ずっと、やらかしたことのある人に憧れている
崖っぷちに立たされた時、その崖を勢いよく踏み外せる人はどのくらいいるのだろうか?
たとえその崖の下が天国だろうと地獄だろうと、踏み外せる人はとても簡単に踏み外してみせるだろうし、踏み外せない人は一生踏み外せないだろう。
私はもちろん踏み外せない側の人間だ。これは、踏み外さずその場にとどまり踏ん張る人が情けない、とかそういう話ではない。それはそれで素晴らしい努力だとわかっている。
ただ、これは「私は、踏み外せる側の人間に強烈に憧れている」という話だ。
就活において自己分析を進める中で、最初に気がついたことは、「私には失敗経験がほとんどない」ということだった。
確かに、中学受験で第一志望校に落ちたこと、大学在学中に留学に行けなかったことなどは、私にとって失敗なのかもしれない。でも、なんといえばいいか、誰が聞いても「それはやらかしちゃったね」というような失敗経験は一つも思い浮かばなかった。(このような経験を持つ人の方が少ない気がするが・・・)
それはそうだ。私は、親の言うとおりに中学受験をし、私立の中高一貫の女子校に入学した。校則が信じられないほど厳しい中で、何の疑問も抱かず、真面目に勉強をした。そして、指定校推薦で大学へ入学。大学でも真面目に勉強、馬鹿みたいに高いGPAをとりよくわからない表彰を受ける。ほどよく親に褒められながら育った。
私は「やらかしたこと」がなかった。脱線したことも逸脱したこともなかった。
でも、そんな私は「やらかしちゃったことのある人」に憧れている。
新卒就活、私の中ではもうとっくに崖っぷちに立たされている状況といってもいい。
内定は無論、面接経験いまだゼロ。
これは、私の凡庸な人生の中で、もっともやらかしちゃっている状況といえる。
しかしまだやらかしきれていない。なぜなら、この状況を誰に言っても、「いやまだ大丈夫だよ!」「諦めないで取り組んでれば卒業までには絶対見つかるよ!」と言われてしまうから。
「お前はまだ崖っぷちに留まっていられるだろ、がんばれるだろ、だからまだ大丈夫だよ」ということだ。
ヒョイと誰かが私の背中を押してくれたらどれだけ楽だろうか。他者によって強制的に崖から落としてもらえれば、私は自由になれるのではないか。でもこれはやっぱり甘えなのではないか。色々な思考が頭の中を駆け巡っている。
崖の下の世界には私のやりたいことがたくさんある。就活をやめて、卒業と同時に海外にワーホリへ行ってみる、恋焦がれている会社でアルバイトをし、社員を目指す、花屋のアルバイトを続ける・・・小さなことから大きなことまでやりたいことはまだまだある。
それでも私は飛び降りる勇気がなく、いまだに崖っぷちに立ち続けている。「真面目だけど報われず苦しむ就活生」のふりをして生きている。
踏み外してみたい。でもこわい。
ただ、ずっとそう思っている。
最近は、周りの雰囲気や圧に呑まれすぎて忘れてしまっていたけれど、就活を始めた頃にビリビリと感じていた、「ここが人生の分かれ道」という感覚。私が憧れてきたような人になるためには、ここで大胆な決断をする必要があるんだな、という感覚。
この感覚が正しいのかどうかさえもうわからない。
でもきっと、どの道を選択しようと、その道を選択したからこそ見える景色というものがあって、それは他の道を選択していたら決してみることのできない景色なのだろう。
景色の色をどう染めるのかは、決断を下した自分次第なのだ。
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