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富山・魚津「グルメ編」
2023年12月、富山県魚津市をワーケーションでたずねました。
その際の「食」の記録をまとめました。
食わねば帰れぬ「海の幸」
ゲンゲ
富山に行くと決まってから、再会を楽しみにしていたもののひとつが「ゲンゲ」という魚である。
ゲンゲを知ったのは、東京・新橋の老舗〈おおあみ〉にて。北陸の魚を中心に提供するお店で、「今日はゲンゲが入ってますよ」と女将さんがおすすめしてくれたのだった。聞くと富山湾の深海に棲む、ほぼほぼゼラチン質の魚という。
運ばれてきたゲンゲの天ぷらは「雲でも食べているのか?」というくらいとにかくホワホワフワフワの初触感なのだった。淡泊な味わいながらも旨みがあって、日本酒に合うし、ビールにも合うし。なにこれ美味すぎんか…!と、その名前や食感を脳に刻んで刻んで刻みこむくらい強烈な印象を残した。
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10年ぶりに再開したゲンゲは、ヒョロヒョロのカラカラだった。あのブヨブヨの体からどうやったらこんなに水分が抜けるのか。
軽くあぶっていただいた。凝縮されたゼラチン質が口の中にネットリとした食感を残す。やっぱりお酒に合うのだった。
コロナの影響か〈おおあみ〉はいつの間にやら閉業していた。もう東京ではお目にかかれないかも、と思っていたところのゲンゲとの再会。また会えてうれしいよ。
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バイ飯
「バイ飯が食べたい」それも「釜炊きのバイ飯がいい」という夫の願いを叶えるべく向かったのが、新魚津駅すぐそばにある日本料理店〈海風亭〉。
ちなみに「バイ飯」とは、バイ貝を具材にした炊き込みご飯。富山ではバイ貝がよく獲れ、刺身などでも食するのだとか。
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25分程かかると宣言されていた「バイ飯」が到着。うわーいい香り。この芳ばしい香り、このビジュアル、釜めしってテンション上がる。
米粒をつぶさないように、釜底から丁寧に混ぜ合わせ、いよいよバイ飯を口に運ぶ。……貝のふくよかな旨みと甘みが広がる、優しく品のある味わい。熱を加え過ぎると硬くなりがちな貝に、ちょうどよい塩梅で火が通り、食感が抜群によいのだった。なるほど、なるほど、うん、美味しい。
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もう一品注文していた「海鮮丼」は、甘エビ、マグロ、ブリ、アジ、タコ、イカ、ゲソ、玉子、なかには筋子と、10種類近くの海鮮が美しく並んでいるのだった。多くはカツオ醤油の漬けになっている。魚のおいしさを見極めた料理人のこだわりなのでしょう。この塩梅で味わってほしい、と。
で、実際めちゃくちゃ美味しい。いろんな魚介が楽しめて嬉しい。お味噌汁の味わいもきわめて上品。
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こちらは名物の「ゲンゲの竜田揚げ」。国民的漫画『美味しんぼ』でも取り上げられた一品とのこと。
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小ぶりなゲンゲを丸ごと揚げたそれを頭からかぶりつくと、さっくり、そして、トロッ……と口の中でほどけてしまう。尻尾はザクザクッと軽い音を立てて香ばしい。
〈おおあみ〉で食べた、あのホワホワフワフワのゲンゲとはまったく異なる食感だったものの、揚げたゲンゲをもう一度食べたい!という念願叶って、富山万歳!の瞬間がここに。またまた会えてうれしいよ。
でも、〈おおあみ〉のあの天ぷら……やっぱりもう一度食べたいな。
ブリやらフクラギやら
ある日の昼食は、魚津漁協の直営食堂〈魚津丸食堂〉へ。地元の人も愛用するレストランで、昼時はひっきりなしにお客さんが来店していた。
刺身定食は、フクラギ(ブリの幼魚)、甘エビ、あと耳慣れない魚、全4種の盛り合わせ。ねっとりと舌にからみつく甘エビ、おいしい〜。
(富山はどこのお店でもエビが美味だった)
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丁寧につくられている副菜もよい。煮しめの車麩(こっちではめがね麩ともいうらしい)のジュワ~っとした感じ、いいよね。というか、煮しめってなんだかんだで安らぐよね。
夫が注文したブリの漬け丼には、厚く切られたブリ、トロロ、温泉卵。夫は「満足!」とのこと。本当にブリ好きよね。
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シイラ
魚津辺りでは〈大阪屋〉というスーパーが幅を利かせている。真っ赤に波打つ独特のフォントに、小さく「スマイル スーパーマーケット❤」と添えられているのがなんだかくすぐったい。
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滞在中に何度か通った。鮮魚コーナーには地の魚も並ぶ。「シイラ」の旬なのか、やたら安く並んでいる。「これをムニエルにしたら美味しそう」と夫がいうので、その日はシイラを買ってみた。
白身魚らしい淡白な味わいで、とても美味しい。ムニエル向き。フライにしてもよさそう。薄い身だけれど3枚入って200円。この値段で東京でも買えたなら、夕食のシイラ率40%位になるかも。
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ハングオーバーの日は〈四十萬食堂〉へ
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その日の日中はとても寒かった。そして前夜の歓迎会で日本酒を飲みすぎていた。
そんな私の胃の腑を優しく温めてくれたのが〈四十萬(しじま)食堂〉の看板メニュー「五目中華」。
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この彩り。ああ、目に優しい。
出汁と塩味のしっかりきいたスープ。ああ、胃に優しい。
具材は、白菜、ほうれん草、ネギ、人参、きくらげ、かまぼこ、そしてポーチドエッグ。麺はツルン、ムッチリ、モッチリ、という感じ。スープには鶏と豚をたっぷり使っているとのこと。そりゃ美味いはずだ。食べきれないんじゃないか、という心配は無用だった。
「どこから来たの~?」とにこやかに話しかけてくれるおかみさん。そのウェルカムな雰囲気が心地よかったし、地元の人と会話ができるのも嬉しかった。
寒気がしていた体もじんわり温まり、店を出たあとの冷たい空気が心地よかった。
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とろろ昆布おにぎり
〈四十萬食堂〉やらあちこちの食堂で供される「おにぎり」は、糸昆布をまぶしたり、とろろ昆布を巻いたりするらしい。スーパーのお惣菜コーナーにもその姿があるので、めっちゃ気になっていた。
食べたい。でも、お腹の具合で多く食べられない。お店で注文する機会を得られずにいた。
でも! セブンイレブンにあったのだ、これが!
