'Pilot's note' NZとAUSでエアラインパイロット
NZ在住のパイロットAshによる飛行士論です。パイロットの就職、海外への転職、訓練のこと、海外エアラインの運航の舞台裏などを、主に個人的な経験に基づいて事実と意見を織り交ぜ、毎回一球入魂で書いております。リクエストや質問はこちらのフォームからどうぞ→ https://bit.ly/32KUA32
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パイロットの私が観たときのこの映画のリアリテイは、何と言っても、艦長(キャプテン)という役職についた人間の孤独、これにつきます。 飛行機の機長も「キャプテン」です。これは、飛行機の文化が船のそれを引き継いだためで、いうなれば海は空の兄貴分。心に響くポイントがたくさんありました。 これから、映画「グレイハウンド」の見所をネタバレに配慮しながら、パイロットの視点から解説していきます。今の所、以下のような構成で考えています。 ・時代背景とこのころの軍事技術・戦術について軽く ・軍艦における指揮系統と命令の意味 ・OODAループと副官 ・艦長の仕事は孤独に耐えること 途中で脱線するかもしれませんが、ゆっくりと楽しみながら書いていきます
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たまにパイロットになるにはいい大学を出ていないといけないと言う人がいますね、参考までに私の学歴を紹介しましょう。 航学がだめで工学に私は高校3年生のときに航空自衛隊の航空学生を受験し、身体検査で落っことされました。おそらく視力が原因だったのでしょう。現在は緩和されていますが、当時は裸眼で遠距離視力が1.0ないとだめでした。 戦闘機パイロットになれないことがわかって、大学受験をすることになりましたが、戦闘機パイロットにあらずんば人にあらず、と極端に考えていた私は、勉強に身が
前回、パイロットのメンタルコントロールについて書きましたが、わりと好評いただいています。 この記事の最後に、運動の効用について軽く触れました。 今回は、運動のストレスに対する効用について、パイロット的観点から論じてみたいと思います。 パイロットとエクササイズ実は私自身、最近毎日運動しています。 と言っても、今まではかなりレイジーで、ビールばっかり飲んでほとんど運動していませんでした。 ところが、最近あるきっかけで軽くジョギングを始めてからというもの、毎日走るようにな
最近、シミュレータや訓練や試験で緊張してしまって成果が出ないというご相談がわりと重なり、以前も、似たような話をこちらのマガジンに投稿してきました。 需要があるトピックのようなので、最近の私自身の経験のアップデートも含めて、もう一度この辺の話を書いておこうと思います。 私も、試験に落ちたりして悩むこともありましたが、幸いにしてリカバリーに協力的な会社に恵まれてここまでやってきている気がします。 色々経験してきた中で、個人レベルで行き着いた結論を一言で言うと、 これが全て
そろそろNZを出てから1年近くになる。 一年前はまだATRでNZを飛び回っていたのに、今はエアバスでオーストラリアを飛び回ってる。国際線はバリだけだけど、やってることはこの一年でだいぶ変わった。 そういえばつい先日、約一年間の日本滞在を終えて妻と息子がメルボルンに帰ってきた。朝5時半に着陸したJAL773便。1時間ほど経って日本で買った息子のおもちゃと衣類と食品とその他もろもろの生活雑貨をいっぱいに詰めた段ボール箱をカートに3つも重ね、メルボルン空港から出てきた我が妻。一
2月にチェックアウト(路線審査合格)して、3ヶ月がたった。このタイミングでフォローアップチェック(路線審査)が入り、ラインに出て変な方向にいってないかチェックされる。 同期の中には、最初の路線審査よりかなりリラックスしていて、楽勝だった、と言うやつもいたが、チェックはチェックだから気は抜けない。メモリーアイテム、リミテーションその他重要なルールを基本的なところから見直して、絶対に知っていなければならないことは暗記し、覚えきれないものはどこに書いてあるかを整理しておく。 チ
NZとAUSいっしょに働いている人たちの「今日1日ぱぱっと仕事してサクッと帰ろうぜ」という基本的なノリとか、失敗に寛容だけどグレードはきっちりつける訓練カルチャーなど、NZとAUSで似ているところはたくさんある。でも、よくよく考えると私の生活はかなりの部分で大きく変わっている。 家族と離れて暮らしてる エアバス飛ばしてる 高速道路で通勤してる 早朝出勤や深夜帰宅がある 国際線飛んでる 昼休憩がない フライトタイムが長い AUS独自のATCやエアスペースの問題がある まだあ
本日のネタはこちらになります。 FL120と言われたのに、FL130だとキャプテンに言われた。流されそうになったけれど、踏みとどまって確認したら私の方が合っていた。と言う話。当たり前の話に聞こえるかもしれないが、英語圏で飛んでいると、英語がネイティブの人たち(周りのほとんどがそう)の「英語の間違い」を指摘するのは、とても難しい。今回は踏みとどまれたけど、こういう罠はそこいらじゅうに散らばっている。 正常性バイアスを断ち切るでも、正常性バイアスを断ち切る、と言葉では簡単に言
