デイサービスのネガティブイメージを払拭。地方での集客課題を一点突破した運用型テレビCM
皆さんがもっている「テレビCM」のイメージはどんなものですか?
大企業が大きな費用を投じて行なう施策だとか、費用が高い割にちゃんと結果につながっているかがわかりにくいだとか……そんなイメージをおもちの方が多いのではないでしょうか。
そんなテレビCMにチャレンジしたのが、全国でデイサービス施設を228店舗展開する株式会社レコードブック(※2024年7月時点)。機能訓練を中心とした「リハビリ型デイサービス」を提供しています。
レコードブック社も、最初はテレビCMに懐疑的だったといいますが、出稿後、想像を超える効果を実感でき、現在はさらにエリアを広げて取り組もうとされています。
今回は、レコードブック社 代表取締役社長の林 岳史さんと取締役副社長の赤池 直哉さんに、率直な感想から今後の展開までを伺いました。
▸本事例はリリース発信も行なっています📺(2024/10/30)
全国展開のリハビリ型デイサービス事業
全国に228店舗。8割がフランチャイズ
──── 最初に、レコードブックさんのご紹介をお願いします!
赤池:私たちレコードブックは、リハビリ型のデイサービス事業を行なっている会社です。
全国に228店舗を展開しています。内訳は、直営店が25店舗、名古屋鉄道さんとの合弁会社である名鉄ライフサポートが運営する名鉄レコードブックが21店舗、残りはフランチャイズ店となっています。
会社自体は2024年4月に株式会社インターネットインフィニティーから分社化しました。経営の意思決定のスピードや今後の展開をより加速させていきたいと考えています。
「身体・脳・社会参加」を重視したプログラム
──── リハビリ型デイサービス事業について、詳しく教えてください!
赤池:介護保険制度の地域密着型通所介護サービスを提供しており、対象者は、要介護認定者のうち、要支援から軽度の要介護の方々です。(※)
「自分の力で元気に生活していきたい」「まだまだやりたいこともたくさんある」といった比較的アクティブな方々に、「いつまでもこの生活を続けていきたい」と思って通っていただいています。
林:私たちは、何歳になっても元気でいるために「身体・脳・社会参加」の三つが大切だと考えています。
私たちが提供するリハビリ型デイサービスでは、軽い運動や脳トレ、コミュニケーションのプログラムを行なっています。午前・午後の二部制で、それぞれ18名の方にご利用いただいています。
──── 「デイサービス」というと、一日中施設で過ごすイメージがありました。
林:おっしゃる通りだと思います。私たちは10年以上この事業を続けてきましたが、サービス認知度が低いのが現状です。
「デイサービス」という言葉自体はよく知られており、真っ先にイメージされるのは、施設で一日中過ごすタイプだと思います。利用者さんは送迎車に乗って施設に来て、お昼ご飯を食べたり、お風呂に入ったり、レクリエーションをしたりします。
レコードブックのように半日型で3時間運動をしっかりやっていただくようなタイプは、対象者である高齢者やその家族にもあまり知られていません。
赤池:高齢者のなかには、「デイサービス」という場所に対して、ネガティブなイメージをもたれている方もいらっしゃいます。「人のお世話にはなりたくない」「介護状態であることを認めたくない」といった理由からです。
レコードブックは、人生で初めて介護を受ける方がもつ「デイサービス」への不安を取り除き、ポジティブな気持ちになれる場所でありたいと思っています。
テレビCMの取り組み
地方での認知度向上が課題
──── たしかに、「デイサービス」という言葉を聞くと、ネガティブなイメージをもつ方もいるかもしれませんね……。そういったイメージを払拭し、レコードブックのサービス認知度を向上させたい、という思いが今回のテレビCMの取り組みの背景にあるのでしょうか?