移動続きでどうしてもお昼が食べられなかったとき、「今でしょ!」とばかりに手が伸びたのだった。
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なにこれめちゃくちゃ美味しいし!!
なんと昆布の下は「ゆかりご飯」だし!!
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あ、パッケージに「三島食品の『ゆかり®』使用」って書いてあったわ。東京で売ってたら、絶対買う。こういうの、大好き。
富山は昆布の名産地という印象はないけれど、訪れてみると昆布製品が多い。北前船の関係で昆布が身近なのだろうと思うのだけど、こういうところに歴史的な食文化が感じれておもしろい~。
耳たぶ食感「水だんご」
水ようかん、水まんじゅうは知っているけれど、「水だんご」とは初めて耳にする言葉だった。そんな謎のスイーツが魚津に存在するのである。
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水だんごパフェ、水だんごソフトクリーム、水だんごトースト、水だんごコーヒーフロート、水だんごクリームソーダと、なかなか意表を突くメニュー展開。水だんごとは “なんにでも合うだんご” なのか。
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今回注文した「水だんごぜんざい(12粒入)」は、少し塩気のきいたぜんざいに、料理本などで書かれる「耳たぶくらい」といった表現で表される柔らかさ(だと思う)のおだんごが入っている一品。
あまり甘くないぜんざいに、これまで食べてきただんごとは違う、どちらかといえばフワフワとした食感のだんごがマッチ。この素朴さ、個人的には好き。
お持ち帰りのパックもあって、意外にも消費期限が4日ほどあるので、お土産に買った。
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帰宅後、google mapのレビューをみると、パンに生ハムやレタスと一緒にだんごをはさんだメニューも(⁉)。水だんごとは、本当になんにでも合うらしい。
2人で1合半は食べられる「サバの押し寿司」
ホストファミリー・大島さんから、魚津エリアの郷土料理「サバの押し寿司」のワークショップをおすすめされていた。
「全然映えないんですけど、美味しいんです!」
せっかくなら郷土食にも触れたい。材料はすべて大島さんが用意してくれ、我らの宿泊拠点に運んできてくれ、教えてくれるという、至れり尽くせりのレクチャーなのだった。
炊き立てご飯にすし酢を混ぜて酢飯をつくり、木枠に敷く。そこに焼きサバの酢漬け、砕いたクルミ、ガリを敷き詰め、さらに酢飯を上に敷いて、最後に海苔を置き、重石を乗せて30分ほど置いたら完成。
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30分程経った。
たしかに見た目は地味である。でもこういうのこそ美味いんだよな。
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え、なにこれ、うま……。
酢漬けのサバの旨みがお米に滲みてうまい。ガリの爽やかさとシャキシャキ感。クルミのコクとコリコリ感。それぞれが口の中で主張しつつも調和しているのだ。この奇跡的な味わいのバランスにすっかり林家はとりこになってしまった。
3合炊かれたご飯の半分以上が、その日の晩に消えた。普段は3人で1合も食べないのに。
スーパー編
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富山といえばかまぼこ。こういう色、普段の食卓には無いので、ちょっとおもしろい。子どもが喜んで食べる。
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スーパーのお惣菜が興味深い。「べっこう」って何。甘いの?しょっぱいの?
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富山の「赤飯」は赤くしないらしい。そして「黒豆おこわ」がおいしそう。原材料からして甘いはず。おやつ?
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こっちの煮しめ、具材が大きくて、おいしそうで、めちゃくちゃそそられた。けど、これだけでお腹いっぱいになりそうで、買わなかった……。
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魚市場編
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宿泊拠点「渚泊」の近くに道の駅があって、そこには魚市場や土産物屋が入っていた。こういうとこ、楽しい。
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北陸ですから、カニも豊富。安くない?
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バイ貝刺身、まだら子付き刺身、水たこ刺身などなど、めずらしい刺身のパックも。そそられる~!
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細工かまぼこなどの練り物系も。以前〈コロカル〉というWebメディアの編集で携わったこちらの記事を思い出した。(若井さん元気かしら…)
「自宅のように過ごす」を今回のワーケーションのコンセプトの一つに定めていたので、スーパーや市場で食材を買ったりして、自炊多めにしたのだけれど、2日くらい続けて同じものを食べる羽目になってしまい、口にできる品目が限られてしまった。
こういったときは、思い切って外食中心にするべきだった。あれも食べたかったし、これも食べたかった。もっといろいろ食べたかった。
でも、港町の滞在らしく魚介をそれなりに堪能できたし、郷土料理にも出会えたし、結果、非日常の食事ができたから、いっか。思い残した分は、また次回の訪問で。