いやほんとにしんどかったよ。 どのレイヤーで話をするかによって異なるんだけど、一番浅いというか、短期的かつ表面的なところでは、前回も書いたジェット機の速度と高度、つまりエナジーマネジメント。 風の強いNZでATR飛ばしてきたのと、よくできている飛行機のおかげで、3000ftから下の操縦にケチがついたことはなく、割と風が強くても(訓練生の間は20ktの横風制限だから、大した風ではないんだけど)ふーん、って感じで毎回降ろしていた。 問題は、3000ftにちゃんと持ってこられ
今日はこれについて オーストラリアに来てそろそろ半年が経つ。今はメルボルンだけど、うちの会社はベース間の動きが多いので、今のところ移ろうと思えばどこへでも行ける状態。さて。 それぞれのベースの特徴メルボルン 長所 東海岸を中心に短距離路線(=離着陸多い)が多く、面白い 大きな都会で、便利。日本への直行便(QF JAL)。子供の教育機会が充実 短所 忙しい、深夜早朝便、4セクター、馬車馬ベース 家の購入は厳しい。今の場所(高速で20-30分くらい)だと、1億はする。 オー
ジェット機のA320に乗っておよそ100時間。 ターボプロップ(プロペラ)機のATRから移って最も難しいと感じた違いは、やっぱり降下プロファイルとスピードの管理(エナジーマネジメント)だった。頭の整理も兼ねてちょっとまとめてみる。 プロップは運用限界高度が25000ftで、運用限界速度(VMO)は250kt。滑走路から降下開始点(TOD)にVNAVが引いた降下プロファイルは基本的にずっと3度のままで、降下開始したらパワーオンでずっとその3度を降りていけるし、巨大なプロペラ
今年を簡単に振り返る記事を書いた。 年の切り替わりを前に、特別なことは何もしていない。カレンダーの年が切り替わることに、実務的な意味が個人的にほとんどないのは、人生が充実している証拠だと思いたい。 最近の状況タイプレーティング、グラウンドコース、シム、と順調にこなして、路線訓練が始まった。今年1月に始まった転職だから、今年中に飛び始められたのは順調な方だと思う。訓練が忙しかったのはもちろんだが、国をまたいで転居と転職をしたのは非常に大きな変化だった。オーストラリアはNZと
先日、こんなツイートをしたら、たくさんの反応があった。 端的に言って、自分でもよくやってきたと思う。 運と、人の助けと、自分の努力が三位一体になってようやく今の生活がある。そのどれが欠けても、今の自分はないわけだけれど、最も大事なのはリスクを取ることを、最終的に自分で選択したこと。 大人が子供に教えるべきことリスクを取らずに、何かを変えようとすることは、もはや狂気と同じ。なぜなら、「リスク」とは将来の不確実性の大きさを示す言葉だから。その不確実性には、当然将来が「いいこ
英語が話せるようになりたいというとき、よく聞くのが「仕事の英語より、雑談の英語の方が難しい」という言。確かにそうなんですよね。では、どうして雑談の方が難しいのでしょうか。 それは、話題の背景となる知識や経験、言い回しなどに不慣れで、話されている言葉が英語であっても自分の知っている英語ではないからだといえるでしょう。日本語でも、共通の話題がない人との会話は難しいですよね。 雑談は仲の良い友達を作って共通の話題を持つしかありません。つまり、究極的には英語圏で生活するしかないと
エアバスのタイプレーティングを5週間で取って、2週間休みでした。五週間が早いのか遅いのかはよく分かりませんが、だいぶ詰め込んだ内容だったと思います。 シミュレータセッションは全部で11回で、12回目が審査です。やることはほとんど決まっているので「難しい」ことはないのですが、それでもテストはテスト。ナマモノなので全く気は抜けません。 旅客機のタイプレーティングはこれまでに2度(DHC-8とATR72)経験しましたが、今回のA320が最も自他ともに評価の良いタイプレーティング
実は先日、ATR72で最後の乗務を終えました。 5年間務めた現在の会社を退職して、ある会社に移ることになりました。ベースはメルボルン。そう、今回は会社だけでなく居住国もニュージーランドからオーストラリアへ変則ムーブをカマすことになります。 乗務機種はエアバスA320です。ATRの時もそうだったけれど、CBT(Computer Based Training)の教材は、量が膨大な上に、信じられないほど退屈で、辟易しています。 さて、今はどこにいるかというと、オーストラリアで
今回は、リスクのあるオプションを取る判断をする時に使うフレームワークの「3C's」なるものについて書いてみよう。前回の有料版で書いた通り、出典はこちら。 3つのC具体的には、Criticality、Consequence、Control の三つの頭文字のことだ。 Criticality(目的の重要度) そのオプションを取ること、つまりミッションの目的が、どれだけ重要なことかを指す。重要なことであればあるほど、危険を顧みずにそれのオプションを完遂する動機が強くなる。 C