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「この窓の向こうのあなたへ」を読んで

図書館の
児童書コーナーで小手鞠るいさんの本を見つけた。
小学校高学年から中学生向けの本だった。
放課後にここへ遊びにきてね。ちょっとした時間に学校の勉強とは別に自分の趣味で読んでみて、いろいろ一緒に考えようといった内容。
私がもう少し本を読む小中学生だったなら、あの時の心や気持ちで読んでみたかったなぁと感じた。そこから小手鞠るいさんの本に興味を持ち始めて、手に取るように。

そんな時、
「最近入った本のコーナー」で
佐藤まどかさんと小手鞠るいさんの
手紙のやりとりをまとめた
「この窓の向こうのあなたへ」を見つけて
借りてみた。

小手鞠さんは
ニューヨークの森の中に住んでいる。
日本で暮らしていたが30代後半に
いまのパートナーと出会い
一緒についていき、そのままニューヨークで暮らしている。
佐藤さんは
イタリアの丘にご夫婦と娘さん3人で住んでいる。

二人の児童文学作家が
外国で生活しているからこそ見えてくる
日本の姿についてお手紙を通して語り合っている。その内容が編集されている一冊。

●印象に残った、書き留めておきたいと感じた部分
☆感想






●【アメリカについて】

小手鞠
「アメリカには50の州があり、州によって法律を含めて大から小まで実に様々な違いがある。50の国があるようなものだと考えた方がアメリカをよりよく理解できる。」

☆確かに、
大谷翔平選手の元通訳の水原さんが賭博で捕まった時にも、ニュースで州によって
禁止されている度合いが違うと報道されていた。全然関係ないけれどそのことを思い出した。いろいろな項目で法律やルールが州によって違うのだなぁと改めて思った。

●【アメリカと日本の比較 教育システム】

「アメリカでは全教科が全て優秀でなくても、何か1つでも秀でているものがあれば、それを伸ばしていこうとする。そういう教育を持って良しとする考え方が主流
彼(小手鞠さんの)は好きなこと得意なこと以外は全く頑張らない。
不得意な事は、それが得意な他人に任せておけばいい。僕はリラックスして生きる人生とはエンジョイするものがモットーなのです。」


「日本の子供たちの多くは、小学生時代から人と競争させさせられ、成績は数字とされる点数と偏差値だけで評価され、大学を出たら会社に就職すると言うことをまず考えると言うか考えざるを得ないような社会になっていると思う。かわいそうだなぁ。もったいないなぁと思う。
自分の将来を学校や会社や社会や国家に委ねる必要なんかないんだよと私は言ってあげたい。人生をどう生きるかそれを決めるのは、自分自身であって、学校や教育制度ではないし、ましてや社会や国が決めるわけではないんだよと」


☆小手鞠さんのパートナーの考えはとても素敵だと思った。日本の教育制度とは全然違う環境だからだ。
日本はあらゆる分野を満遍なくできることが良しとされている文化
アメリカは、得意なことをさらに伸ばす!

どうしても日本で住んでいると全てを平均的に頑張らないといけないという固定概念みたいなものがある。受験システムのセンター試験なんかは典型的だ。

就活で日本の学生が高校時代の部活での出来事(数年前のこと)をアピールしていたことに驚いたとも書かれていた。
アメリカの学生は今や今後に目を向けているので、今現在の能力を活かして自分には何ができるのかをアピールする。



●【いじめ】

小手鞠
「日本には出る杭は打たれると言う諺があるように、子供たちは人と同じように振る舞い、人と強調していくことが大変な美徳であるかのように幼い頃から教育されているように思います。少なくとも私はそうでした。異分子を弾き人と違ったところのある人を排除しようとするから、日本の学校内でいじめが起こるのではないかと思う。」


佐藤
「ほんのちょっと周りと違うだけで、いじめの対象になる。
SNSの出現が誹謗嘲笑、いじめをよりひどく残酷なものにしているのは明らか。
生成された工業製品のように皆が同じ容姿で同じ趣味で同じ考え方をしないといけないなんて、つまらない最悪の世界だと思います。私たちはキロいくらで売られる商品ではありません。
それぞれに個性を持つ人間です。
ちなみに日本のにんじんやきゅうりの形や色が揃いすぎているのも気になります。
自然のままの姿なら話はなりません。
もし他人の違いが気にならず、むしろ積極的に楽しめるようになったらいじめも減るのではないかと考えます。
そういう柔軟な精神を持つにはどうすれば良いのかと言うと、やはり子供時代がカギになると思います。子供は親や周りの大人を見て育ちますから」



☆小学生の頃
私はいじめられたことはないが
クラスのやんちゃなグループがとても苦手だった。大人にすごく汚い言葉で文句を言ったり授業中に大声で話したり
静かに授業を受けたいタイプだった私はそれがすごくストレスだった。
先生たちも、手のかかる子たちの方がかわいいようで、行事ごとやイベントなど結局はそのやんちゃ軍団の言うように物事が進んでいったりする公立中の流れに虚しくなったものだ。
ある日、
母はいじめのニュースを見ていた時
「もし嫌なことがあって、しんどかったら、転校することだってできるねんから、無理して行かなくていいねん。」と言ってくれた。
子どもにとっては
学校という環境が
社会になり、そこが全てだと思うところを
その時代にしては珍しく、
母は別の視点や選択肢も与えてくれた。

