あれから11年~東日本大震災のあの日を忘れない
FMKエフエムクマモト『木村優一~みんなスマイルLet’s Sing !唄わんかい!』は放送開始から丸5年が経過しようとしています。熊本地震で被災した故郷熊本の復興を願い、私の歌声で少しでも皆さんに元気になってほしい、と続けているこの番組には、放送当初から被災された方々からお便りを頂いています。
最近よく目にする内容が、「最近地震があると、熊本地震のことを忘れている自分に気づきます。日ごろから備えをしておかなければならないですね」といったお便り。ここ数年感染症対策などに意識が集中し、防災は二の次になってしまっていた方も多いかもしれません。
去る3月11日は東日本大震災が発生してから11年。私もあの日東京で被災しました。あの恐怖、混乱を忘れないためにも、私が体験した2011年3月11日のことを記します。
コンサートホールに向かう電車の中で
2011年3月11日は、私にとって大切なコンサートの開催日でした。私のnote記事(『スキファーノ先生のレッスン室~なぜか私はときどきそこに戻る』)にも度々登場する、イタリアで師事したルイージ・スキファーノ先生が来日し、私は先生とこのコンサートで共演を予定していたのです。私は先生との共演が嬉しくもあり、また先生と勉強した胃の痛くなるあの日々を思い出していました。
コンサート当日も歌のことばかり考えながら、ホールに向かうため地下鉄に乗車しました。駅を発車した直後、乗客の携帯から緊急速報が一斉になり、地下鉄はストップ。そのあとカタカタと車両が音を立て始めたのですが、すぐには地震だと気づきませんでした。かなり長い時間その状態が続き、地震だ! と認識しましたが、その時はそれほど大きい地震だという意識ではなかったように思います。揺れが落ち着いたあと、「隣の駅まで走行し、停車する」という車内アナウンスが流れました。とにかくコンサートホールに到着することしか頭になかった私は、隣駅で止まってしまった電車を降りました。地上に出て偶然に通りかかったタクシーに乗車することができ、急いでホールに向かってもらいましたが、車内から見えた光景に、ようやくただ事ではないことが分かってきました。
繰り返し発生する揺れに怯え、しゃがみ込む通行人、不気味に揺れるビル。先生も私もどうにかコンサートホールに到着したのですが、この日のコンサートは開催不可能と判断され、延期。帰宅しようにも交通網は停止し、共演者、スタッフのほとんどはホールで一夜を明かすことになりました。
津波による未曾有の被害と原発事故
会場の銀座・王子ホールが、非常時用の防寒アルミシートや乾パンを提供してくださり、スタッフが急いで食料を調達してくれたため、その夜は無事に過ごすことができました。きれいなホールで快適に避難ができたため、はじめは皆少し非日常を楽しんでしまっていたような雰囲気がありました。
しかし楽屋のテレビから流れる津波の映像を目にして、その惨状に「これは現実なのか」と我々は言葉を失い、同じ場に居たスタッフは泣き出してしまいました。当時はスマホがそれほど普及しておらず、私もガラ系でしたので、情報を得るのにも時間がかかり、これは本当に大ごとだ! と認識するまでに時間がかかったように思います。
翌日の昼に原発の事故のニュースに状況はますます深刻に。スキファーノ先生と夕食を共にしていたとき、そのニュースを聴き、先生に伝えると「もう二度と日本には来ないと思う」と言われました。先生にそう言われ、仕方ないと思いつつ、悲しくなりました(結局その後も何度が来日しているのですが)。
天災は忘れた頃にやってくる
改めて当時を思い返して反省し教訓にしなければと思うことは、当時私自身、おそらく世の中も防災に対する意識が低かった、情報を得るまでに時間がかかっていたということです。東日本大震災から5年後に、私の故郷熊本で大地震が発生しました。
これは本当に私の勝手な感覚ですが、スマホの普及もあり格段に情報をキャッチする時間が早くなり、また被災地への支援などの意識も国民全体が上がっていたと思います。電話はなかなかつながらない状況でしたが、SNSが使用できる姉とは素早く連絡が取れたため、現地の人が何を必要としているか、どこに送ればよいか、ということが分かりました。私には物資を送ることしかできませんでしたが、いち早くその対応ができました。SNSも利用の仕方によっては、安否の確認、リアルタイムの状況把握やSOSを発信などにつながる利点があると思います。
そして、ラジオでも繰り返しお話しているのですが、風化させない、忘れない、そして常日頃からの備えをしておく意識を持つことはとても大切です。言葉にすれば簡単なことなのですが、日常の忙しさでこうした意識は日々薄れていってしまいます。私自身に言い聞かせるためにも、これからも防災関連の話題については発信していきたいと思います。
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