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高さを出しましょうと言われ…
先日、妹と苔テラリウムを作りにいった。
器を選び、土を流し込み、石と苔を配置した。
私が選んだ器は構造上、勾配が出来にくく、平たい印象になりがちだそうだ。
苔は選び放題。
しかしこの器は乾燥しやすく、選べる苔も限られるらしい。私が使えるのは芝生みたいな苔のみだった。
それをひたすら埋め込むと、確かにただの平地になりつつあった。
どうしたもんかと頭を悩ませていると、講師の先生から救いの手が。
「高さ出しましょか。これなんてどうですか?インパクト出ません?」
苔のケースとは別のところから、高さのある葉っぱを持ってきてくれた。手のひらをパッと開けたような、パキッとした緑の葉っぱ。
奥にさすだけでも印象が変わりますよ、と言われ、早速埋め込んでみるとばちっとハマった。
数週間後、肝心の葉が枯れ始めた。
一枚、また一枚と葉が落ちる。
でも高さを出している部分は生き残っているから大丈夫。まだ高い。
そう自分に言い聞かせた。
更に数週間。
とうとう全ての葉が枯れそうだ。
辛うじて繋がっている葉も見るからに余力わずか。落ちるのも時間の問題だろう。
苔は環境が変わると一度枯れるかもしれないけど、水をあげ続けていれば、その住環境に合わせて生きられる苔ができてくるらしい。
でもこの葉は到底苔には見えない。
「葉のような 苔」と調べても出てこなかった。
高さが無くなった後の、この作品の行方を考えてみる。平地として生かすのか、新たな高さを取り入れるのか。
しかし苔、そして自然についてあまりにも無知な私は、いつまで経っても考えがまとまらない。
そのまま考えることを辞めてしまって数週間後。
とうとう枯れてしまった。
高さが無くなってしまった。
引き抜いてしまおうかと少し引っ張ってみたけれど、思いの外しっかりと根付いていてスッと抜けなかった。
これは抜いた方がいいのか、抜くべきではないのか。正解が分からず、迷いが生じて判断を下す勇気が出ない。
昔大学の軽音楽部の先輩が、ギターに「無知の知」と掘っていたのを思い出す。
無知であることは罪深い。
そして無知であることを知った上で、考えることを再び辞めようとしている自分は呆れるくらい罪深い。
そんな救いようの無い自分の思考回路にとことんうんざりとした、日曜昼下がりの話です。