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日本の貧困格差が広がったのはいつからなのか。貧困は連鎖する-原因と考察-


日本が一億総中流社会と言われていたころからだいぶ様相が変わってしまったのは、いつからでしょうか。コロナ禍ですっかりバイオハザードのごとく様相が変わりましたが、コロナ以前から貧困格差は段々と広がっていっていました。


日本の貧困格差が広がってしまったのはいつからなのか、なぜ日本は殺伐としていったのか、について焦点を当てていきたいと思います。


貧困問題と非正規雇用の増加


日本は戦後急激な経済成長を遂げ、先進国の一つとなりました。

その一方で、「ワーキングプア」や「ネットカフェ難民」「日雇い派遣」等、貧困の問題も抱えているのが現状です。


近年、産業の規制緩和により低価格競争が激化し、労働分野の規制緩和、構造改革により雇用は弾力化しました。

弾力化したことにより、企業は正規雇用を減らし、賃金が安く雇用調整のしやすい非正規雇用を増やす動きになりました。


また産業構造の中のサービス部門の比重が特に増えたため、そこで低価格競争が激化し、非正規への依存度があがったのです。


実際、1992年から2012年の20年間で雇用者(役員を除く)は214万人増加していますが、そのなかで正規は149万人減少し、非正規は362万人増加しています。


その結果、雇用者(役員を除く)に占める非正規雇用の割合は、92年の20.5%から12年の35.2%へと拡大。

こうして非正規雇用が拡大することで、必然的に日本全体の雇用条件と賃金水準は低下するため、非正規の増加は日本の貧困問題に大きくかかわっていると考えられます。


正社員と非正規の待遇の格差と世帯間連鎖


例えば男性正規の所定内時給を100とすると、2005年時点で、


〇フルタイム非正規の所定内時給は男性で63、女性で50
〇パート非正規では男性で48、女性で43


であり、明らかに正社員との差が大きく開いています。

つまり、非正規雇用の拡大は、日本の貧困率の上昇に大きく寄与していますと考えられます。
また貧しい世帯(特にひとり親世帯)が増えることで、子どもへの影響も拡大し、貧困の世帯間連鎖を生んでいます。


社会保障の脆弱さ


次に非正規雇用の問題として挙げられるのは、社会保障の脆弱さです。

 日本は、雇用を第一の社会安全網として生活保障制度を作ってきました。社会保障は、第二社会安全網とされていますが、雇用を中心にした社会保険(医療、年金、高齢者介護)と、労働保険(労働者災害、雇用)が前提になっています。


そのため、このような職場で加入するタイプの社会保険と労働保険は、多くの非正規雇用労働者には適用されません
また、国民年金も本来ならば労働者として全員「第2号被保険者」になるべきですが、実際は多くの非正規雇用労働者が適用除外されて、自営業者などと同じく、「第1号被保険者」になっています。


第一号被保険者
…日本では、20歳以上60歳未満の人は、すべて国民年金に加入しており、国民年金では加入者を3種類に分けている。そのうち自営業者・農業者とその家族、学生、無職など、第2号被保険者、第3号被保険者でない人のこと
第2号被保険者
…民間会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者のこと。厚生年金や共済の加入者であると同時に、国民年金の加入者にもなるが、厚生年金や共済の保険料以外に保険料を負担する必要はない
第3号被保険者
…厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者(年収が130万円未満の人)保険料は、配偶者が加入している厚生年金や共済組合が一括して負担する


非正社員の方が、正社員よりも低賃金のため、高額な国民年金保険料(2014年度で1年約18万円)を納付できず、滞納者が急増しています。これは公的年金財政破綻の主な原因の一つとなっています。また、これには少子高齢化が進行していますことも関係していると考えられています。


さらに失業者の2割しか失業給付を受けていないことに示されるように、雇用保険の適用範囲の狭さが、稼働可能世帯のセーフティーネットの綻び(※)を大きくしているといえます 。

※近年、生活保護受給者の数は増えており、非正規雇用労働者を中核としたワーキングプア(稼働年齢層)が増加している。特に生活保護受給者の数は、2003年度から2013年4月の間には、84,941世帯から287,156世帯へと急増している。


日本の世帯別貧困率


日本の世帯別貧困率の観点からみると、母子世帯の貧困率が高く、近年では単身若年世帯の貧困率が上昇しています。

特に18歳未満の子がいる母子世帯では、母親の有業率は82%、貧困率は87%です。また失業や非正規が増え、年功賃金のカバー範囲が狭まったため、子育て中世帯の貧困率も高くなっています。


例えば2002年の就業構造基本調査によると、

18歳以下の子どもがいる世帯の90.5%を占める三つの家族類型(夫婦と子ども、母子、夫婦と子ども・親)の貧困世帯数を推計すると、計328万世帯、29.1%となる。


つまり2002年時点で、日本の子どもの3割は、貧困世帯で育っているということになるのです。またコロナの拡大によりその数は増えていると考えられるでしょう。


ちなみに、ユニセフの「児童貧困率」の定義は、

「等価可処分所得の全国中央値の50%未満の世帯にいる子どもの比率」

というものですが、2000年時点で既に日本の児童貧困率は14.3%(2000年)と発表されていました。


また貧困というのは親から子どもへと連鎖する場合が多く、貧困の世帯間連鎖が起きている家庭が多く存在します。


近年クローズアップされるようになった奨学金の返済問題からも、日本の社会保障の脆弱さを見直す必要があるといえます。

今回は私の大学時代のレポートをもとに記事にしましたが、こういう記事をみて息苦しく感じる方も少なからずいると思います。ただ、コロナで明るみに出ただけであり、日本の貧困格差の拡大は今に始まったことではありません。


もっと社会のセーフティーネットの幅を広げ、貧困格差を是正すべきであり、コロナでより貧困格差が拡大した今こそ、日本の社会保障の脆弱さを見直すべき時なのではないかと考えます。


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