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日本語文法の関門の一つ。【自動詞・他動詞】どう教えていますか?


日本語学習者にとって難しい文法事項


ゼロから日本語を学ぶ学習者にとって、いくつもの関門が立ちはだかります。


先ずは、何といっても【五十音】
平仮名と片仮名を合わせたら90を超える…

気軽に日本語を始めて、半数くらいの学習者がそこで消えていきます(大学などで学んでいる場合)。


次は【動詞の変化】ではないでしょうか。「ます形」から「て形」を学び、「ない形」、そして「辞書形」。学習者は既にお腹いっぱいなのに、まだまだ続く。永遠かのように。


そして次がこの【自動詞・他動詞】ではないでしょうか。
自動詞と他動詞が難しいのと思うのは、学習者だけじゃありません。教える我々教師も四苦八苦するところです。


先生によっても、教科書によっても、かなりの違いが見られます。




【自動詞・他動詞】の一般的な解説


【自動詞・他動詞】の解説でよく耳にするのが、簡単にまとめると以下の言い方かなと思います。

「他動詞」は人がする。
「自動詞」は自動で・自然に そうなること。

それで納得できそうなのもあります。
例を挙げると、


例1:
(母が)ドアを開けます。   【他動詞】=人がする
    ドアが開きます。   【自動詞】=自動でそうなる

ここで多くの先生が、
「≪ドアが開く≫というのは、ドアが自動ドアだと思ってください。」
という説明をしています。


まあ、これはそういう場合もありそうですね。


例2:
(母が)木を倒します。   【他動詞】=人がする
    木が倒れます。   【自動詞】=自然にそうなる


この場合、
「≪木が倒れる≫というのは、例えば≪台風で木が倒れる≫など、のように何かの原因があって、自然にそうなったときに使います。」
という解説が多いです。

まあまあ、そんなこともあるだろう。

上記の説明は理解できますが、
全ての【自動詞】が【自分で、自動で、自然にそうなる】
とだけの解説でいいのでしょうか。



【自動詞・他動詞】のペアの中で解説が難しいもの


一方で、さっきの解説だと「んん???」てなるものも結構あります。


上の解説で苦しい【自動詞・他動詞】の例を挙げると、


例3:
(母が)お湯を沸かします。 【他動詞】=人がする   
    お湯が沸きます。  【自動詞】=自動でそうなる??!!


例4:
(母が)車を停める。    【他動詞】=人がする
    車が停まる。    【自動詞】=自動でそうなる??!!


上記の【車が停まる】は「自動運転だよー。」ということなのでしょうか?いや、自動運転の車が登場する前からこの文法は使われていましたよね。



もっとしっくり来る【自動詞・他動詞】の解説



私の解説は、以下です。

他動詞【全体(動作主を含める)】
自動詞【部分(動作主を含めない)】



絵のセンス…


さっきも例として出しましたが、

例2:
(母が)木を倒します。   【他動詞】=人がする    
    木が倒れます。   【自動詞】=自然にそうなる



【木が倒れる】というのは、
『台風で』『地震で』のように人以外がやった場合でしか使えないのでしょうか???


そうではないのです!
「人の行為」によるものでも使えるんです!

詳しく説明すると、

「(母が)木を倒す」=他動詞

【動作主】である【人】も含めて全体を見ている場合に使います。
(赤い丸で囲ってあるところ=全体)

他動詞


もう一方の【自動詞】はどうでしょうか。

「木が倒れる」=自動詞

【動作主】の【人】は含めずに、【木】だけに注目している場合に使います。
(赤い丸で囲ってあるところ=部分)

自動詞



図を見てもわかるように、この二つは同じ状況です。

ただ、注目しているのが【全体】なのか【部分】なのか、が異なります。


つまり、

注目しているところが、
動作主である人を含めた【全体】の場合は他動詞を使う。
動作主である人を含めない【部分】の場合は自動詞を使う。

と言えます。



もう一つ別の例を見てみましょう。

例4:
(母が)車を停める。    【他動詞】=人がする    
    車が停まる。    【自動詞】=自動でそうなる??!!

「自然に、自分で」というような説明では、理解しにくい

と言いました。


これも
【全体(動作主を含める)】
【部分(車だけに注目し、動作主を含めない)】だったら理解できます。


【(人が)車を止める=他動詞】
【    車が止まる=自動詞】
これらは同じ一つの場面なのです。

それを
【(人が)車を止める『全体』】を見ているのか、
【    車が止まる『部分』】を見ているのか、


の違いなのです。



いかがでしたでしょうか。

説明の1つに加えていただけると、嬉しいです!



注:今回は「自動詞」と「他動詞」の理解の仕方についての説明でした。
ですので、例えば「木が倒れた」のような自動詞の過去形を使って【行為の後の結果】を表したり、「木が倒れている」のような自動詞の〰ているを使って【ものの状態】を表したり、という文法事項までは含みませんでした。



これらについては、また今後解説していきます!


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