第274話:さよならを空高く
今回の異動で転勤することになり、勤務も再任用のフルからハーフに切り替えるため、基本的にはテニスの指導から足を洗うことになりました。中学以来、考えてみれば50年間もテニスに関わってきたなあと思ってみたりします。
まったくの個人的な感傷にすぎない記事で申し訳ありませんが、昨年4月、現在の3年生がインターハイ予選を迎える時に送ったラインのメッセージに、少し言葉と写真を足して、とりあえずこの学校での「自分の締め括り」を書かせていただきたいと思います。
試合当日の朝のメッセージなので言葉が浮ついているかもしれません。
でも確かにこんなことを目指してきたように思います。
顧問として気を付けてきたのは、生徒を勝つための道具にしない、自分の言うことを聞くロボットにしない、何も教えないが、常に一緒にいるということでした。
部員も多い時は47人、男女混成の部活でしたし、勉強との両立に苦しむ生徒同様、僕も教科指導との間で、それから昨今は迫り来る「老い」との間で苦悩する日々でもありました。
ただ、生徒に恵まれました。
くだらぬ話ですが、昨年4月1日の練習後の円陣で、
「申し訳ないが病気が見つかり入院しなければならない。後はみんなで協力してインハイを頑張って欲しい。すまない。」
と、あらぬ嘘を言ってみたところ、みんな目が点になって硬直。
ややあって部長が
「いつからですか?」
と問うので、
「ばっかだなあ、エイプリルフールだろ」
と言うと、
生徒は「ひどい騙し方だ」「嘘があまりにリアルすぎる」と口々に非難。
ヘビースモーカーで、ラケットを持ってコートに入ればよろめいて転び、滑舌が悪く何を言っているかわからず、普段「オレのように棺桶に半分足を突っ込んだ人間には君らの悩みなどどうにでもなることでしかない」などと言っているジジイの言葉ですから、甚だブラックなリアルにしか思われないジョークであったようです。
こんな具合に、生徒と遊び、笑顔に恵まれ、試合でのプレーに感動をもらい、ドキドキしながら楽しい日々を過ごせたことを感謝したいと思います。コロナが明け、酒を飲もうと誘ってくれる卒業生も多くなりました。
生徒に救われてあった日々でした。
この学校での7年間で接した部員は、9代120余名。現役は勿論ですが、一緒に時を過ごした仲間として、この部で過ごしたことが経験の土台となり、つながりのひとつになって豊かな人生を歩んで欲しいと願っています。
■土竜のひとりごと:第274話