ふたりで暮らすというイノベーション
シャンプー容器にヒビが入ってることに、私は1ヶ月気づかなかった。
毎朝なぜかシャンプー液が浴室に垂れていて、「おかしいな?昨日洗い流したのに」と思ってはいたけれど、オットに「それヒビ入ってるよね?」と言われてはじめて、ああそういうことかと納得した。
どうりで、毎日浴室にシャンプー液が垂れていたわけだ。
減っているようには見えなかったから、私が毎日フタを閉め忘れか何かをしていたのかと思って、その事実を日常の背景にしてしまっていたらしい。
昔、世界の大半は背景だった
私が色んなことをすぐに背景にしてしまうのは、昔嫌なことがあったときには、遠くの方に意識を飛ばしていた名残りだと思う。
あのときの私にとって、世界の大半は背景だった。
もうそれ以上、傷つきたくなかったし。
心を動かしたくも、動かされたくもなかったし。
全部が背景だと思えば、気持ちを手放せるから。
そんな風にして、あらゆるものを背景にしてしまっていた時があった。
今、私の背景力は適応力になったのかもしれない
昔のように、何もかもを背景だと思うことはもう無くなったけれど、シャンプー事件をきっかけに、私は日々色んなこと‥‥特に無機物についてを良く背景にしていることに気づいた。
社用PCの読み込み速度の遅さ(オット的に看過できない速度だったようで、問い合せたらIT部が速攻で新しいPCにしてくれた)
家の中に脱ぎ捨てられた靴下(オットの抜け殻な時も、私の抜け殻な時もある)
着過ぎてボロボロになってきたお気に入りの部屋着
もう出てないんじゃない?っていうマスカラ
「でもまだ使えるし」って、事あるごとに思っている気がする。
まだ使えるかどうかも大事だけど、快適に使えてるかどうかも大事だよ?とオットに言われた。
そういうもんなのかあ〜〜と思った。
現状維持とイノベーションの均衡点
ただ、私の背景力もとい適応力は、現状維持には優れているが、イノベーションには全く不向きだ。
確かに、前述した社用PCは新しくしたところサクサク動いて良いし、マスカラも買い換えると良い感じになった。
でも、そのどちらも私が「変えよう!」と思ったのではなくて、オットに提案されて変えたのである。
残念ながら、今のところの私には日常にイノベーションを起こす感度が弱いのだ。
だからこそ、他者の意見を積極的に聞き入れて新しい風を取り入れることは、今後私が日常にイノベーションを起こせるかどうかの鍵になってくるに違いない。
ふたりで暮らすというイノベーション
オットは、日常にイノベーションを起こすのが得意だけれど、非日常は恐れる。
私は、非日常を作ることが得意だけれど、日常を変えることを恐れる。
そう、ふたりはデコボコしている。
でも、恐らく私が私と同じ人とふたりで生活していたら、いつまで経ってもPC速度は遅いままだったし、マスカラはスカスカのままだっただろう。
オットもオットで、日常を少し良くすることはできても、カンボジアに住んで幸せの価値観が抜本的に変わるようなことはなかっただろう。
ちがうということは、それだけでもうイノベーションなのだ。
だから、私は今日も安心して背景力を発揮している。
きっと何かあったら、オットが拾ってくれるだろうと信じて。
ご清聴、ありがとうございました。