赤池:そうです。特に地方で集客に苦戦しているフランチャイズ店からは「利用者を増やすのに苦労している」「なんとかして認知度を上げてほしい」という声が以前からあがっていました。
首都圏ではある程度の認知度を獲得できていたので集客やアプローチの方法は、どのエリアでも同じだと思っていたのですが、地方ではクチコミを増やしたり、営業をしたりしても結果に結びつきにくいところもありました。
──── なるほど……。地方での認知度向上という課題に対して、どうしてテレビCMに取り組むことに決められたのでしょうか?詳しく教えてください。
赤池:一般的に、デイサービス施設への利用申し込みは、ケアマネジャーさんからの紹介経由がほとんどです。
高齢者は要介護・要支援認定を受けると、ケアマネジャーさんにケアプランを作成してもらい、そこで数ある介護サービスのなかからデイサービス施設を選択することになります。なのでまずは、ケアマネジャーさんの選択肢にレコードブックがあることが重要なんですよね。
林:そのためには、ケアマネジャーさんに店舗の担当者から「face to face」でレコードブックの良さを伝えることが、もっとも効率的な営業手法だと思っていました。
ただ、地方には距離の問題がありました。移動に時間がかかってしまい効率的に訪問できず、十分な営業活動ができない、それで集客も苦戦する、といった状態だったんです。
なので、ケアマネジャーさんにレコードブックのサービスを知ってもらうために、何か良い方法はないかと考えていて。テレビCMであれば、動画で雰囲気を伝えられるのではないかと思い昨年の夏頃から検討を始めました。
──── なるほど。ケアマネジャーさんの認知度を向上させ、利用者の増加につなげたいと考えられたんですね。
林:ですが、私たちはテレビCMの世界についてはまったくの素人。業界的にも、テレビCMをしている事業者さんはあまりいませんでした。最初は「きっと、やけに高いのだろう……」という悪いイメージしかもっていませんでしたね。
業界事情や事業を理解し、チームで目線を合わせる
──── テレビCMの検討を始めて、私たちのチームを選んでくださったのはどうしてでしょうか?どのような経緯があったのか教えてください。
赤池:数社からお話を伺ったうえで、ソウルドアウトさんたちのチームにお願いすることに決めました。
ご提案に対していろいろと質問させていただくなかで、山田さんと藤原さんのコンビがいいなと思ったんですよね。正直なところ、広告会社に対して懐疑的な部分もありましたが(笑)、聞けば聞くほど、逃げずにしっかりやってくれる人たちだと感じたんです。
テレビCMは高いだけのイメージでしたが、費用対効果の説得力もかなりありましたね。選定に関わったメンバーの満場一致でお願いすることに決めました。
林:介護業界のサービスは、まったく知らない方にうまく伝えるのが難しいと、いつも感じるんですよね。致し方ないのですが……。わかったと言ってくれる方も多いのですが、深くお話ししていくと理解できていない方がほとんどで。
ですが、お二人は私たちのことを理解したいと思ってくださっている。寄り添ってくださっている姿勢を感じました。
山田・藤原:嬉しいです。ありがとうございます!
──── 具体的には、どのような点を評価してくださったのでしょうか?
林:例えば、先ほど「デイサービス」という言葉にはネガティブなイメージを抱きやすいと話しましたが、家族に高齢者がいない方からすると、まったくピンとこないと思うんです。
お二人は、店舗に見学に来てくださったり、ケアマネジャーさんへインタビューをしてくださったりして、当事者にしかわからない気持ちまで目線を合わせた提案をしてくださいました。
山田:ありがとうございます。
事業理解にはかなりの時間を費やしました。完璧に理解できているのかというと、そうではないのかもしれません。しかし、どこまで理解できているかで提案の内容は変わってくると思います。
藤原:今回は、レコードブックさんのサイト制作やパンフレット作製を中心にご支援されているオキーフさんにもご協力いただき、ご要望をまとめていただいたり、壁打ちやフィードバックをしていただいたりしながら、良い提案ができあがりました。
──── 今回はソウルドアウトだけではなく、博報堂DYグループで協働して取り組んだ事例ですよね!
藤原:そうです!今回の取り組みは、メディア投資によってスタートアップ企業の事業成長を支援するサービス「AaaS for startup」の枠組みでご支援させていただきました。
ソウルドアウトと博報堂DYメディアパートナーズ、Hakuhodo DY ONE、博報堂プロダクツの4社がタッグを組み、戦略立案から実行、改善までをワンストップで実施しました。各社が得意領域を活かし、大きな成果につながったと感じています。
ターゲットインサイトを押さえたクリエイティブ戦略とメディア戦略
──── では、実施したテレビCMの施策内容について教えてください!
