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Pilot's note NZ在住Ashの飛行士論

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NZ在住のパイロットAshによる飛行士論です。パイロットの就職、海外への転職、訓練のこと、海外エアラインの運航の舞台裏などを、主に個人的な経験に基づいて事実と意見を織り交ぜ、毎回…
自分が訓練生だった時に、こんなレポートがあったらよかったな!と思えるような内容を意識しています。自…
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2021年7月の記事一覧

VFRクロスカントリー考 HEROチェック2巡目と、エアライン運航に直接活きるスキルについて

本稿を含めたマガジンの収録記事は、著者の私見であり、あくまで参考情報の提供が目的です。実際の訓練にあたっては、それぞれの国の法律を尊守し、担当インストラクターの指示を優先してください。 前話はこちら 前回に引き続き、VFRクロスカントリーでのダイバージョン、つまり目的地の変更に対するプロシージャを見ていきます。「HERO」チェックの1巡目が終わったところでしたね。 HERO 2巡目は長期的対策2巡目のHERO、「Heading」では、目印に向かいながら、地図上の発動点に

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VFRクロスカントリー考 ダイバージョンについて

ニュージーランドの飛行訓練の一般的な傾向として、細かいところにあまりこだわらないところがあります。ビッグピクチャーを重視して、とんでもない方向に行っていない限り、ある程度の誤差は許容していきます。 これは、国民性もありますが、天気が変わりやすく、山がちな国土では、ものごとが計画通りに進むこと自体が珍しいためだと考えます。ETA(到着予定時刻)の算出も、定時性の確保というより、燃料を切らさないための時間管理が主な目的です。計画が変わるので、定時もヘチマもないわけです。 同じ

VFR クロスカントリー考 不時着をギャンブルにしないために

前話はこちら さて、ニュージーランドで教えるエンジン故障による不時着(FLWOP)は、ある「理想的な」パターンを教えることから始まります。 不時着に理想もヘチマもないといえばそうなのですが、不時着をギャンブルにしないために「ある種のパターンを描いて、最終的に風上に向かって降ろす」ことを重要視しています。 ちょっと簡略化します。 緑がパドック(着陸する場所)ですが、これを通常のサーキットの滑走路だと考えると、これは地表から1000ft、滑走路から1マイル弱の、いわゆる「

VFR クロスカントリー考 不時着あるいはFLWOPについて

先日、ニュージーランドで訓練している学生の方と話をしていて、VFRクロスカントリーの話になりました。 自分がクロスカントリーのフライトテストを受けたのは10年前のちょうど今頃。ニュージーランドは7月が最も天気が荒れるので、テストが2ヶ月以上も延びて、8月になってやっと実施できたもの。IFRのシミュレータトレーニングが始まってもまだテストを受けていない状態でした。 10年後も同じようなテストレポートを書いているとは思いませんでしたが、よく続いたもんです。 さて、上記のテス

ATR72-600 操縦資格試験【番外編】 相方がうまくいかなかった理由を考える

今回は、ATRのタイプレーティング試験の番外編です。 試験1日目の模様はこちら 試験2日目の模様はこちら トレーニング全体の振り返り記事はこちら 実は、相方のドム(仮称)は1日目の試験である「LOFE」を通過することができず、追加訓練が決まってしまいました。先日の記事で書いたシビアアイシングへの対処で、飛行機のオートパイロットをうまく使えず、Situation Awareness(SA)が大きく下がってしまったことが直接の原因でした。 彼は、マニュアル操縦のハンドリング

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ATR72-600タイプレーティング訓練を振り返る

5月に始まったATRのタイプレーティング(機種限定)訓練が終わりました。 上記のツイートがDAY1でしたから、ATRのことを全く知らない状態から、会社の規則に従った操縦ができるようになるまで、ちょうど2ヶ月かかったことになります。長いようで短い、この2ヶ月間を振り返って見ましょう。 試験1日目の模様はこちら 試験2日目の模様はこちら グラウンドコース(学科)グラウンドコースは、会社のシミュレータで短いお試し「フライト」をするところから始まりました。 学科の前に実際にシ

ATR72-600 操縦資格試験(2日目:OCA)

いよいよ2日目、OCA(Operational Competency Assessment)がやってきました。 この日は、エンジンが壊れたり燃えたりすることを中心にして、視程が悪い状態での離陸(Reduced Visibility T/O)や、非精密進入(VOR/DMEアプローチ)、精密進入(ILSアプローチ)、DMEアークなど、法律で義務付けられているエクササイズをやりながら、緊急事態への対処能力を審査される日です。 この審査に合格すると、タイプレーティング、つまりその

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ATR72-600 操縦資格試験(1日目)

2ヶ月間に及んだ訓練、最終テストは2日間にわたって行われました。 初日がLOFE(ローフ)と呼ばれるシナリオベースの試験、次の日がOCAと呼ばれるエンジン故障状態でのアプローチやゴーアラウンド、着陸、緊急脱出手順などが審査されるもの。両方とも、シミュレータで行われます。 本稿では、1日目の「LOFE」について、レポートします。 Line Oriented Flight ExaminationLOFEでは、実運航を模して、A空港からB空港に向かう途中に何かが起きます。それ

ATRのシミュレータ訓練が佳境に!

今週は4日間連続でシミュレータでした。 いよいよ緊急時の操作が入ってきて、ラーニングカーブが一気に伸びた感じです。ホテルに缶詰になり、パソコンが使えないのと、文章を推敲する時間がないので、訓練中はツイッターに進捗をぽつぽつ書いていました。 クロスウィンドへの対処クロスウィンド(横風)の離着陸が難しいATR。最初は10ノットくらいまでの横風ならなんてことなかったのですが、20ノットを超えたあたりから飛行機がぐにゃぐにゃと落ち着かなくなってしまいました。 コントロールの肝は

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