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今の頭の中にぐるぐるとあるものを。

コロナ禍で空いた2年。
危惧していた事があった。

自分はとても人見知りで、知らない人と話すのにはとても勇気がいる。
ましてや自分は撮られるのが苦手だから、写真を撮らせてもらうのなんてなおのこと。
でも、言い訳してやらないくらいならやるなよと、自分を奮い立たせて、話しかけたり、写真を撮らせてもらってきた。
その度に触れる人の心や優しさ、土地への想い、作物への愛。
そして心に温度が灯る。
そして、普段の生活に戻った時に、もらった温かさが自分を守って、そして人に温度を持って接する事ができて、温度が返ってくる。
優しさが優しさを呼ぶ凄くいいサイクルの中をコロナ前は生きていた。
たくさんの事を許せるようにもなった。


そんな優しさをくれたうちの一人、大好きなおばあちゃんと出会った棚田に行った。
コロナで空いた2年。もう覚えてはいないだろうな。元気にしてるかな。棚田はどうなっているかな。
そんな事を考えながら、ガタガタな道を登っていく。
車は通った痕跡はある。だけど前に来た時よりも雑草が多いな。少し不安になる。

お!田んぼやってる!あれ、でもおばあちゃんを初めて撮らせてもらったところ、やってない、、、、耕作放棄地になってる、、、
あれ、でも、前に来たところはやってる。
え、でも、小屋があった場所、何もなくなってる、、

凄く不安になった。
上から見下ろすと棚田の下の方に田植えをしてるおじいちゃんを見つけた。
話しかけにいくと、おばあちゃんの旦那さんだった。
結果、おばあちゃんは体を悪くしてしまったけれど、元気にしているとの事だった。
すごくすごくホッとした。
田んぼには出てくるけど、あまり長くいられなくて、早めに帰るんだって。
おじいちゃん一人じゃ全部の田んぼを面倒見れないから、コロナになった頃からいくつか田んぼをやめたみたいだった。

危惧していた事の中で、1番ホッとできる内容で、すごく安心した。
だけどやっぱり、大好きだった棚田は元の形ではなくなっていた。
コロナの前の年、お手伝いに行きますねって言葉を交わしたのを自分は覚えている。
夫婦二人で守ってるこの棚田を、すごく守りたいって思ったから、自分も少しでもその力になりたいって思ったから。

このコロナの空いた2年で、田んぼの雑草は自分の背丈ほどまで伸びていた。
おばあちゃんもおじいちゃんも生きていて本当によかった。安心した。
でも、同時にすごく寂しさというか何もできなかった虚しさというのか、おこがましいな。
うまく言葉にできないけれど、これがコロナ禍で空いた2年という月日なのだと、身をもってくらった気がした。

もう一つ行った棚田も、おじいちゃんの田んぼはやっていたけど、畑がやっていなくて、すごく不安だ。
そっちの棚田では誰とも話せなかったから、まだどうなっているのかわからない。
どうか元気で生きていてほしい。それだけでいい。

言葉にできない感情が、溢れて仕方なかったから、書いた。

今までにも、たくさんの耕作放棄地を見てきた。元々は全部やっていたんだ。
たくさんの美しい景色がなくなっていく。
それはもう仕方がない事だと、自分の力ではどうしようもない事だとわかっている。
だから、だから自分の足で旅をして、自分の心を動してくれた景色を、残すんだ。
俺が、ここにあるよって、ちゃんとここにあったよって、そう思ってシャッターを切るんだって。

写真に残したからなんだって、写真に残してどうするのって、うるせーよ。
そんな事を言ってくる奴の心になんか、何も届かなくていい。

初めて自分の写真を見て、泣いてくれた人たちの顔が浮かぶ。それが何人もいるなんて、なんで幸せな事だ。

届けたい人にだけ届けばいいって思ってるのとは違う。
誰にでも届けたい。美しい人や景色からもらった温度が、見てくれた人に届いたらいいな。

前にもすごく同じような事を強く感じた景色があったな。
海外の写真家みたいな、それが自分の使命だ!なんて大それた事を、自分が思ってしまった瞬間があったんだ。

胸にぐるぐる、色んな感情が渦巻いてる。

まだ、土地との距離、人との距離感が全然戻ってこない。
全てよく回っていたサイクルには簡単に戻せない。
怖かったりもするけど、それを上回る幸せを知ってる。
旅をしていく。生き甲斐なんだ。

旅をしていく。



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