「#05」あの時父を殺そうとした奴
みなさま、こんにちは。カンボジアシアヌークビル在住のそくあんです。
前回のあらすじはこちら。
「父の決断と勇気」
最終学歴5年生の父親は15歳
1970年 当時15歳で最終学歴は5年生の父親はあることを決断をします。
馴染みのあるバッタンバン州を離れタイ国境付近のポイペト州で新たな生活をはじめることにしました。
家族の生計を立てるために飲食店で働くことを決めます。
1974年頃、ポイペト州は普段通りの生活が行われていました。翌年1975年4月17日以降、ラジオ放送ではクメール・ルージュがプノンペンを占領した様子を伝えるニュースが報じられるようになりました。
父親の話によるとこの時点では、政府関係はすでに亡命しており、経済的余裕のある家庭は事前にタイに入国していたそうです。
のちに人生を大きく変えた出来事
父親は当時、飲食店で働いていました。すると、帽子をかぶった男性が、全身黒い服を着て入店。首には赤いスカーフが巻かれており、父親はすぐに彼がクメール・ルージュのメンバーであることに気づきました。
彼は食事とお会計を済ませて店をでました。
非常に緊張感がある状況でしたので店主や父親の直接的な接触はなく会話も一切ありませんでした。
農村へ強制移住
「アメリカ軍の爆撃の可能性があり、安全のために3日間家をあけてください」と、機関銃を肩に担いだクメール・ルージュ兵士が叫びます。
これまでにアメリカ軍による爆撃があったことから、人々は信じていたのでしょう。
その結果、都市居住者、資本家、技術者、学者・知識人などが首都プノンペンから農村へ強制移住させられたのです。
雨季が近づいた頃、父親が住むポイペト州にも兵士たちが軍事トラックでやってきました。父親は直ちに荷物をまとめるように命じられ、長期保存が可能なお米や発酵魚、干し魚、必要最低限の調味料や衣服を急いでまとめました。父親の話では初期のクメール・ルージュ兵士たちにも人情があったようで、国民の食事時間を気にかけていた様子がうかがえたそうです。
食事が終わると、次の指示で前へ進むように号令がかかるためゆっくりする時間はありませんでした。
交通機関はすでに破壊されており徒歩での移動手段になります。
紙幣価値はゼロになる
人々は必ず家に戻れると信じていましたが、待てど帰宅許可はおりません。現実は混乱と不安の連続でした。その状況の中で、人々の精神状態は崩壊寸前に追い込まれていましたそうです。長い道のりを歩き疲れ意識朦朧のなか大人も子供も空腹に襲われ、耐えるのに必死でした。持ち出したお米ももうなくなってしまいましたし、
そこで、唯一の方法として、炊いた米を水で薄めたり、お粥にして胃袋を満たす事しか思い浮かびません。
味がそっけない時は塩を足すことで紛らわします。
紙幣があれば市場で食材を買えると思っていましたが、すでに紙幣の価値はなくなり、物々交換の方法で空腹をしのぐしかありませんでした。
クメール・ルージュ幹部からの尋問
どのくらいの距離を歩いたかはわかりませんが、その途中に農村があり立ち寄ります。クメール・ルージュからはヤシの藁葺きや釘、ワイヤーが与えられ、自分たちで家を建てるよう命じられました。
父親は若い頃に大工をしていたので、家作りは簡単でしたが、政府関係者や知識人にとっては難しい作業だったようです。
家が完成した時、クメール・ルージュの幹部に父親が呼ばれ、いくつかの尋問をされたそうです。
自衛隊や政府関係者は親族にいるのか、家庭は裕福だったのか、学歴など詳細に聞かれました。しかし、実際には事実を話すと処刑される可能性があると聞いていたので、私は即座に「私は貧しい家庭で育ち、お金がなかったので飲食店で働いていました」と答えました。
飢えとの闘い
成人していた父親は、クメール・ルージュから実両親とは別々に行動するよう命じられたそうです。既婚者はその場にとどまり、独身者は別の農村に移動して農業に従事することとなりました。
しかし、父親は特異な命令を受け、漁港で働くことになりました。
国民が栽培したお米や野菜は、幹部によって各グループに配給されました。父親たちのグループは稀にながら牛肉や豚肉を食べる機会もあったそうです。一日に3度の食事が当たり前というわけではありませんでしたし、
あるときは白粥の日々が続き、常に空腹感に悩まされたそうです。
このような過酷の状況にあっても父親は力強く生き抜いています。
そして飢えとの闘いはさらに続きます。
次章- 絶望の中で必ず生き抜く-
父の実話に基づいて書いてます。
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SOKOEUN
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