行動心理学も学べる楯岡絵麻シリーズ
たまたま図書館の新刊コーナーにあった、行動心理捜査官・楯岡絵麻シリーズが面白い。
取調室を舞台にした刑事モノのミステリー小説。主人公の楯岡絵麻が、マヌケな相棒、西野圭介と共に行動心理学を駆使しながら事件を解決していく。
最初に読んだのは『ホワイ・ダニット』だった。調べてみると、11作ある中の10作目だったので、かなり新しい作品。
基本的に短編で話が進んでいく。文庫サイズで1話が70ページ程度。コナンのようにちょいちょい伏線が張られつつ、後でつながることが多い。
私もまだこの作品を全て読んだわけではないが、5作目までは読んだ。初期作品を読むと、当初はここまで続くと想定されていなかったシリーズだと分かる。
2作目までで、主人公がなぜ警察官になったのか、という一連の話は終わる。思いのほか売れてしまったので、シリーズとして出しているのだろうか?
この作品のいいところは、連続して読むことで心理的なテクニックを自然と覚えられるこだ。というのも、捜査方法はどの作品を通しても変わらず(読んだところまでは)、何度も登場するからだ。
知っているものもいくつかあり、おそらく全てのテクニックが現実にあるんじゃないかと思う。
ほぼ毎回のように出てくるのは2つ。マイクロジェスチャーと、危険を察した時の3つのF。
マイクロジェスチャーとは、考えて行動する前に体が瞬時に反応してしまう現象。
人間は他の動物と違い、嘘をつくことができる。
これは、思考を司る、大脳新皮質が他の動物よりも発達しているからだ。
しかし、大脳新皮質は感情を司る、大脳辺縁系よりも反応が遅い。
そのため、考えたことを行動に移す前にわずかに動作として現れる。この間、わずか0.2秒。これを読み取って、嘘を見破る。
忘れてしまったが、神経伝達物質の移動を阻害する薬を飲むことで、大脳辺縁系の反応を遅らせて、嘘をついても動作に出ないようにすることもできるそうだ。
作中では、「よろしくね、大脳辺縁系ちゃん♪」みたいセリフと共に嘘を見破る行為が始まる。
危険を察知したときの3つのFとは、Freeze(硬直)、Flight(逃走)、Fight(闘争)を指す。軽い場合は、硬直。より危険度が増すと、闘争になる。
つまり相手が歯向かって来たら、相手にとって触れられたくないところに近い話題を意味している。
このマイクロジェスチャーから、3つのFはお馴染みの流れ。
(コナンの「俺は高校生探偵の工藤新一。幼馴染みの毛利蘭と遊園地に遊びに来ていたら、黒ずくめの組織の怪しい取り引き現場を目撃し、気がついたら背後のもう一人の仲間に毒薬を飲まされ、気がついたら体が縮んでしまっていた!」…と、同じと思ってもらっていい。何も見ずに書いたが、おおよそ合っているだろう。)
お馴染みの流れがあったとしても、捜査過程はそれぞれオリジナル。むしろ、見知った流れが作品に引き込ませるキーになっているとも言える。
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ある特定の分野を学びたければ、連続してその分野の本を5-10冊程度読め、と聞く。
ゴリゴリに学ぶ前に小説でウォーミングアップとまでは言わないが、「あー、こんなテクニックあるんだ」くらいなら本シリーズを読み通すだけでもなんとなく記憶に残る。
そういった点で、このシリーズは行動心理学のテクニックを楽しく学びたい人にとってもいい小説。
P.S.
ドラマ化しそうと思っていたら、4年前にドラマ化していた。