「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第15話
「カッパが、で、でた?」その1
朝のひと時、妹のサクラが、庭に咲いているパンジーの花がら摘みをしていると。
陶芸家のゴダイさんが、家の前の街道を自転車で鼻歌を口ずさみながら走っていく姿が見えたと。
朝食の時にボクに言ったので、ボクは自転車の荷台に釣り道具があっただろう。
と言うと「あ、そういえばあったかしら・・・」と。
その時は、この後ゴダイさんが、腰を抜かす大変な事に成るとも知らずに、ボクらはのんびりとした会話をしていたのだった。
陶芸家のゴダイさんは、釣り好きで週に一度は釣りに出かけていた。
その日は朝から空はどんよりと曇っていて、今にも雨が降りそうな天気であったが。
ゴダイさんの釣り好きの虫が、うずうずとして我慢できずに釣りに出かけたのであった。
しかも、そんな日に限って普段はあまり行く事のない川へとゴダイさんは向かったのだった。
その川は、両岸に柳の木が植えられていて、昼でも薄暗く気味が悪いと出かける人も少ない川であった。
ゴダイさんのことを、破天荒な陶芸家とのイメージを持っている人もいるが。
じつは、芸術家特有の繊細な神経も、もちろん持ち合わせていたのだった。
しかし、ゴダイさんの繊細さは、どちらかと言うと「無類の怖がり」とも言えたのであった・・・。
ゴダイさんの、口ずさむ鼻歌は、釣り場に着く頃には「もののけ姫」のメロディーになっていた。
自転車を止めるとゴダイさんは、「フフフフフーン、フフーフーン」と曲が「もののけ姫」である事に気づいて、
「まさか、ホントに物の怪なんて出ないよね・・・」
と心の中でつぶやくと辺りを見回わした・・・。
そして、さすがに薄暗いその釣り場の雰囲気に躊躇して、別の釣り場にしようかと迷ったのだった・・・。
なぜかと言うと、この釣り場はカッパが出ると噂されていたのである。
そういえば、この川のあちらこちらには、カッパが描かれた水遊びに注意を即す看板が立っていたのだった・・・。
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連載小説(不定期)
「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第15話「カッパが、で、でた?」その1
終り
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2020.10.24 24.19時頃、もののけ姫のエピソード加筆 2023.12.21加筆修正