新たな「読書」への導線が誕生した
「ReadHub」という、「本」を中核に置いた新たなSNSサービスが始まる。
現在、それを急ピッチで開発しているのは、慶応SFC2年生になったばかりの石井君と青木君。今年19歳になる学生の二人である。
ちょっとした御縁からリサーチインタビューを受け、二人の熱い想いを聞くこともできた。
わたしなりの解釈で、このサービスのこれまでに感じたことのないオモシロさを言葉にしてみようと思う。
■Read(読む)とは、「未来を示唆する」こと
ReadHubときいて、まずイメージしたのは「未来的」という単語。
単純に訳せばReadは「読む」、Hubは「中心」で、「読む中心」となるが、
実は「読む」という行為は、未来を示唆する人間ならではの活動でもある。
「未来を読む」「read a future」と言えば、現在自分が有している知識から未来を読み解く、予見することである。
また、本を読むときも、1ページ先、いや、1行先さえもが「未来」であるし、その行を読んで新たな知識を得た瞬間から、これまで知らなかった新たな情報や価値観が加わり、1秒過去で自分が描いていた未来とは違う未来が脳内にリアルタイム構築されていく。
■Hub(繋がりの中心)が脳内で進化するとどうなるか
前述の魅力に(無意識に)気付いている人は、能動的に自らお目当ての本を探すか、他人からの勧めという機会を活かして、次から次へと本を読み、脳内のシナプスを新たなニューロンでつなぎ合わせまくっている。
この、「シナプス」が「Hub」に相当する。
メッシュ状に情報と情報が結び付きあった結果生まれる「気づき」や「閃き」によって、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンが大量発生し、ますますやる気が出るわけだ。
これら幸せホルモンたちの導きにより、読書の先の未来に描いた夢や目標が達成しやすくなるであろうことは、想像しやすい。
■石井君、青木君は、あることに気づいた
まだ学生の彼らは、この先成人し、どのように社会に貢献する仕事を探すか、そしてどのように自身の夢を実現させるかを、「本」という知識のつめこまれたコンテンツから得ようとしていた。
しかし、「本はたくさんありすぎて、何を読めばよいのか、それを何で判断すれば良いのかがわからない」状態だった。
Amazonレビューなどもあるが、どのような人がどのような思いで評価したのかまではわからない。
有名書評家のレビューもあるが、世代的にもジャンル的にも彼らの年代に適合したものを見つけ出すのは苦労を要する。
また、マーケティングの進歩は、インターネットの発展により加速度を増したが、同時に多くの「ノイズ」を生んだ。
データマイニングにより、刺さるタイトル、キャッチーなコピーが溢れかえり、それがデジタルマーケティングにより、ニクいタイミングでスマホ画面にリコメンドされる。
タイトル買いで内容がプアな本をついポチってしまえば、時間とお金がムダになる。
そればかりか、まだ前述のような読書の魅力を感じる次元に到達できていない若者が読書のエントリー段階でこのような本に出会ってしまうと、
「読書なんて、つまらない」
「お金に余裕もないのに、買って損した!本は無駄!」
と思い込んでしまう危険性もあるのだ。
とにかく売れれば良い、瞬間でもランキングトップになればハクがつく。そんなリテラシーの低い、自らマーケットを狭め、業界の質を下げる罪深き出版社や出版コンサルタントも後を絶たない。
本選びの経験則がついている大人はある程度その人なりのリサーチと嗅覚でフィルタリングできるが、彼らの話をきいて、学生~平成生まれの若者には酷な状況なのかもしれない、ということに気づけた。言葉を換えれば、書籍業界の愚かなマーケティングの犠牲者、と言えなくもないのかもしれない。
「求めるような本に、無駄なく最短経路でたどり着ける手段がない!」
これが彼らの気づきであり、だから、自分たちで作っちゃおう!という行動に移ったわけだ。とても腑に落ちた。
■「実名制の本のレビューシェアプラットフォーム」
「求めるような本に、最短経路でたどり着ける手段がない!」という彼らの課題解決のために導き出した答えは、
「実名制の本のレビューシェアプラットフォームの構築」だった。
得体の知れた、もっと身近な(書評家や有名経営者等ではない)普通の大人で、「同質性の高い」人々のレビューから、自分たちにとって有益な本にたどり着くための「しかけ」をひらめいたのである。
「同質性が高い」というのがとても重要なキーファクターである。
入社1年目でBtoB系のマーケティング部に配属された若者が、コトラーやポーターのマーケティング理論本を手にとっても頭から湯気が出るだろうし(いつかは読んでほしいが)、
BtoCのカリスママーケッターの指南書を読んでもカンチガイするだけかもしれない。
しかし、他社で類似の仕事をしてそれなりな成果を出し認められたポジションで活躍するちょっと先行くちょっと先輩、
的なビジネスマンがお勧めする本であれば、読めばすぐドーパミンがどくどく、セロトニンがもりもり溢れ出すこと間違いなしだ。
■「読書への導線」を生み出すReadHub
日本は、スマートフォンの台頭により、読書量の減少は顕著になった。
企業の育成現場でも、若者の「本離れ」が嘆かれている。
ただ、前述のように、「読書=ドーパミン噴出」を体験している人にとっては、読書は「努力」ではなく「快楽」に近い。
「快楽」を感じながら本を読むことで、未来を描き、自らの夢に近づくことができたなら、どんなに幸せだろう?
