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短編小説

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ちょっと不思議な短編を集めました。
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#世にも奇妙な物語

うすっぺらな街 【短編小説】

うすっぺらな街 【短編小説】

【駅のホームで出会った不思議な少年にいざなわれ、『俺』は冬の夜空へ飛び立った。

渋谷のスクランブル交差点、上空。俺は足元の光景に目を奪われていた。
多くの人が紙でできているかのように、厚みが無かった。

気付けば街の雑踏に混じって、ぺらんぺらんという音が辺りに響いていた。かさかさ、紙の擦れ合うような音も聞こえてくる。
その軽い音は、枯葉を踏んで歩く音に似ていた…】

***

俺は、まだ薄暗い駅

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「五十センチの神様」(短編小説)

「五十センチの神様」(短編小説)

ある愚かで怠け者の男が、だらりだらりと田んぼの畦道を歩いていた。

すると道端の土が少し、盛り上がっているのに気が付いた。 

「ちょっと待て」  

声が聞こえ、男は立ち止まった。  

「何だ?誰だ?」  

「わしじゃ」

そう言いながら地面から顔を出したのは、長い髭を蓄えた、小さな神様だった。  

身長五十センチの神様は、やっとのことで穴から這い出してきた。てっぺんは河童のようにハゲてい

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「ワスレサル」(短編小説)

「ワスレサル」(短編小説)

【 右足を見て跳び上がった。ちょうどふくらはぎのあたりに取り付いていたものを見たからだ。
驚いたことに、それは小さなサルだった。(本文より)】

右足が重い。

最初に違和感を覚えたのは、梅雨が明けたばかりの頃だった。
数日前まで梅雨寒で、少し肌寒いほどだったのだが、その日の東京には真夏のような日差しが照りつけていた。

俺は職場から一人で営業先に向かっていた。
地下鉄を乗り継ぎ、目的の駅に降り立

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