められないと考えられます。

著作権侵害は、この2つの要件を同時に満たすときに成立しますの注意が必要です。

さて、AIの活用で著作権がどのようになるのかの話です。
「AIは他人の著作物を勝手に使っているから問題がある」とか「AIを使って絵や文章を作っても著作権はもらえない」などという話をたまに耳にします。

AIと著作権についてはまだ文化庁でも調査研究中みたいですが、AIの活用においては大きく2つの段階で考える必要があるそうです。一つは「AI開発学習段階」で、もう一つは「生成利用段階」です。

① AI開発・学習段階
著作物を学習データとして収集・複製して学習データセットを作成。それを学習に利用してAIモデルを開発する段階。

② 生成・利用段階
AIを利用して画像や文章などを作成する段階。

図 AIと著作権の関係を考える2つの段階

私たちに関係するのは2つ目の生成利用段階が主だと思います。そこでの著作権侵害の考え方の基本はAIを使用していようが使用していまいが同じで、類似性と依拠性で判断されるようです。ただし、依拠性の有無は個別の作品ごとに判断されるものなので注意が必要です。

例えば、私たちが生成AIの入力として「〇〇氏風な表現で」とかしてしまうと依拠性的にはグレーのようです。同様に既存著作物(写真や絵など)を直接入力した場合や特定クリエイターの作品を集中的に学習させたAIを使ってしまうなどは問題になる可能性がありそうです。(類似性があるという仮定です)

つまり、ここでのポイントは「利用者が類似性と依拠性を認識していたか?」ですし、そうなると、AIに入力する質問やプロンプトの表現には注意しておかないといけないなと感じました。

また「AIで作成したものは著作物になりうるのか?」ですが、AIは自律的に生成したものは著作物ではないが、人が生成意図をもって作成したもの(創作物)は著作物になるという事でした。しかしそこにも使用するAI開発学習段階でのデータベースに問題があると微妙という印象でした。

いずれにしても、AIを使う時にも著作物の基本概念はこれまでと同じという理解で良さそうです。AIを自分の文章作成能力向上やイメージ図の磨き上げなどの私的利用であれば30条の4(著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用)に基づいて判断すれば良いのですが、それを販売して利益を得る場合には、使用するAIの学習データベースや入力するプロンプトの「依拠性の有無」について注意が必要ですね。まぁその場合「類似性」が無ければ問題無いように感じますが…。


*この記事は受講したセミナーについての個人の所感をまとめたもので、著作権についての個別の判断に準拠したものではありません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?