そんな若者が増えたら、日本のインテリジェンスは大きく底上げされるに違いない。
ReadHubは、本というコンテンツを前に迷える若者たちを、良質な読書へと導く社会的ソリューションとなる可能性を秘めている。
■導かれた空間には、自分にマッチした「羅針盤」たちがいる
ノイズがフィルタリングされたReadHubという空間には、ちょっと先ゆく人生の先輩(レビュー投稿者)たちがいる。しかも、「マーケティング」や「データサイエンス」といったカテゴリー別に、より同質性の高い、自分の目指す分野にむけた、自己研鑽方法の道しるべとなる人々がいて、しかも、繋がり、会話することができる。
さらに、だ。
その羅針盤的先輩たち自身も、また新たな本を読み、成長し続け、それがまたアウトプットされ続けるのだ!これはすごいことだ。
点ではなく線形。月夜に山道を迷わぬよう、マイルストーンを置き続けてくれる。
つまり、先ゆく先輩たちの脳を借りて無駄を低減させ、その先輩たちが糧とした良書を通して人生のプロセス設計を最適化しつづけることができる。
わたしが学生のころにこのサービスがあったなら、飛びついていたことだろう。
■イメージの外側に飛び出しそうなコミュニティデザイン
妄想はとまらない。きっとこのSNSは、想像をはるかに超えてくるだろう。
ここまでは「若者層」の問題解決としての側面を書いてきたが、レビューを書く主体である30代以降のオトナは、これに関わることでどう「変容」するだろうか?
たとえば、とても感銘を受けた本があっても、メンター、教祖的存在でもなければ、自社の直属の部下に本を薦めると「押しつけ」っぽくなる。
部下のためによかれと思って薦めても、あまりに距離感が近すぎると、
「上司、先輩からの読書の宿題、うざい」となるシーンは、多くのビジネスマンが経験済みだろう(笑)
しかし、ReadHubのようなコミュニティでレビューを投稿することで、面識もなかった若者とつながり、おかげさまでとても為になり、こんな企業に就職が決まりました!/この本のおかげで仕事でこんな結果が出せました!などと感謝されたら?
※ReadHubは投稿者へのインセンティブ機能も検討中とか。
自分だけの日の当たらない引出しにしまい込んでいた本の感想をアウトプットしたことによって、自分の経験が若者に役立ち、若者の未来を明るく照らすことができたとしたら・・味わったことのない感動が押し寄せてこないだろうか?(人は誰しも年を重ねれば、教育欲が湧いてくるものだ。)
むしろ若者からの感謝に対してこちらも感謝できる、感謝のリレーが生まれるかもしれない。
もちろん、人生の先輩としての「アウトプット力」も鍛えられるだろう。
いかに相手目線で分かりやすくリコメンドできるか。血の通った、熱意と感情のある人間にしかできない、AIやデジタルマーケティングではまだ代替できない領域だ。
■世代を越えた、まったく新たな「繋がり」と「文化」の協創
「本」を中心としたSNS「ReadHub」は、テーマが絞られているぶん、デジタル空間からアナログへ飛び出すのも他に比べて容易であると推測する。
・このスレッドについてのトークライブやろう!
・この本の仕事での活かし方について話し合おう!飲もう!
こんな感じで、オフ会をする議題が濃いため、意図も多くを語らずとも誰もが納得しやすいだろう。そして、ReadHub上で語ってきた人同士が集まるわけであるから、スピーカーやファシリテーターがいなくても、「普通に会話」するだけでその集いは成り立つ。
本、そして、その本を推薦してくれたリアルな先輩ビジネスマン、若手の他社のビジネスマンたちがオフラインで出会い、交流を深められる世界では、いったい、どんな文化が生まれるだろう?
団塊世代、バブル世代、団塊ジュニア世代、ゆとり世代、さまざまな世代表現があるが、そのような世代間で、最適な交流の場というものは、これまであまりなかったように思う。
あったとしても、それは行動力ある誰かの意志と努力によって組織化され、そこに入るにも敷居が高いものが大半であったように感じる。(ボランティアや趣味の世界など)
ReadHubのコミュニティデザインは、『世代の違いこそが価値』であり、敷居は皆無。レビュー投稿側世代は、ありのままの自分の経験と感想を語ることこそが、『信用』につながる。
所属企業内、関わる事業内のみでの信用ではなく、それを飛びだした世界で若者に貢献し、信用貯金ができるしくみだ。そんな意識をもちながら読書を継続してReadHubにアウトプットしつづければ、自身の読書の質も高まるだろうし、人生100年時代の残りの時間の輝きも増し、若者を導いているはずが、想像もしなかった未来に導かれることになるかもしれない。
そしてそこから得られるさまざまな体験や刺激は、必ずや本業にも活きてくるだろう。
ワクワクが止まらない!
■結果、三方良し!
売り手良し、買い手良し、世間良し!
近江商人の成功するビジネスモデルの条件をクリアできている。
石井君、青木君にエールを贈りたい。
若い若いというと上から目線ぽいので避けたいのだが(笑)、彼らのパッションと秀逸なプレゼンテーションの先に、こんなとてつもない未来、世界観をイメージできてしまった妄想オヤジの戯言?予言?として、ここに書き残しておこう。
期待してるよぉ~ん!(≧∇≦)b