藤原:テレビCMの目的は、レコードブックの利用者を増加させること。
テレビCMによる認知度向上をきっかけに、これまでの「デイサービス」のイメージを払拭し、ケアマネジャーや利用者の家族はもちろん、利用者自身がポジティブなエネルギーを感じてもらえるような興味を喚起し、利用者増加を実現できるよう戦略を立てました。
山田:この目的を達成するために、どのようなコミュニケーション戦略を取るべきなのか、骨子を固めてからクリエイティブ戦略、メディア戦略にも落とし込んでいきました。
──── なるほど、それではクリエイティブについてお伺いしたいです。どのようなことを考えながら作っていったのでしょうか?
藤原:レコードブックの特長を、ケアマネジャー、利用者、利用者の家族の三つの視点から伝えるクリエイティブを制作しました。
ケアマネジャーが利用者や家族に薦めたいと思えることが大切であり、利用者本人が抵抗なくポジティブな気持ちで通えること、家族にとっては安心して預けられることが大切です。
一般的なデイサービスのイメージとは違う、活気があって明るい雰囲気を映像で伝えます。
もともとの動画の絵コンテは12案あったみたいです(笑)。どの絵コンテも、ターゲットのインサイトを押さえたクリエイティブになっていたと思います。
──── それぞれのターゲットが、自分ごと化しやすいクリエイティブになっていたのではないでしょうか。テレビCMを出稿したのは年末年始を挟んだ一か月間でしたが、時期はどのように決定したのでしょうか?
藤原:実は、当初は10月から11月に出稿したいというお問い合わせをいただいていたんです。
ですが、テレビCMを見てもらいたいターゲットが利用者やその家族だということを踏まえると、地元に帰省して家族会議が開かれる年末年始のタイミングで出稿するのが最も効果が得られるのではないかと考えました。
赤池:せっかくやるなら早くやってみたいと思っていたんですよね。ですが、ご提案をいただいて納得感がありました。価格的にもリーズナブルだったこともあり、その時期の出稿を決めました。
──── 年末年始の家族会議が開かれるタイミングで……おもしろいですね!
藤原:あと、出稿エリアに関しても、当初のご希望とは違うエリアをご提案しました。もともとは福岡、北海道、宮城の3エリアをご希望されていましたが、しっかり効果を計測するために、店舗数が多く出稿コストも安い宮城県に絞って出稿することにしたんです。
また、出稿量はターゲット人口の80%へリーチできるよう、これまでの博報堂DYグループの実績から算出してご提案させていただきました。
圧倒的な認知を獲得
──── では、テレビCMの出稿の結果はいかがでしたか?
赤池:ケアマネジャーさんへの営業活動の際、レコードブックの自己紹介が不要になりました。
先ほどお話ししたとおり、利用者やその家族は、ケアマネジャーさんを通じてレコードブックを知るので、ケアマネジャーさんにレコードブックについて知っておいてもらう必要がありました。
なので、これまでは各店舗の営業担当である管理責任者(所長)がケアマネジャーさん一人ひとりに「レコードブックとはどんなサービスを提供しているのか」について地道に説明を行なっていたんです。それが、テレビCMの出稿後には必要なくなりました。
「レコードブックさん、知っているよ」と必ず言われるようになり、「レコードブックとは」という説明がいらなくなったんです。
林:映像を通して、レコードブックの雰囲気や良さをちゃんと伝えられたと思っています。
利用者やその家族にもレコードブックのイメージが頭のなかに残り、安心感をもってもらうことができました。なので、ケアマネジャーさんがレコードブックを薦めやすくなったと思います。
──── 利用者数の増加という当初の目的はいかがでしたか?
