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荒井良二『こどもる』
声を出すのは「声る」、スイカを食べるのは「スイカる」、よだれを垂らすのは「よだる」…。過去を振り返らず、未来を思わず、ひたすらに現在を生きる子どもたちの活動を〈名詞+る〉の形で動詞化した荒井さんの言語感覚が冴えわたる。
ことばだけではなく、絵もまたすごい。
子どもが実際に書きなぐったような線で子どもたちの姿が躍動する。思いついたのを適当に並べたようでいて、通して読むとちゃんと子どもの一日の流れが浮かぶようになっている構成も見事。
ピカソは晩年になって「この歳になってやっと子どもらしい絵が描けるようになった」と語ったそうですが、あらゆる点で奔放なこの絵本は、晩年のピカソのみならず、クレーが描いた天使たちを思わせる、自由な精神が横溢している逸品だと思います。
それにしても絵本デビュー25周年というアニバーサリー・イヤーにこんなアナーキックな作品を出してくる荒井良二さん、素晴らしい!