仕事でのTシャツ制作の話【2010年代のUnityイベントマネージャー回顧録 vol.6】
ここまでUnite関連の話ばっかりになってきたので、今回はBtoBのテック企業でのTシャツ制作についてまとめて話そうと思います。大手企業からベンチャーまで、ブース出展やイベント主催を行うマーケティング担当の方などの参考になれば幸いです。
前置き
僕が所属していたUnity Japanではゲーム開発会社にライセンス販売やサービス提供、技術サポート等を展開していくという業務の性質上、BtoBのミドルウェア企業としてゲーム系のイベントにブース出展する機会が多くありました。
ブースでアテンドするスタッフは基本的にUnity Japanの社員なので、スタッフ用のTシャツを用意して「このヒト達がスタッフですよ」とわかるようにするわけです。こうしたブース出展活動ではよく行われますね。
UnityはUniteという大きなカンファレンスを毎年主催していたので、そのタイミングでイベントロゴの入ったスタッフ用のTシャツを作ることが多く、それをスタッフ用Tシャツとして流用していました。
そういう機会がなければ、普通は会社ロゴの入ったシンプルなTシャツをストックしておいて使っていくのが一般的だと思います。
その他、無料配布用、販売用、アンケートプレゼント用などの用途でTシャツ制作はちょくちょく行いました。無料配布は太っ腹だな~と思うかもしれませんが、単価は1500~2000円前後になるので100枚でも15~20万円程度とそこまで高額にはならないです。
Tシャツの型番
Tシャツは多数の業者さんに制作を依頼できますが、ロゴを入れるために使われる無地のTシャツはだいたいどの業者でもメーカー、型番が決まっています。業者ごとの違いは型番や色・サイズごとの在庫数やプリント方法などですが、正直大きな違いはありません。
僕がよくお世話になっていた業者さんはプラスワンインターナショナルさんです。シャツのサンプル取り寄せも対応してもらえますが、各地に店舗があり、そこでロゴを入れるためのTシャツやグッズを実際に手に取って確認できるのが良かったです。僕が何度か訪問した秋葉原の店舗は2020年に閉鎖されてしまったようですが、こうした店舗が身近にある業者さんを探すのもいいですね。
僕が2019年頃から好んで発注していた型番はユナイテッドアスレの5088のドライシルキータッチTシャツです。ドライタイプの中でもサラサラしていてシワになりにくく、乾燥機にも強いです。欠点としては、性質上、上品なものではないのと、人によっては吸汗素材ゆえのニオイが気になるという点です。
2016~2018年頃は4.1オンスのユナイテッドアスレ5900-01も使っていました。こちらの方がカラーが豊富です。
定番は5.6オンスのヘビーウェイトTシャツ(ユナイテッドアスレの5001)で、初期の頃は発注していたのですが重くてシワになりやすく、乾燥すると縮みやすいので、上記のドライ系に移っていきました。ただ、世の中的にはヘビーウェイトTシャツやさらに分厚いエレファントTシャツを好む方もいるみたいです。
個人的には4.0-4.8オンスくらいのペラっとした薄手の綿Tシャツが好みなのですが、やはり乾燥をかけると縮んでしまうし、人によっては透けが気になるという方もいます。
質のいいTシャツだと店舗を訪れて検討した際に見つけたトラスのOGB-910(のナチュラルカラー)が良かったです。SYNC 2022で販売したUnity Tシャツやサポーター特典の刺繍入りTシャツはリッチなものにしようということでこれを使いました。
また、型番は忘れてしまったのですが女性用スタッフのための女性モデルのスタッフTシャツは社内で喜ばれました。定番品とはシルエットが違うんですよね。僕はあまり吟味したことがないのでどれがいいかよくわからないので、女性スタッフに選定をお願いしました(だからメーカーも型番も忘れてます…すみません)。予算の制約で難しいケースが多いんですが、こういうところの配慮が大事なんだな~と勉強になりました。
Tシャツの色
色々試しましたが、黒・グレー系またはネイビー系が無難かつ万能です。模様の入ったヘザー◯◯やミックスグレー、アッシュ等も使いやすいです。白や薄い色は透けが気になってしまう場合があるので注意が必要です。
用途がスタッフTシャツで、スタッフとして目立たせたい・差別化したい場合はビビッドなカラーをチョイスしますが、販売用と違って「スタッフは着用しなければならない」シャツなので、ピンクやパープル、イエローなどの尖った色は敬遠されました(とあるエンジニアの方にピンクだけはやめてくれと言われたことがありますw)。
彩度を抑えたカラーが好まれる傾向でしたが、まあこのへんはコーポレートカラーとかイベントのテーマカラー、チーム、業界の雰囲気で決める話になってくると思います。
プリント方式
シルクスクリーン、インクジェット、転写
単色デザインはシルクスクリーン、多色デザインはインクジェットが一般的です。鮮やかなキャラクターものや全面プリントだと昇華転写やデジタル転写が使われます。このへんは調べると各業者さんの解説ページがすぐ出てくると思います。
刺繍
高級感を出す(販売する)なら刺繍も選択肢に入ってきます。ただ、糸の色はデジタルなカラーコードで指定できない(指定色に近い色の糸が使われる)のと、複雑な形状や細い線が含まれるデザインなどは発注先によって仕上がりのクオリティに差が出るので、事前のテスト制作は必須といえます。
