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恵方巻きを食べられなかった話
2021年の節分は2月2日。
節分が前倒しになるなんて聞いたことがないけれど、今年はそういうものらしい。
思えばうちの実家は比較的年中行事が好きだった。
節分には恵方巻きを食べ、豆も数え年プラス1粒をきちんと数えて食べていた。80過ぎの祖母は80数粒律儀に食べていたし、7歳の犬には9粒与えていた。
今年は夫と2人で迎える節分。
豆はいつの間にか選択肢から消えていたけど、恵方巻きは食べる予定をしていた。
今日は家の近くのお寿司屋さんが早朝から恵方巻きを売っていた。朝早くからお疲れ様です、でも私これから出勤なんです、帰りに買いますと頭の中で呟きながら横を通り過ぎた。
退勤し、最寄り駅まで帰ってきた。
お寿司屋さんには恵方巻きを買い求める行列ができていた。
並んでるし、まあ近くのスーパーで買って帰ればいいかと、お寿司屋さんで買うのをやめた。
近くのスーパーは、イベントごとの食材には力を入れている。
クリスマスにはチキンやピザ、大晦日には年越し蕎麦用の天ぷらが惣菜コーナーに山盛り積まれているし、仕事終わりに行ってもそれらは沢山残っていた。
だから恵方巻きも山積みされていると、信じて疑わなかった。
スーパーに着いた。
売っていない。
イワシは山ほど積んであるのに、恵方巻きは一つもない。めげずにスーパー内を一周するも見当たらない。
次第におじさんが恵方巻きのPOPを片付け始めた。こうなったらもう諦めるしかない。
困った。
恵方巻きを今日の献立のメインにしていたからだ。
でも無いものは無いのだから、取り敢えず何かしら作れそうな食材だけ買ってスーパーを後にした。取り敢えず、保険として。
続いてセブンイレブンに向かった。ここは勝算があった。
だって道ゆくセブンイレブンには恵方巻き販売中ののぼりがデカデカと掲げられていたから。CMだってやっていたから。
クリスマスには売り切れないほどのチキンを店前で遅い時間まで売っているし、毎年恵方巻きで大量の廃棄が出ると問題になっているのを聞いたことがあったから。
セブンイレブンに着いた。
売っていなかった。
いやいやいや、廃棄するほどあるんと違うの。と店内をさりげなく見渡したが、やはり無かった。
レジ前に乱雑に積み重なり纏められたカゴやPOPが目に入った。どうやらこちらも売り切れていたようだ。
ここで私の恵方巻きを買うというミッションが遂行されることなく終わりを告げた。
家に着いた。
夫に恵方巻きが買えなかったことを伝えた。
特に残念がってはいなかった。そういえば、私も食べられないことに関しては特に残念ではなかった。何の未練もない。
私はただ、節分に恵方巻きを食べるという事に執着していただけだった。
それからはいつも通り、簡単な料理を作って食べた。我々夫婦が崇拝している山本ゆりさんのレンジレシピ。今日も安定に美味だった。
幸福な夕飯だった。
今回の反省点は2つ。
*買いたいものは見つけた時点で買っておく
*他の献立も念の為考えておく
次何か行事があれば気を付けようと思う。
そういえば、恵方巻きは決められた方角に向かって一言も喋らず完食するという決まりがある。
しかし私は、決められた方角に向かって、笑いながら恵方巻きを完食するのが正しい方法だと思っていた。
大学時代、周りにこの話をしても誰も共感してもらえなかった。うちの実家だけだった。
ある日、母に「恵方巻きみんな黙って食べるんやって。笑いながら食べへんねんて。」と伝えると、「何それ。」と返された。
私が信じてきた作法は、一体誰に教わったのだろうか。