小さなどこにでもあるようないざこざや
揉め事はあったにせよ、
いじめにあったりしなかったが、
もし何かあっても、母がそう言ってくれているというお守りのような気持ちがあったこと。今はとても感謝している。
佐藤さんの
「子どもは親や周りの大人を見て育ちますから」という言葉にどきりとした。
子どもたちに見られて恥ずかしくない生き方ができているかな??






●【育児放棄、児童虐待、親子関係】

佐藤
「育児放棄や児童虐待については、個々の問題はもちろんですが、行政や社会のシステムや人々の心の影響もあると思います。
例えば東京では電車の中で妊婦さんに席を譲る人は少ないですし、保育園や幼稚園の数が圧倒的に足りないのです。
育児をしながら働いている会社員は、肩身が狭いのですが、同僚たちにしても労働時間が多くなり、ストレスが溜まっているので、心にゆとりがないのでしょう。
そんな環境ですから、日本で子育てをしながら働くのは非常に難しいと思います。」

「親と言うのは、とにかく尊敬すべき存在じゃないのかと聞いてきた。出版業界の方、児童虐待をする鬼親も少なからずいるし、そこまでいかずとも無責任な男やいろんな意味での毒親は結構多い。親は尊敬すべき愛すべき対象だとは限らない。」


☆佐藤さんの生い立ち(特に母親との関係)には驚いた。今でいう毒親のような要素があると思う。しかし佐藤さんは母親を客観的に見て、感謝するところは感謝し、一方で反面教師にしている部分もあった。
そんな親子関係を経験をしたからこそかける作品がたくさんあったそうだ。
全ての親子が愛に溢れているわけではない。
そういう環境で過ごしてきた人ばかりではないのだと改めて考えさせらるし、自分のものさしでだけ見ていたらダメだと思った。


●【性教育、性的虐待】


小手鞠
「日本の児童書業界では、性欲を真正面からテーマに取り上げて書く事は、ある種のタブーのようになっていると言う話を聞く。母親の愛は絶対的なものであると。同じように、性的な成長や性行為などは自動車に書くべきことではないと言うような暗黙の決まりが、日本社会にはあると言うことなのでしょうか?」

佐藤
「買収も中絶も、母親の育児放棄も、なぜか日本では女性だけの問題とされている。売春する男や少女に中絶を母親に育児放棄をさせるようなことをしていた人たちや、性的虐待の加害者が、日本では原発の対象にならないのはなぜなのか不思議でならない。」


小手鞠
「私はかねてより、日本の児童書業界における幼女少女の描かれ方や文章には一部、女性差別を増幅するような傾向があるのではないかと思い続けてきました。
風もないのに女の子のスカートがひらひらしているアニメ。
細めの少女なのに、やたらに乳房と尻だけが強調されている漫画児童文学においても、少女はあくまでも女の子らしらしく、可愛く、明るく優しい実に母性を備えていることが多い。
幼女少女若い女性が、やたらに賞賛され、男性の性的対象として商品化される
若い女の子たちが、男性の性的欲望を満たすための道具となっている。アメリカにはそれを悪しきことであると認識し、何とかして少女たち少年たちを守らなくてはならないと言う強い自制力が働いているのも事実」


☆子ども向けのアニメでも、女性は
ぼん、きゅ、ぼん!の合言葉のように
かなりグラマラスな描き方をされている。
テレビを子どもと観ていても
これを見てどう感じているのかな?と心配になることがある。
Eテレなどは、最近多様性に焦点を当てられているから、「お姉さん」が黒や青を身につけたり、「お兄さん」がピンクやオレンジを身につけていることが多い。SDGsについてのコーナーも多い。

問題はもう少し大きくなってからだ。
小学校高学年ー中学生ー高校生
思い返してみると
自分も学校でほとんど習わなかった。
しかし一つだけ覚えているのは
中学生か高校の頃の保健体育の授業。
コンドームの装着の仕方の動画を見た。
みんな恥ずかしさからか、男子は笑い合っていたり、目を逸らして俯いていたり。
その時代でもかなり挑戦的な授業だったと思うが、本当に大事だと思う。
今の日本の中学校、高校ではどんな内容のことを習うのかな?
おそらくほとんどノータッチだと思うが。
そうなるとみんな
自分でアダルトサイトなんかをネットで見て学ぶようになるのかな??
すると誇張されたり刺激の強い映像をたくさん見ることになるのかなぁなんて考えた。
自分の体も、大事な人のことも大切にしてほしいから、自分の子どもたちにも家でどういう伝え方をしていくべきなのか今から考えておきたいなぁと感じた。

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