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透明な水底の夢

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詩集 ❘ 十代の透明な悲しみの断片
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#油絵

友情と同情と、その名を隠した感情と

友情と同情と、その名を隠した感情と

心を半分、あのこにあげた
問題をきいて、解決するために

時間も半分、あのこにあげた
悩みをきいて、慰めるために

「だって、親友だもの」という、それは大変に便利な隠れみのだった
実際、親友だったのだから、それはしごく当然なことだった

あのこは、左にいけば問題は解決するというところを
どうしても、右を選んでしまう
わかっていても、いつも右を選んでしまう

――つまるところ、私は肩入れをしすぎたの

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気付かれない失語症 

気付かれない失語症 

思考は、言葉になる前に消える
くちもとまで出かかって、わたあめのように消える

伝えたいことがあるのに
言葉に置き換えることができない

伝えたいことがありすぎて
どこから始めていいのかわからない

誰にも届かない
誰にも届けられない

たまった言葉は湖になり、私はそこに沈んでゆく

水の中ではもう、声を出すことも出来ない