赤池:もちろん達成できていますし、経路が大きく変わりましたね。
これまではケアマネジャーさん経由の紹介だけでした。しかしテレビCMの出稿後には、利用される方やその家族が、店舗に直接お問い合わせをくださるようになりましたね。とても大きな変化です。
副次的効果も大きく、採用にも効果あり
──── クリエイティブ戦略、メディア戦略がビシッとはまり、良い成果につながったといえそうです。
赤池:そうですね。ほかにも、今回のテレビCMをきっかけに、いくつかのテレビ番組で取り上げていただいたんです。
今回のテレビCMによって利用者は増加しておりますが、短期的に見ると費用対効果が合っているわけではありません。ですが、こういった副次的な効果も合わせると、かなり大きな収穫があったように思います。
テレビCMから波及して様々な効果があることは大きな発見で、今後も私たちがテレビCMにチャレンジしてみたいと思う一つの要因になりました。
林:なんと、採用にも効果がありましたね。仙台市の店舗では、テレビCMを見て応募してくださった方が10名ほどいらっしゃったそうです。普段はまったく応募がこないのに、です。
介護業界は、入ってくる人よりも出ていく人のほうが多いですし、これから何十万人単位で人手不足に陥るといわれているんですよね。テレビCMでは、若い方にもレコードブックの魅力が伝わったのではないかと思っています。
藤原:テレビを見ている人は年々減っていると言われていますが、認知を広げるメディアとしてまだまだ圧倒的な力があると思います。
また、テレビはデジタルと比較して信頼度が高いメディアです。テレビCMによる安心感は大きいと思いますし、そういった意味でブランディングにも適したメディアですね。
事業拡大のためのパートナーとして
さらに多くの地域への店舗展開を目指す
──── では、次なる挑戦を教えてください!
赤池:8月は北海道でテレビCMの出稿を実施しました。宮城県で成果が上がったからこその北海道です。ここでまたしっかりと成果が出ることを期待しています。
今後は関東や関西にも展開していくことを視野にいれています。ただ、関東や関西エリアは金額的にはとても高くなってしまうので、本部だけで負担するのは難しい。フランチャイズの加盟店さんと分担しながら取り組む必要がでてくると思うので、宮城県や北海道での実績を示せるようにしたいです。
私たちはこれからも店舗数を増やしていきたいと思っています。各地域に合った施策を積極的に取り入れていきたいです。
新しい形での展開を模索
──── さらなる店舗展開、楽しみです!
林:ありがとうございます。
私たちは、地方ではフランチャイズの加盟店さんに店舗を運営していただいています。フランチャイズは、店舗デザインからオペレーション、人の配置まで全てワンパッケージ。現在社内では、このパッケージについて、現状のままでいいのか議論を重ねています。
労働人口は減少傾向にあり、介護業界の人手不足はどんどん深刻化しています。そんななか、私たちはレコードブックがない地域に広く届けていきたい。現状のパッケージに捉われない形でレコードブックのサービスを提供できる、そんな新しい形を模索していきたいと考えています。
今まで行なっていたケアマネジャーさんに対する営業活動も、今後は工数が割けなくなるでしょう。その工数を代替できる方法として、今回のようなテレビCMがいいのか、ほかの手法がいいのかというのは、今後も考えていきたいですね。
藤原:競合のデイサービス事業者はもちろん、コンビニやジムなど、様々な業界のフランチャイズ店舗がどのような形態で運営されているのかなど、情報収集中です。
ほか業界のフランチャイズ展開から取り入れられる部分を取り入れて、何か新しいことにチャレンジしてみたいですね!
山田:今後のレコードブックさんの事業拡大のためには、テレビCMだけが正解ではないと思っています。より多くの方にレコードブックさんのサービスをお届けできるよう、マーケティング活動のサポートをしていきたいと考えています!
林:心強いです。介護業界における現場の知見はたくさんありますが、マーケティングの知見はまったくないので……。私たちと皆さんの知恵がうまく融合して、新しいことにチャレンジしていけるといいですね。これからもよろしくお願いします!
編集後記
テレビCMが集客だけではなく、採用やブランディングなど、様々な効果を生み出した事例を伺いました。最初は懐疑的だったところから、次の出稿も考えられているそうで、とても良い取り組みだったことを感じられました!
【インタビュー・執筆・編集:みやたけ(@udon_miyatake)】
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