Unityのロゴはまさに複雑な形状だったので、発注先によっては仕上がりが粗くなってしまったことがありました。刺繍に使われる機械によって精度が決まるみたいです。
抜染プリント
マイナーなものだと抜染プリントというのがあって、生地の色を抜いて単色デザインを表現する手法で、シャツの上にインクや塗料が付着しないので好みなのですが、仕上がりの色合いがわからないのでテスト必須なのと、取り扱う業者が少ないのが難点です。ネイビー系の色だと薄茶色っぽい仕上がりになってヴィンテージ風に決まりました(画像は見つからず…)。
お土産やイベント配布Tシャツを参考に
Tシャツは種類が多いので、観光地のお土産Tシャツやイベント等での物販、スポーツイベントで参加者に配布されるTシャツを参考にすることが多かったです。
2000~3000円くらいのお土産Tシャツのタグを見ると、上に挙げたユナイテッドアスレやプリントスター、トラス、ギルダン等の大量生産Tシャツであることが多いので、タグに書かれた型番で検索をかけると該当の商品が見つかります。
ちなみに冒頭で挙げた5088 ドライシルキータッチTシャツは、トレイルランニングの大会で販売されていたものを使ってみたら良かったので、スタッフTシャツとして発注するようになりました。
販売用・無料配布用Tシャツのサイズ別数量
制作側を悩ませるのがサイズ別の発注数量ですが、おおよそ下記の比率で作成していました。大は小を兼ねる&少し大きめのものを希望する方が多い傾向があるので、やや大きめ寄りにバランスを取っています。
S:5%
M:40%
L:35%
XL:14%
XXL:4%
XXXL:2%
大規模イベントで余ったTシャツの行方
またUniteの裏話になってしまうのですが……、あのイベントはユニーク来場者数が1500~2000名前後でした。しかし参加者ピッタリにそれぞれの適切なサイズが行き渡るのはほぼ不可能なので、無料配布用のTシャツは(予算を抑えるために)余りを出さないよう先着順とするか、多めに作って全員に行き渡るのを優先するかは両方やりましたが、前者のパターンだと不満が出るのは必至なので注意したほうがいいです。
サイズ別数量のバランスも難しいんですが、Tシャツをもらいに来ない人もいる(欠席者を含む)ので、2000名規模になるとそうしたバラつきが読み切れないんですよね……。参加者のイベント申込時にTシャツのサイズをフォーム上で回答してもらうという案もありましたが、社員分のチケットをまとめ買いするビジネス購入者も多いし、まとめ買いされたチケットを使って参加申し込みが完了するのはイベント直前が多くてTシャツの発注締め切り(納品日の2~3週間前)より後だからやっぱり正確な数が決められない。
もう数は覚えてませんが、確か参加見込み数の110%くらいの数量を制作して、イベント2日目の昼頃までに80%くらいが一次消化されたような覚えがあります(だいぶうろ覚え)。しかし、残り30%でも600着くらいになりますから、特大段ボール4~5箱分くらいになります。
余りは持ち帰って別のビジネスの機会に配布するのが企業活動としては普通ではありますが、この数になると在庫を社内スペースや倉庫サービスで抱えるのも大変でして……。
2019では「スポンサーやゲスト関係者はDAY2にTシャツ引き換え」というルールにして一般参加者向けの分を確保しつつ、イベント後半(DAY2の昼頃)に館内アナウンスで「Tシャツの在庫が余ってるので、講演者・出展者の皆様や2枚目を希望する方にも自由にあげます」のように呼びかけて(事前に確保しておいた予備分を除き)ほぼ全てを消化しました。ワイワイ感は一瞬出せましたがどうなんでしょうねw
全員配布のグッズはサイズが関係なく、できれば小さいもの(ステッカー、ボールペン、トートバッグ等)にすべきではあるのですが、オフィス用の仕事着から部屋着まで万人向けに使ってもらえる点を優先して予算を使ってました(ちなみにステッカー、ボールペン、サコッシュも全員配布であげてます。太っ腹の会社だな~)。
超今更ですが、参加者としてUnityの(イベント主催者のロゴが入った)Tシャツがもらえるというのはどうなんでしょうかねぇ。僕は愛着もあったので部屋着・寝間着から仕事着まで使い倒してましたし、参加者に概ね好評であったのも事実なんですが、ブランドマーケティングとして成功の度合いを数値化できるかと言われると難しいものがあります。
単価1000~1500円の予算で制作できる・万人向けで・日常的に使ってもらうことでブランドを身近に感じてもらえるグッズ、何かいいものがあれば教えていただきたいところですw
また、ちょっと古臭い言い方をしますが……、スタッフ用のTシャツも社内の結束力とか団結力を高める効果が確かにあったと思います。社員が自分の所属している会社やチーム、ロゴにリスペクトを持っている、というのが前提ですけどね。海外から来日したスタッフやお客さんにあげる機会もあり、よく喜ばれました。
多くの会社では末端の社員が自社のロゴを気軽に扱えないことが多いのですが、自分の所属する組織に敬意や誇りを持つというのは結構大事なことだと思うので、もうちょっと柔軟に考えてもいいんじゃないかなと思います。また、個人サークルとか仲良しチームみたいなグループでオリジナルのロゴをつくって少額でやるのも面白いんじゃないでしょうか。
(記事協力:谷川 敬章)
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